握力の鍛え方と強化方法を確認していきます。握力とひとことで言っても、鍛えるべき力の出し方はいくつかに分類されます。それぞれの力にあったトレーニング方法を紹介していきます。
握力の鍛え方と強化方法については、なんとなく頭では必要だと思っていてもスルーされがち。
多くの場合、握力だけに集中したトレーニングというのは、あまり時間をかけて行われていないケースがほとんどです。
しかし、握力を鍛えるトレーニングを集中的に行っていくと、他の筋トレにおいて役立つのはもちろん、「力強い握手が出来るようになった」、「どんなに固いビンの蓋でも開けられるようになった」なんていう日常生活における効果から、怪我の防止や健康増進の効果にもつながっていくことになります。
そこで、結構忘れがちだけど、実はとても大切な握力について、握力が大切な理由を簡単に説明し、さらに、握力の力の分類とそれぞれの力を強化するためのトレーニング方法を紹介していきます。
目次
握力の強化が大切な理由
とにかく強くなりたい。そんな考えを持って、強靭な体になろうと筋トレして体を鍛えている人は沢山います。
しかし同時に、他の筋肉は厚く盛り上がっているのに、握力だけはなぜか弱い、又は強化しきれていないという人が意外と多い。
これって結構もったいない。
というのも第一に、握力がより強化されていればされているほど、筋トレ中にもっと重いウェイトを挙上することが出来て、筋肉をより強烈に刺激することが出来たり、それによる筋肥大や脂肪燃焼なども期待出来る。
他にも、握力トレーニングを普段から行って強化しておくことで、特定の筋肉群が無視されてしまったり、逆にその他の筋肉が使われすぎたことで、筋肉バランスが崩れて引き起こる腱鞘炎などを予防することにもつながってくる。
そして、実は、握力が弱いと認知症の発症リスクが高くなるといった研究結果も出ていたりと、健康面においても大切だったりするのです。(参照:握力の平均とは?男性・女性・年齢・小学生・成人別、筋トレの参考に!)
「発散」現象を利用してもっと多くの筋肉を利用していける
また、リハビリテーションにおける一つの方法で、固有受容性神経筋促通法(PNF)というものがあり、その中で「発散(Irradiation)」という概念があります。
この発散は、特定の刺激を筋肉に与えた場合、筋肉の反応や活動が、その部位以外にも拡がっていく現象。
その発散現象により、握力をしっかりと発揮した形でトレーンニングすることで、前腕から上腕、さらには深層部にある重要な筋肉群であるローテーターカフ(回旋筋腱板・肩と上腕部を結ぶ4つの筋肉「肩甲下筋・棘上筋・棘下筋・小円筋」の総称)などまで、トレーニング効果を波及出来るといったことが考えられる。
例えば、両腕を体の前に突き出して、力一杯こぶしを握りしめると、腕の全ての筋肉に力が伝わり、さらにその奥の体幹部まで引き締まっていくのが分かるはず。
この現象を考えた場合、ベンチプレスやデッドリフトを行う際に、意識的にバーベルを力強く握りしめるなどすることで、プラスアルファの効果を出していけると考えることが出来るかと思います。
握力の鍛え方に覚えておきたい握力「4+1」
「握力」とひとことに言っても、その中には、いつくつかの違った力の使い方が存在します。
基本的には、握力に含まれる4つの力と、1つの「間接的」に握力に関係する力を考えていくことが大切。
その「4+1」の5つのトレーニングを、バランス良く行っていくことが、握力を強化するためには効率的で、さらに満遍なく鍛えていく方法となります。
「4+1」の握力強化に大切な力と、力の出し方は以下の通り。
- クラッシュ力(クラッシュグリップ)
- クラッシュとは手で何かをぎゅっと握る/握りつぶす力
- ダンベルをぎゅっと握る動作と同じ
- ピンチ力(ピンチグリップ)
- ピンチとは、指先だけで何かをつまむ/落とさないように維持する力
- 指先で洗濯ばさみをつまんで開く動作と同じ
- オープンクラッシュ力(オープンクラッシュグリップ)
- クラッシュグリップの要領で行うが、親指と他の指がつかない、又は重ならない状態で物を持つ力
- 例えばファットバーや分厚い本を持つ際など、完全に親指と他の指で閉じることが出来ない状態で物を掴む動作
- この握力の出し方が鍛えられると、ビンの蓋を開けるなど、多くの日常動作が楽に行えるようになる
- ホールド力(サポートグリップ)
- クラッシュグリップで握ったものを、長い時間保持する/支える力
- 握ったダンベルを運んだり、デッドリフト中にバーベルを握り続けたり、買い物袋を運ぶ動作など
- 指の伸展力(フィンガーエクステンション)
- 閉じた指を伸ばす際に使う力
- 握力ではなく、握力とは逆の方向へ働く力、拮抗的に働く力を使った動作
- 筋肉を強化したり怪我を防ぐためにも、直接関与する主働筋とは逆の拮抗筋も鍛えて筋肉バランスを高めていく必要があるため、指の伸展もトレーニングしていくことが握力のトレーニングをする際には役立ってくる
握力の鍛え方におすすめな握力強化トレーニング方法
握力を強化しておく簡単なメリットの解説から、握力を理解する上で大切な力の分類が分かったところで、握力の鍛え方に有効な握力強化トレーニング方法をみていきましょう。
握力の鍛え方1)ハンドグリッパー
ハンドグリッパーと言ったら、おそらく誰しもが握力の鍛え方として最初に思い浮かべるであろうトレーニング。
ハンドグリッパーは、握力の力の中でもクラッシュ力を鍛える最も簡単で直接的な方法。
百均に売っているような、簡易的なハンドグリッパーを利用することはもちろん、本格的にクラッシュ力を強化したいのであれば、キャプテンズ・オブ・クラッシュ(Captains of Crush/COCグリッパー)などを利用して、世界最強のクラッシュ力を目指すのもアリです。
ハンドグリッパーを利用した鍛え方では、
- ハンドグリップを握って、「閉じて開いて」を限界回数まで反復する
- 一定時間もしくは限界まで、グリッパーを閉じた状態でキープする
と言った二つに大きく分けることが出来ます。
基本的には、適度な強度のグリッパーを使い、まずは8~12回の開け閉めを2~4セット行うところから始めて、徐々に扱える強度を高めていきましょう。
握力の鍛え方2)プレートピンチ
握力の中でも、ものをつまむ際に大切なピンチ力を鍛えたいなら、このプレートピンチがとてもおすすめ。
バーベルプレートが利用出来るなら、早速このプレートピントを行ってみましょう。
- 平らなバーベルプレートを2枚用意して重ねます
- その2枚重ねのプレートをまとめて指で挟むようにします
- 30秒その状態を維持します
はじめは1kgのプレートを2枚つまむことから始めて、徐々に扱うプレートを2kg、3kgと増やしていきましょう。
また、もしもプレートが無い場合は、お酒の一升瓶に水を入れて、そのビンの先を一定時間以上つまみ続けるといった方法も有効ですよ。
握力の鍛え方3)ファットグリップ
ファットグリップは、バーベルなどに装着することで、握るために必要なハンドルを太くする筋トレ器具。
親指を他の指がくっつかない、又は重ならない程度にハンドルを太くして握ることで、握力の中でもオープンクラッシュ力を強化していくことにつながります。
- ファットグリップをバーベルに装着させます
- その太くなったバーベルを握ります
- デッドリフトやベントオーバーローイングなどを行ってみましょう
他にも、懸垂などをこのファットグリップで行ってみるなんていうのも、握力の鍛え方としてアリですよ。
握力の鍛え方4)ブロブまたはヘックスホールド
普段扱っているダンベルが、もしもヘックスダンベルだったら、そのダンベルの端をつかんで持ち上げる握力強化方法がおすすめかも。
ヘックスダンベルの両端は、握ったとしても指を完全には閉じることが出来ないため、オープンクラッシュ力を強化するのに効果大。
そして、日本では手に入れるのが難しいけど、もしも手に入れることが出来るなら、ブロブというダンベルの両端部分だけを切り落としたような鉄の塊を利用してみるのもおすすめ。
ブロブは、握力を鍛えるために存在しているような筋トレ器具で、20kg、30kg、40kgなんていう重さが当たり前に存在しています。
- ヘックスダンベルの端又はブロブを掴んで持ち上げます
- その状態を30秒維持し、3セット行っていきましょう
握力の鍛え方5)ファーマーズウォーク
ファーマーズウォークは、ストロングマントレーニングとしても一般的で、また全身の筋トレから、持久力のトレーニングにもなったりと、多くのアスリートなどが取り入れている筋トレ種目。
ダンベルやケトルベルなどを、左右の手にそれぞれ持って立ち、一定距離、または一定時間を歩くトレーニングです。
このトレーニングでは、握力の中ではホールド力を強化すると同時に、他にも肩や体幹、下半身の筋肉などを一緒に強化していくことが出来ます。
ホールド力を鍛えようとした場合、維持できる時間が大切になってくるため、重いダンベルなどを握った状態で10分間のウォーキングを出来るようにするところから始め、少しずつその時間を伸ばしていきましょう。
握力の鍛え方6)バーベルホールド
バーベルホールドは、握ったバーベルを長時間落ちないように維持することで、握力の中でもホールド力を鍛えるのに効果大。
特にバーベルを握って保持する力というのは、他の多くの筋トレでも一般的に利用するものになるので、バーベルホールドで握力を鍛えるということは、直接多くの筋トレ種目に役立つといって良いかと思います。
- バーベルを足元に置き、両手を肩幅に開いて、そのバーベルを順手で握ります
- そして腕を伸ばした状態で真っ直ぐ立ちます
- しばらくその状態を保てればOKです
扱う重さや目的にもよるかと思いますが、最低でも5~10秒はその状態を維持できるようにして、3セット程度繰り返していき、徐々に扱えるウェイトを重くしていきましょう。
握力の鍛え方7)タオルプルアップ
懸垂を一般的なやり方ではなく、タオルを利用して行ってみましょう。
タオルをバーや丈夫な木の枝に掛け、その両側を強く握って懸垂を行うことで、握力のクラッシュ力とホールド力を強烈に鍛えていくことが可能。
- タオルを2枚用意します
- 1枚でも良いですが、念のために2枚重ねにした方が安心だと思います
- 懸垂バーにタオルを掛けて垂らします
- そのタオルの両側をしっかりと握ります
- 懸垂を行っていきます
最初はかなりきついですが、その分、飛躍的に握力が強化されることになりますよ!
握力の鍛え方8)バンド・フィンガーエクステンション
フィンガーエクステンションは、握力に直接は関係のない、指の伸展力を鍛えていくトレーニング方法。
握力の筋肉と逆の力を出す筋肉を強化していくことで、筋肉バランスを取り、怪我の防止などにつながっていきます。
専用のフィンガーバンドがあれば嬉しいですが、無い場合は、輪ゴムを何本か重ねて利用することで、指の伸展力を十分に鍛えていくことが可能です。
- バンドに5本の指全てを通します
- そして指を外側に開いていきます
- その後、ゆっくりと指を閉じて、繰り返していきます
握力の鍛え方9)米びつ・フィンガーエクステンション
また、フィンガーエクステンションを行うに当たって、ゴムバンドを利用した方法以外にも、昔から武道家が手や指の強化のために利用してきた、米びつを利用した指の伸展力の鍛え方もおすすめ。
米びつに米を入れて利用してみたり、米びつがない場合はバケツに砂を入れて利用するなんていう方法であれば、一般的にも実践しやすいかと思います。
- お米を入れた米びつ又は砂を入れたバケツを用意します
- その中にこぶしを作った手を突っ込みます
- 砂の負荷に抵抗するように、中で指を広げていきます
- その後、指を閉じて、再度繰り返していきます
握力の鍛え方10)バトルロープ
バトルロープは、専用の太くて重いロープを両手で握り、そのロープを波打たせるように縦や横、又は円を描くように動かし、そこから生じる負荷を使って握力の中でもクラッシュ力とホールド力を強化していく方法。
また、握力以外にも、腕や肩、そして体幹までにも効いてくるため、全身を強化していきたいなんて時にもおすすめです。
もしも、広いスペースでバトルロープが利用可能なら、握力強化のためにも取り組んでみるのが良いかもです。
- バトルロープを用意して、真ん中を柱などにくくりつけます
- ロープの両端を左右の手でしっかりと握り、ロープがたわむぐらいの距離に立ちます
- 波打つように縦や横に思い切り動かしていきましょう
地面にロープを叩きつける際に意識的にロープを握る手に思い切り力を入れると、クラッシュ力強化にさらに効いてきますよ。
握力の鍛え方11)ボルダリング
ボルダリングと言えば、ここ最近注目のスポーツ。
ボルダリングは主に上半身背面の筋肉を使いながらも、他に体を支えるための下半身の筋肉から細かい腕の筋肉までも利用していくことになります。
そして、ボルダリングの壁についている「ホールド」には様々な形や太さのものがあったり、握った状態を維持していく必要があったりするため、
- クラッシュ力
- ピンチ力
- オープンクラッシュ力
- ホールド力
と、直接握力に関係する全ての力の出し方を強化していくことが出来、握力強化においては万能なトレーニング方法であると言えます。
室内でボルダリングを行える場所も増えてきているので、握力をとにかく強化したいと思っているなら、利用してみると良いかもしれませんよ。
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握力の強化が大切な理由から、握力に関する力の分類、さらにはそれぞれに有効なトレーニング方法を紹介してきました。
握力強化トレーニングは、握力だけでなく、全体的に良い相乗効果が出てくるはず。
身体能力をアップさせるためにも、握力の強化に取り組んでいきましょう!
ぴろっきーでした!