政府が経済財政運営の基本方針(骨太の方針)を閣議決定した。財政健全化の目標として、2020年度の国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)の黒字化に加え、国内総生産(GDP)に対する公債残高の比率引き下げも明記した。新目標が財政健全化の先送りにつながるようなことはあってはならない。
PBの黒字化は、その年度の政策的経費を、借金に頼らずにその年度の税収などの収入でまかなえるようにする目標だ。PBが黒字になっても、過去に発行した国債などの借金返済が残るので、PB目標は財政再建の一里塚にすぎない。その後は1000兆円を超す国・地方の借金を減らし累積赤字を縮小させる必要がある。
従来の財政健全化策は、まずPBを黒字にして、次に債務残高のGDP比引き下げに取り組むという段取りだった。2つの目標に同時に取り組むという今回の方針自体は悪いことではない。
心配なのは、これが20年度のPB黒字化目標の先送りへの布石ではないかという見方が浮上していることだ。今の目標は19年10月に予定している消費税率の10%への引き上げを前提にしている。
安倍晋三政権はすでに2回にわたって消費税率上げを延期している。この次も、教育や公共事業などの歳出を増やし、増税を先送りするため、目標の中間見直しをする来年に、PB目標を棚上げし、債務残高GDP比率に目標を切り替えるつもりなのではないかという観測がくすぶっている。
債務残高のGDP比率の分母は名目GDPの成長率、分子の債務残高は長期金利によって変動する。名目成長率を高めにして長期金利を低く抑えれば、一時的には単年度のPBが赤字でも債務残高GDP比は下がる道筋が描ける。
そうはいっても中長期的に債務残高GDP比を下げるには、PBの黒字化は不可欠だ。短期的な歳出拡大や増税先送りの方便として目標を変更するなら大問題だ。
安倍政権は、経済成長と財政再建の二兎(にと)を追うとしてきた。日本経済は12年末以降景気拡大を続けているがそのペースは緩やかだ。日本銀行は大量の国債を買い続けている。真の経済再生には、成長力を強化し、増税や歳出削減も含む財政健全化を進めることが必要だ。それができなければいつか日本国の信用は失われ、手痛いしっぺ返しにあうだろう。