では、なぜ随意契約による1億8400万円という売却額が、評議員会で承認されたのか。

 ディンプルとの随意契約に後ろ向きだった前財務部長が“更迭”され、K氏が財務部長に変わると話は一気に進む。評議員会や役員会で説明を求められたK氏が、売却の経緯や金額の根拠を説明した議事録(神社業界誌掲載)によれば、「入札に至るまでの時間的制約により、随意契約的な内容で契約を取り交わした」。また、「不動産鑑定評価書に示す価格(中略)など総合的に検討した結果、提示価格は適正の範囲内であると判断した」とある。

 まず、入札にかけられないほど緊急の時間的制約があったのかだが、「不動産の価格は流動的で、ディンプルに即座に売らなければ、値下がりするかもしれない」などとディンプルとの契約を推し進めた幹部たちは説明したという。「そんな理由がまかり通るなら、不動産売買全てが随意契約でしか行えないことになる」と、さらに別の本庁関係者は呆れる。実際、即日転売で2億円を超え、さらに、わずか半年後には当初の想定していた売価3億円を超える値で買い手がついており、何とも苦しい。

 また、売価の根拠として真っ先に挙げられたこの不動産評価鑑定書は、実は、購入者であるディンプル自身が持ち込んだもの。そこには、鑑定時の同行者としてご丁寧にもディンプル社員の名前まで記載され、その評価額は1億7500万円となっていた。

 これを本庁側が本当に信用したのか、その真相は分からない。しかし、三為契約の舞台となった地銀は、A社のものになっていた百合丘職舎の土地・建物に計3億円の根抵当権を設定していた。無論、根抵当の額は必ずしも資産価値を担保するものではないが、B社の買い取り額を見ても安すぎることは間違いないといえる。B社担当者は言う。「われわれも不動産のプロ。実勢価格などを精査し、3億円超の価値があると判断したが、常識的に考えてわずか1.84億円という額には『ちょっと待ってくれよ!』と文句を言いたくなる」。

売却益で幹部職舎に高級マンション
危機管理名目にも疑問の声

 この話には二つの“オチ”がつく。

 まず、神社本庁が百合丘職舎の売却益で購入した“モノ”が問題視されている。

 複数の本庁幹部と役員関係者は、異口同音に眉をひそめる。「危機管理用の新たな職舎という名目で、渋谷区代々木の中古の高級マンションを購入。その入居予定者が、なんとディンプルへの早期売却を推し進めた本庁の幹部2人だった」(前出の本庁関係者)からだ。

百合丘職舎の売却益で購入した高級マンション

 つまり、職員用宿舎から入居者を追い出して得たカネを使い、一部の幹部が住むための家を買っていたというわけだ。

 この「2人の入居予定者」とは、百合丘職舎の売却時、本庁総務部長だった小野崇之氏と、当時は秘書部長で、現在は小野氏の後任の総務部長に“出世”したS氏。本庁人事において、実質的な権力を握る二大ポストがこの総務部長と秘書部長だ。

 だが、昨年2月、小野氏が伊勢神宮に次ぐ有力神社の一つで、全国8000社の八幡神社の頂点、宇佐神宮(大分県)の宮司に栄転。それが影響してか、当初は2戸購入する予定だったものが、総務部長(つまりS氏)が入る1戸に減らされた。