ミッションステートメントは「シゴトでココロオドル人をふやす」
“シゴトSNS”の「WANTEDLY」を運営している、ウォンテッドリー株式会社。ミッションステートメントは「シゴトでココロオドル人をふやす」。その思いについて、CTOの川崎禎紀氏は次のように言う。
「ビジネスパーソンは、1週間のうち5日間という生活時間の大部分を仕事に費やしていますが、仕事がつまらないと感じている人がたくさんいます。そうではなく、日々の仕事が楽しく充実したものであればその人はもっと幸せになれ、そんな人が一人でも増えれば世の中も良くなるでしょう。私たちは、ビジネスパーソンがそんな仕事に出合う新たな機会がつくれる機能を盛り込んだ、ネットワーキングのためのプラットフォームを提供しています」
同社は、発足直後のFacebook日本法人に入社してSNSが世の中を大きく変える可能性を確信した仲暁子氏が、2010年9月に設立。学生時代にプログラミングに親しんだ経験もあり、自らRuby on Railsを学んで人集めのサイトを構築したことが始まりだ。そのサイトに1万人を超えるユーザーが集まったが、プロがしっかりつくったものではなく拡張性が乏しかったため、プロに依頼し本格的なサイトをつくり直す。これが2012年1月にオープンした「WANTEDLY」だ。
当初は、転職を意識し人と企業をマッチングする機能からスタート。2014年2月にはプロフィール機能のバージョンアップ、同年5月には連絡帳機能を新設して、現在の3機能が整う。この間、業績は急上昇し、2014年度は前年比500%という高い伸びを見せている。
「とはいえ、サービスを開始して3年で、まだまだ『WANTEDLY』を知らない人はたくさんいます。特に学生層に対して、若いうちから働くことをポジティブに感じてもらうためにも、インターン募集とのマッチングなどを通じてもっと知ってもらえるようにしていきたいと思っています。また、既に着手していますが、海外展開にも力を入れていきます。理念ややりがいが求心力となるスタートアップ企業はアジアやアメリカなどでたくさん誕生していますが、こうした求心力でのマッチングこそ、『WANTEDLY』がより力を発揮できる分野です」と川崎氏は力を込める。
生活の大部分を費やす仕事。WANTEDLYは日々の仕事が楽しく充実したものになる世の中を目指すサービスだ
ビジネスパーソンが新しい仕事に出合える機会づくりに資する3大機能
「WANTEDLY」には、大きく3つの機能がある。
まずは中心的な機能である、人と企業のマッチングプラットフォーム。リクルーティングという側面では、従来の求人サイトにおける“給与”や“職歴”といった“条件”によるマッチングではなく、“どんな思いに突き動かされてその業務を行っているのか”“どんなやりがいがあるのか”“どんな仲間が働いているのか”といった、より本気で働く“モチベーション”によってマッチングを行えるようにつくられているところが、最大の特徴である。
「従来の転職活動は、限られた情報で絞った応募先の企業にいきなり履歴書を持って面接に臨む、というスタイルでした。つまり、お互いをよく知らない段階で転職や採用を決めることになり、それがミスマッチの原因になっていたと思います。『WANTEDLY』は、そうしたいわば“いきなり結婚を申し込む”というものではなく、“まずはデートから”といった感じで、企業が主催するイベントに参加してみる、その企業で働いている人にカジュアルに話を聞いてみる、といったことからアクションを起こせます。Facebookとも連携していますので、お互いの発信内容で人となりを確認するといったこともやりやすいという特長もあります」(川崎氏)
2つめの機能は、プロフィール。いわば“オンライン履歴書”で、転職や仕事の獲得のためのセルフブランディングに活用できる。同機能の大きな特長は、“他己紹介”を充実させられるところだ。
「日本人は、自分のことについてのアピールが控え目になりがちです。また、自分では気づかない、あるいはそれほどとは思っていないことでも、周りの人からみれば素晴らしい長所であるといったこともあります。そういったことを客観的に知人に言ってもらうことで、その人の真価がより伝わりやすくなるといえます」
3つめの機能は、名刺管理だ。自分がつながる人を記録・管理し、何か仕事などで連絡を取りたくなった時などに活用できる。
「これら3つの機能は総じて、ビジネスパーソンが新しい仕事に出合える機会づくりに資するものです。お互いの得意分野や価値観を知り、仕事の依頼や入社のオファーを出しやすくなるといえます」(川崎氏)
2016年11月現在、利用企業数約18000社、ユーザー数約18万人を数える。利用企業の顔ぶれとしては、LINEやmixi、DeNA、amazon、クックパッドなどのIT系著名企業はもちろん、サントリーやNTTコミュニケーション、日本マイクロソフト、ヤフーなどの大手、地方自治体、さらには京都大学iPS研究所など、利用事業者は多方面に広がり始めている。
「企業活動に共感し、そこに働く意義を見出して自己実現を図っていきやすい『WANTEDLY』のコンセプトは、今の時代に働く人のモチベーションに合っているのだと思います。それが、当社が急成長している最たる要因だと思いますね」と川崎氏は言う。
モノをつくるエンジニアやデザイナーの力を最大限生かせる会社を目指す
創業者や役員全員がプログラミングできるエンジニアという同社。
「当社はネットサービスの企業と認識しており、足で稼ぐ営業ではなく、モノをつくることができるエンジニアやデザイナーの力を最大限生かせる会社を目指しています。企画や事務スタッフも、自らの頭でビジネスの仕組みを考えられる人が活躍できる会社といえます」と川崎氏は説明する。
同社では、よく“オーナーシップ”という言葉が使われている。これは、「会社の大きな目標やコンセプトを理解した上で、各自が自分の頭で考え主体的に仕事を進めていく」という風土を表している。そして、お互いをよく理解し合い、本気で働けるモチベーションを重視する『WANTEDLY』を運営する同社自身、コミュニケーションの機会を多層的に設けている。
まずは「Demo Day」。2週間に1度、エンジニアが試作したプロダクトを全体に発表する場である。開発の背景や経緯、仮説と実証結果、失敗したことやうまくいったことなどを発表し、みんなから意見をもらう。もちろん優れたものは正式なサービスとして採用される。
次に、「カルチャーランチ」。社員が増加していく中、それぞれが“オーナーシップ”を常に発揮して仕事をやり続けられるよう、アトランダムに選ばれた3人の社員と仲氏が一緒にランチを取りながら、経営理念や事業戦略を共有するという場だ。
「オールカルチャーランチ」もある。全社員が5人程度のグループに分かれ、仕事や仕事以外の具体的なテーマにもとづいてディスカッションし、お互いの価値観や信念、考え方などを知り合うというものだ。これも2週間に1回というハイペースで行われている。
年度末には営業をストップして全員でハッカソンを行い、表彰式のあと忘年会に突入する。
日常的にも、チャットなどのツールを活用し、同期的・非同期的なコミュニケーションやコラボレーションを推進している。
さらに、調べたことや入手した情報などを共有するナレッジシステムも活用。
「エンジニアには、プログラミングしたコードを共有して非同期的に意見を出し合ったり、ペアプログラミングで同期的に両者の考え方や手法の違いを議論するといったブラッシュアップの機会も豊富にあります」と川崎氏。
このほか、人材育成の観点で、ブログで発信したり、社外のセミナーで成果を発表するといった活動を推奨している。
人事考課においても、四半期ごとの業績レビューだけでなく、「毎月、毎週のように上司とメンバーは業務目標の達成状況などについて話し合っている」と川崎氏は言う。
そんな同社が求める人材は、常に新しいことにチャレンジしていけるマインドの持ち主。
「技術や知識はすぐに陳腐化します。吸収力や柔軟性がないと、古いままでは通用しなくなります。変わることは意外に難しいですが、それができる人に来ていただきたいですね」と川崎氏は呼びかける。