オスの頭に格納式の生殖器官のあるギンザメだが、彼らは私たちが考えていた以上に奇妙な体をもっていた。最新の研究によって、メスが精子貯蔵庫を持ち、生きた精子を数年間も蓄えられる可能性が明らかになった。(参考記事:「頭部に生殖器を持つ新種の魚」)
いろいろな動物を継ぎ合わせたような姿をしていることから「キメラ」や、尾びれがネズミの尾に似ていることから「ネズミ魚」とも呼ばれるギンザメは、ヒレが長く、うつろな目をしており、見た目はホホジロザメの方がまだ親しみやすいだろう。サメやエイの遠い親戚ではあるものの、滅多に見られないこの魚についてはほとんど何も分かっていない。(参考記事:「ホホジロザメが子宮で「授乳」、サメでは初の発見」)
「文字通り、寄せ集めて作られた魚のように見えます」と、米カリフォルニア州のモス・ランディング海洋研究所太平洋サメ研究センターのデビッド・A・エバート氏は言う。
研究のため、科学者らはニュージーランド沖で捕らえられることの多いギンザメ科の仲間で、ギンザメ属のブラウン・キメラ(Chimaera carophila)と、アカギンザメ属のブラック・ゴースト・シャーク(Hydrolagus homonycteris)に注目した。チームは、最近底引き網漁で引き上げられたものに、博物館の標本を加えて、数百体を調べた。
ニュージーランド、ビクトリア大学ウェリントン校の博士課程に在籍する学生のブリット・フィヌッチ氏が率いる研究者たちは、さまざまな性的成熟段階にあるこの魚を観察し、各器官の大きさや重さを計測した。(参考記事:「キリギリス、世界最大の睾丸の持ち主」)
多くの種のサメと同様に、ギンザメのメスは子宮、卵巣、輸卵管を2つ持つ。オスの前頭部の生殖器官にはかぎ状の突起があり、交尾中にメスのヒレを固定しておくことができる。また腹部にもクラスパーというペニスのような器官が2つ付いていて、実際に交尾に使われる。(参考記事:「共食いも胎盤も! サメは「繁殖様式のデパート」」)
「メスにとって、交尾はあまり楽しいことではなさそうです」とフィヌッチ氏。