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ユージン・カスペルスキーのサイバー兵法

私が20年間サイバーセキュリティと
関わって学んだこと

ユージン・カスペルスキー [Kaspersky Lab 取締役会長兼最高経営責任者(CEO)]
【第7回】 2017年6月21日
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すべては「20年前」に始まった

 20年前、日本では初代トヨタプリウスが発売され、長野新幹線が運行を開始した。国外ではビル・クリントン大統領が2期目の就任式に臨んだほか、IBMのスーパーコンピューターDeep Blueがチェスの世界チャンピオンを打ち負かし、チェスにおける人間優位の時代に終わりを告げた。そしてロシアでは、私と数名の仲間がコンピューターセキュリティのスタートアップを立ち上げた。

 サイバーセキュリティに携わって20年間(研究者や開発者としての約10年間も追加)を過ごした今、この間に起きた変化を振り返るよい機会が巡ってきたと思っている。

 端的に言えば、この20年で何もかもが変わった。世界はまったく違った場所になり、あらゆるものがデジタル化され、裏でコンピューターシステムが動いている。エレベーターからタービン、街灯、監視カメラまで、すべてがコンピューターで動いている。デジタルシステムへの依存は絶対的なものにも思えるが、今でも急速に進化している。デジタルネットワークとデータを利用せずに競争できる企業は、もはや世界のどこにも存在しないと言っていいだろう。しかし、ここに至るまでにはいくつか段階があった。

 その皮切りはPCの普及だ。次に、PCがインターネットに接続されるようになると、大量のオンラインサービスが登場し、その後スマートフォンの利用と販売が急増した。今はモノのインターネット(IoT)活用の機運が高まるまっただ中で、次々に登場するデバイスはどんどんスマートになっていき、インターネットに接続されている。スマートコネクテッドデバイスの数はすでに世界人口を上回っており、間もなくさらに増えるだろう。

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ユージン・カスペルスキー
[Kaspersky Lab 取締役会長兼最高経営責任者(CEO)]

ユージン・カスペルスキー(Eugene Kaspersky)
1989年、暗号学を学んでいた際に自身が利用していたPCが「Cascade」ウイルスに感染したことで、サイバーセキュリティにおけるキャリアを意図せずスタートした。1997年にKaspersky Labを設立し、2007年にはKaspersky Labの最高経営責任者(CEO)に任命された。2013年、取締役会長に就任し、現在に至る。2011年にSYS-CONの「World's Most Powerful Security Exec」 (世界で最も影響力のあるセキュリティエグゼクティブ)に選出され、2012 年には英プリマス大学から科学名誉博士号を授与された。また、その世界規模でのITセキュリティへの取り組みが評価され、Foreign Policy誌の「2012年 Top Global Thinkers」(世界規模で考える人)の1人に選出された。


ユージン・カスペルスキーのサイバー兵法

サイバーセキュリティ分野の世界的な第一人者であり、セキュリティ企業Kaspersky Labの取締役会長兼最高経営責任者(CEO)を務めるユージン・カスペルスキー氏が書き下ろし寄稿。世界を取り巻くサイバーセキュリティの最新事情を独自の視点から分析、日々変化する脅威から企業や個人はどうやって身を守ればいいのかを指南する。
 

「ユージン・カスペルスキーのサイバー兵法」

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