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【経済】ドタバタTPPでプーさん自由に 米離脱で文学の版権切れ
ぬいぐるみのクマと動物たちの触れ合いを描いた英国の児童文学「クマのプーさん」の著作権保護が五月末で切れ、六月二十五日に角川書店から新訳本が発行される。環太平洋連携協定(TPP)に盛り込まれた保護期間の延長で著作権切れが二十年先に延びることになっていたが、米国の離脱でTPPが発効できず、プーさんの自由化が実現することになった。 TPPにおける著作権の保護延長は、ミッキーマウスなどの人気キャラクターを抱える米国の主張で決まった。これを受けて日本は昨年末に国内法を改正。TPP発効と同時に、TPP参加国以外の国も含めた国内外の作品の保護期間を作者の没後五十年から七十年に延長することにした。 しかしTPPは発効されず、プーさんの著作権は切れた。今後は二〇〇五年に著作権保護が切れたサンテグジュペリの「星の王子さま」を競って出版したように、プーさんの「新訳ラッシュ」がみられる可能性が出てきた。一方、ディズニー映画のキャラクターの基になったクマの絵は著作権保護が残り、まだ利用できない。角川書店の新訳は直木賞作家の森絵都さんが担当し、挿絵作家の村上勉さんが新たにプーさんを描いた。 ◆新訳など期待 「保護延長見直しを」日本での著作権の保護期間はTPPの発効と同時に二十年延長されることになっている。米国を除く十一カ国のTPPでも、発効すれば米国が要求した「保護強化」が国内で実行される可能性がある。専門家からは米国のTPPからの離脱を機に保護期間を見直すべきだ、との声が出ている。 「クマのプーさん」の原作者、A・A・ミルンは二〇〇六年に没後五十年となった。英、米、仏など第二次大戦の連合国の戦前、戦中の作品には「戦時加算」という例外規定があり、最大で開戦から終戦までの約十年五カ月が保護期間に加えられる。それでも保護期間は今年五月二十一日には終了。TPPが発効していれば自由化はさらに延び、期間切れは三七年五月に遠のくはずだった。 人気作品の著作権切れは翻訳や映像化など新たな創作を促す。二〇年に探偵小説「長いお別れ」で知られるレイモンド・チャンドラー、二二年にはヘミングウェーなど人気作家の著作権切れが続く。TPPの議論次第では、人気作品の新訳を楽しめるようになる時期が延びる可能性がある。 著作権に詳しい弁護士の福井健策氏は「著作権の保護延長は米国を利するだけ。見直すべきだ」と主張。一方、政府内には「一つ見直したら各国から要求が噴出し収拾がつかなくなる」(経済官庁幹部)など慎重な意見もある。 (矢野修平) PR情報
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