ランス美術館展
2017年10月7日〜12月3日
名古屋市美術館
社説豊洲と築地 業者が安心できるよう物流機能を豊洲に、市場機能を築地にという将来の青写真である。小池百合子東京都知事が示した市場再編の方針は、斬新とはいえ実現性への疑問がつきまとう。市場業者の安心を優先させたい。 豊洲市場を開くための地ならしだったのだろう。小池氏は六月に入り、土壌や地下水の汚染を環境基準以下に抑える無害化の約束を守れていない現状について、市場業者らに対して陳謝を重ねた。 昨年十一月に予定されていた移転の凍結を発端に安全性への懸念が膨らみ、業界では豊洲移転派と築地残留派との亀裂が広がった。もはや利害の一致点を見いだすのは容易ではない。 小池氏が選んだのは、豊洲と築地を両立させるいわば二兎(にと)を追う道である。業界全体を説得しやすく、約六千億円を投じた豊洲の収支を安定させやすい一挙両得のアイデアと踏んだに違いない。 簡潔に言えば、豊洲は情報技術(IT)で管理された生鮮食料品の物流センター機能を強化し、築地はブランドと立地を生かした市場機能を模索する。将来はそうして棲(す)み分けを図る狙いが浮かぶ。 確かに、近年は、大規模小売店やネット通販による産地直送の流通ルートが発達している。食生活の多様化や少子高齢化などを背景に、卸売市場の取扱量は減少の一途をたどっているのが実情だ。 一方で、築地ブランドを中心的に担ってきたのは、目利きの技に裏打ちされた仲卸業者といえ、観光やにぎわいの源泉になっている。豊洲移転を強いられれば、その歴史と伝統が廃れかねない。 方針では、築地跡地の売却益を豊洲整備費に充てる従来の計画を取りやめ、民間の力を借りて五年後をめどに築地市場を再開発する。土地の賃貸料を赤字必至の豊洲市場の運営費に回す案がある。 しかし、不確定要素は多い。 老朽化が進み、耐震性を欠いた築地の建物が早期に刷新されるのは歓迎するが、土壌の汚染具合によっては再開発期間は長引くおそれがある。豊洲とともに、食の安全安心の確保は絶対条件である。 公設公営からの転換を含め、業界内の合意形成は難航が予想される。殊に豊洲と築地の往復を迫られる業者の声には、十二分に耳を傾けねばならない。 食のテーマパークを擁した町づくりとなれば、中央区をはじめ地元住民の参画も不可欠だ。豊洲を抱える江東区の意向もあろう。都は情報公開と説明を尽くし、都議会も議論を深めるべきである。 PR情報 |
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