元「エタラビ」を衣替えした新ブランド「コロリー」のHP
初夏を迎えるこの季節、若い女性をターゲットにした広告がやたら目に入る。脱毛サロン、エステサロン。が、この業界にはあまりにも大きな問題が常に内在しており、そして身体的金銭的被害も後を絶たない。
「これって詐欺ですか? とんだ悪徳業者です。私は20万円ほど返ってきていません」「私は計77万2716円です」「『こちらでは分からない』の一点張り」「期限を過ぎても返金されない」「返金しないくせにのうのうと営業をしているところが許せません」
これらのネット上の書き込みは、今年4月5日、東京地方裁判所で破産手続開始決定を受けて倒産した「(株)グロワール・ブリエ東京」(以下GB社)が展開していた大手脱毛サロン「エターナル・ラビリンス」(以下エタラビ)に対するもの。
エタラビは昨2016年8月24日、消費者庁から「特定商取引法違反」を認定され、9カ月の業務停止処分を受けていた。格安の定額制と勧誘しながらその実、高額の複数月契約だったなど「虚偽誇大広告」(同法第43条)違反を問われた。先の書き込みは、複数回の施術を前提に高額の「前受金」を支払ったものの実際には予約が取れず、解約を申し出ても返金がなされないと相談し合っている被害者たちのサイトである。民間信用調査会社によれば、GB社は倒産時、前受金が約42億円計上されていたのに、決算上の現預金はわずか1000万円弱しかなかったという。返金できないはずである。
フォーサイトでは2年前、当時最大手の脱毛エステだった「ミュゼプラチナム」について、医師法違反疑惑や前受金商法の危うさを複数回報じた。直後、同社は指摘通りに経営破たん。その後、東証2部上場のシステム開発会社「RVH」の支援を受け、子会社化された。
今回倒産したエタラビもこのRVH社の傘下に入った。
さらにRVH社は今年2月、経営危機に瀕していたエステ最大手「たかの友梨ビューティクリニック」も買収した。
そもそもの本業は半導体開発なのに、まったくの異業種であるエステ業界で相次いで大型買収を繰り返すRVH社。2部とは言え上場企業であるだけに、資金力、経営(再建)手腕に長けているということなのか。
が、実態はかなり疑問符がつく。しかも、経営トップにはかつて「反社会勢力」との濃密な関係もあった。
キャッシュは1円も動かず
「ミュゼ」「たかの」「エタラビ」それぞれの買収・再建手法は、一種奇術的錬金術的である。
非上場であった「ミュゼ」の運営会社は破たん時、約590億円もの巨額簿外債務があった。本来であれば裁判所を通じた法的整理をすべき案件だが、裁判所の介入によって乱脈経営の責任を問われることを恐れたとの指摘もあった。詳細は、前述のフォーサイト過去記事を参照されたい。
この負債を抱えた会社はそのままにし、事業だけ新たに作った新会社に譲渡。これをRVH社の100%子会社として、同じ「ミュゼ」ブランドで現在も営業を続けている。「再建は順調」とRVH社も「ミュゼ」も喧伝するが、果たしてそうか。何しろ、負債が消えてなくなったわけではない。負債の大半は、顧客との契約時にあらかじめ全額受け取った施術代金(未消化役務)で、解約返金を求められれば応じなければならない。故に、会計上は負債となる。実際、旧社は返金に応じるだけの資金繰りが困難になったため、破たんした。
買収方法はまるで奇術だ。本来、RVH社は旧ミュゼを買収する際、現金なり資産なりの対価を支払わねばならない。が、旧会社には約590億円の負債があったが、この負債すなわち未消化の役務を譲り受け事業として継承するため、債務を肩代わりするということで対価の相殺とした。つまり、キャッシュは1円も動いていない。
FOLLOW US