韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が19日、古里原発1号機の永久停止記念行事で原発の安全性に懸念を示したことをめぐり、韓国国内の原発専門家らは「大統領の記念演説は、誤った情報に基づいて原発の危険性を過度に浮き彫りにした面がある」と主張した。
文大統領は19日、最近の慶州地震に見られるように、韓国はもはや地震の安全地帯ではないことから、脱原発すべきだと主張した。これに対しソウル大学原子核工学科の黄一淳(ファン・イルスン)教授は「韓国が地震の安全地帯ではないという点は事実」と述べつつも「昨年の慶州地震はマグニチュード5.8で、韓国の原発の耐震設計範囲に収まっている」と語った。
もともと韓国の原発はマグニチュード6.5の地震に耐えるよう設計されている。その後、2011年の東日本巨大地震に伴う福島第一原発の事故に鑑みて、新設される原発はもちろん、既存の原発についてもマグニチュード7.0に耐えられるよう補強工事を行った。非常発電施設も追加した。福島第一原発の事故では、原発が地震を感知して自動停止したものの、続いて起こった津波により非常発電装置が損なわれて冷却水の供給が中断し、水素爆発が起こった。黄教授は「福島第一原発の事故では、使用済み核燃料から出る水素が爆発して原発の建屋が壊れたが、韓国の原発は原子炉を保護する建屋が日本のものよりずっと頑丈で、有事の際に水素が爆発しないよう外部に排出する装置も備えている」と語った。
文大統領が「福島原発の事故で2016年3月現在、1368人が死亡した」と言及したことをめぐっても、誤解される面があるという指摘が出た。「1368人死亡」は、昨年3月6日の東京新聞による報道だという。ソウル大学の朱漢奎(チュ・ハンギュ)教授は「記事に出てきた死者の95.5%は、避難後にストレスで健康が悪化した60歳以上の人物で、67%は80歳以上の高齢者だった。福島の原発事故現場において、放射線被ばくによって死亡した人は一人もいない」と語った。