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「2年間とにかく耐えた」Daraが日本に居続ける理由とは?

2017/06/20, 18:00 - BY RIOT GAMES

LJL

「2年間とにかく耐えた」Daraが日本に居続ける理由とは?

開幕3連勝!好調RPGの秘訣は「研究」?

“快勝”とはこういうことを指すのだろう。7th heaven(7h)に対してセットスコア2-0、試合時間は両方とも30分以内、スムーズな試合運びで勝利をつかみとったRampage(RPG)。Summer Splitに入ってからは、1戦も落とさず負けなしだ。

「3連勝は予想していましたが、全部2-0で勝てるとは思っていませんでした。どこかで1戦ぐらいは落とすんじゃないかなと思っていたんですが、すべて勝てているのですごく良い感じですね。今日は前回のRascal Jester(RJ)戦より良かったです。ピックも良かったし、チーム内でのコミュニケーションも良くとれて思い通りのプレイができました。ただミスはあったので、そこは直していかなければならないと思います」

RPGといえばSpring Splitでも強さを発揮し、レギュラーシーズンこそ1位を逃したものの、ファイナルでは見事優勝を果たしている。そのまま好調の波に乗り続けているような感じもするのだが、Dara自身はそうは思っていないようだ。

「昨シーズンとはメタが違うので、優勝からずっと波に乗っているという感じではないですね。僕らはオフシーズンのあいだもすごく研究したんですよ。今はLJLのすべてのチームに韓国人選手がいるのでそれに合わせたバンピックを組むようにしていて、そこは昨シーズンと比べて格段に良くなっている点だと思います」

彼の言う“研究”の内容を、もう少し詳しく聞いてみた。

「自分たちが何をされたら辛いか、っていうのを常に考えていますね。相手のピックは試合になるまで分からないので自分たちにフォーカスを合わせてバンを進めているんですが、それが上手くいっていて勝てているんだと思います。先週RJ戦の2戦目はバンピックでミスをしたのが苦戦の原因になってしまったので、自分たちに対して憤りを感じましたね。でもあの試合があったからこそ、今日満足のいく試合ができた気がします」

RPGに訪れた変化のきっかけは「MSI」

昨シーズンのRPGは“自分たちは強いから勝てる”というような自信に満ちあふれたプレイや言動が多かったのに対し、今シーズンは対戦相手を研究したり自分たちのミスに対して憤りを感じたりと、スタンスがだいぶ変わっているように見受けられる。何か心境の変化でもあったのだろうか。

「これはあくまでも僕個人の考えなんですけど、実は昨シーズンは優勝までは考えていませんでした。Topも変わったしMidも新人だし、ADCのYutoriMoyasiも去年の10月にフランスで行われたIEMではTopとして出場していたんですよね。だから今年のSpring Splitではとりあえず息を合わせようというというところからスタートしたんですが、いつの間にか全員が“俺のフィジカルは誰よりも上手い”というマインドになってしまい、個人のフィジカルだけで勝とうとしていた気がするんです。今シーズンはチームとして動くことを重視して互いの実力を認め合うようになったので、すごくやりやすくなりましたね」

そしてこの変化は、MSIでの経験が大きかったとDaraは語る。

「MSIはSpring Splitと同じマインドでやって負けたんですよ。じゃあ勝つためにはどうしたら良いのかというのをチームで話し合った結果、“チームとして動こう”と目標を定めました。そしてもう一度世界に挑戦しようというマインドに変わったので、今日のようなほぼ完璧な試合ができたんだと思います。MSIで負けたことによって、大切なことに気づけました」

ラカンはスレッシュの次にスタイリッシュなチャンピオン

Daraが自らほぼ完璧と自負するこの日の試合で筆者が気になったのは、7hもRPGもレッドサイドを選択したことである。

「うちのチームは昨シーズン、レッドサイドの勝率がすごく悪かったんです。ブルーサイドでの勝率が90%を上回っていたのに対し、レッドサイドにおける勝率は50%を下回っていました。だから僕たちは、レッドサイドでも勝てるようにトライしていかなければならないと考えています。ただRound1でBurning Core(BC)が僕らを相手にレッドサイドを選択してきたっていうのもあったので、かならず両方のサイドのバンピックを用意するようにはしていますね」

バンピックといえば、今シーズンのRPGはすべてのメンバーが同じピックをほとんどしていない。全員がチャンピオンプールを広げようと努力し、さまざまなピックに挑戦していこうという姿勢の表れなのだろうか。

「挑戦というよりは、やっぱりチームにとってどんなピックが良いか、どんな構成が良いかということを考えています。もしメンバー全員が新しいピックをしたら、それはちょっと違うと思うんです。既存のピックをしつつ、どこかに新しいピックを盛り込んでいくという形で練習をしています」

Supportに盛り込まれる可能性のある新しいピックといえば、放送インタビューでDara自身が言及していたラカンを思い浮かべる人も多いだろう。

「ラカンは、スレッシュの次にスタイリッシュなチャンピオンが出たなと思いましたね。イニシエートがあれだけできるチャンピオンはほかにいませんから。最初ザヤ・ラカンがどのぐらい良いか研究するためにYutoriMoyasiとデュオをやっていたんですが、強いけどレーン戦はちょっと微妙だという結論に達してやめてしまったんです。ところが最近韓国のLCKでザヤ・ラカンが出てきてどういう風にすればレーン戦で上手くやれるかということが分かったので、ラカンを使いたいなと思うようになりました」

「少しでもLoLをプレイする人が増えたらいいな」

ここで少し、Daraのこれまでの歩みについて振り返ってみたい。実は最初、Daraは中国でコーチになろうとしていたという。ところがRPGからのオファーを受け、やっぱり選手としてプレイしたいと考えて来日したのが2015年5月のことだった。

「最初は日本でのプロゲーマー生活が、正直それほど良い環境ではありませんでした。日本語の実力も伸びないし外に遊びに行くこともできず辛かったんですが、とにかく耐えようという気持ちでしたね。最初のシーズンは優勝できて良かったんですけど、直後のグランドファイナルで負けてとてもショックを受けました。そこでやっぱりもう一度ちゃんと優勝したいと思って、もう1シーズン耐えようと決めたんです」

そして迎えた2016年のSpring Splitだったが、Daraは学業の都合で帰国を余儀なくされ、ファイナルには出場することができなかった。チームも、準優勝に終わった。

「自分が出られなかったので、次のシーズンでもう一度やってやろうと思いました。だからSummer Splitで優勝できたときは本当に嬉しかったですね。でもその後ブラジルで開催されたIWCQで、また負けたんですよ。そのころはチームに対してもあまり良い感情を持っておらず、チームを辞めようと思っていました」

フランスで開催されたIEMにDaraが出場しなかった理由も、関係があるという。

「心の整理がしたかったんです。韓国に帰国して両親に相談したかったので、フランスへは行きませんでした。でも両親から“お前のやりたいようにやれ”と言われて、もう一度考え直したんです。そこでやっぱり世界大会に出て韓国チームと対戦したいという気持ちになり、再びRPGでプレイしようと思いました。まあ、今は勝てないと思いますけど(苦笑)。今までロシアやブラジルのチームとは対戦しましたが、NAやEU、LMSやKRといった強豪チームと対戦して自分たちの実力を試してみたいという気持ちが芽生えました」

さらなる高みを目指して日本に戻ってきてくれたDara。ぜひ日本チームをワールドクラスのステージに連れて行ってほしいものである。最後に、ファンへのメッセージをお願いした。

「先日ファンの方からDMで“自分もSupportをやっているけれどワードはどのように刺したら良いですか”という質問が来たので、動画を編集してツイッターに載せてみました。こういった動画を通じて、少しでもLoLをプレイする人が増えたらいいなと思っています。でも日本語は、書き間違えてしまいましたけどね(苦笑)。応援してくださっているファンの皆さんにはいつも感謝しています。僕たちはLJLでも3連覇を目指したいし世界大会にも出場したいので、そのために精一杯努力するつもりです。あと、僕は日本語の勉強も頑張ります!」

とにかく真面目。だからこそ、つたない日本語が異常に可愛く感じられるのかもしれない。Daraはいつもファン思いで、間違いなく“愛されキャラ”であることを認識したインタビューであった。本人にとってプロゲーマー生活は「耐える」ことなのかもしれないが、少しでも長く日本に居続けてほしいと願わずにはいられないのである。

ライター:スイニャン