夢の無い話し
最初から夢の無い話しで申し訳ないのですが、『神巫女 -カミコ-』はもともと『ピコンティア』の開発資金を確保するために始まったプロジェクトでした。『ピコンティア』とは僕(スキップモア)と、Kan. Kikuchi さんとで作っている箱庭スローライフRPGです。
『ピコンティア』は牧場、釣り、クラフトなど何でもアリなゲームの予定。
さて、開発資金を確保するためのプロジェクトということなので、当たり前なのですが開発にお金をかけることはできません。そのためにまず以下の3点を決めました。
- 『ピコンティア』のアクション部分を流用する。
- 販売価格は500円。
- 開発期間は3ヶ月程度。
この3点から逆算していくと現実的にどういうゲームが作れるかがおのずと見えてきます。まず『ピコンティア』のアクション部分のプログラムを流用するのでジャンルはアクション。販売価格から考えてプレイ時間は最低1時間は必要。プレイ時間と開発期間から工数的に実装できるステージ数は4つが限界。とまあ、夢の無い仕様の策定方法ですね。
そんな感じで大枠が決まれば後は見た目を整えてパブリッシャーにプレゼンをするだけです。この時点ではまだ Nintendo Switch の仕様は知る由もなく、ゆえに『神巫女』は Steam 向けのゲームとして考えていました。
仕様を元に作ったプレゼン用のダミー画像。
そして Steam 向けにと考えていた『神巫女』は、なぜかプレゼンをしたその日のうちに Nintendo Switch 向けに開発し、しかもローンチを狙うという無謀なプロジェクトになっていたのでした。
時間が無い話し
Nintendo Switch のローンチ狙いになったと言っても、この時点ではコントローラの形はもちろんハードの発売日なんてまったく分かっていません。ただ、時間が無い事だけは確かです。
僕はここ数年、プログラマと組んで2人でゲームを作るという制作スタイルを行っていました。プログラム以外のゲームデザイン、アート、サウンド、テキストなどは僕が1人で担当し、できた素材をプログラマに渡して形にしてもらうという流れです。しかしこの『神巫女』に関しては3ヶ月で作らないといけないという事情があったため、時間がかかりそうな部分、具体的に言うとプレイヤーセレクト画面のキャラクターイラスト(なんだかんだで1週間ぐらいかかりそう)、サウンド(少なく見積もっても1ヶ月はかかるのは確実)、テキスト監修(ゲーム中の古い言い回しが合ってるかどうかが自分ではわからない)を、それぞれ外部のクリエイターにお願いする事にしました。
プレイヤーセレクトのイラストができるまで。
また、今までエフェクトやキャラクターの動きの一挙手一投足を僕がFlashで動画を作って指示していたのですが、今回はプログラマの Kan. Kikuchi さんにある程度おまかせし、出来上がって来た物を修正して完成させるという方法でいくことにしました。特に仕様を書くのが大変なボスキャラの攻撃パターンは、先に素材を渡して好きなように作ってもらい、その間に僕はマップを作成するという感じで、開発期間を短縮しながらお互いの得意なところに注力するという、好循環を作る事ができたのではないかと思っています。それでも全然時間は足りなかったのですが・・・。
ステージ1のボスの素材。
そして夢の有る話し
『神巫女』の開発期間は予定より1ヶ月延び、最終的に4ヶ月かかりました。日本ではローンチから約1ヶ月遅れの4月13日にリリース。そのタイミングが良かったのかどうかは分かりませんが、国内、海外とも、思っていた以上に多くの人に遊んでもらうことができ、いろいろなメディアで取り上げていただけるぐらいには成功を収める事ができました。そして、当初の目的だった『ピコンティア』の開発資金も無事に確保することができたので、これからしばらくはまた “自分が作りたいゲームを作って生活する” という、夢の有る生活を送ることができそうです。
開発中の『ピコンティア』。
あ、『神巫女』ももちろん “自分が作りたいゲーム” でしたよ。ただ、続編を作る機会があるのなら、今度はじっくり時間をかけて作りたいですけどね!