今ほど獣医学部が世間をにぎわすこともないと思います。
ただ、ここで家計学園の問題を述べるつもりはありません。
前は、この波を利用させて頂いて獣医学の抱える問題点のことを紹介させていただきました。
そして、記事中で獣医の方の書いた本を紹介させていただいたところ、その著者の方にリツイートしていただき、twitterで少しやり取りできるという幸運にも恵まれました。
獣医学部はそんなに晴れやかなものだけではないことを是非知ってほしいと思います。
そして、今回は獣医学とは違う動物たちのための学問を紹介したいと思いますが、その前に少しだけ獣医学部の問題をおさらいしておきたいと思います。
獣医学部の問題
前の記事で紹介させていただいた獣医学部の問題とは、日本ではその教育課程において動物実験がほぼ必須であること。そして動物実験は結果として動物を殺すことが非常に多いということです。
動物が好きで動物を救いたいと思った学生たちにつきつけられる動物実験は非常に学生の心にトラウマを残すものと思います。
そしてこのことが日本の動物倫理に与える影響というものは少なくないと思います。
そういうことを防ぐために、海外の獣医学部には動物実験を行わずに獣医師免許が取れるような過程もあるそうです。
前回の記事では主にこのようなことを書かせて頂きました。
動物と関わる学問は他にないのか?
じゃあ、動物が好きな人にとって動物のために行える学問はないの?という疑問が当然出てくると思います。
動物に関連する学問で例えば思いつくのは、畜産学かもしれません。でもこれは食肉用の学問であり、動物のことを思った学問ではないからなぁ。。。
そんな人に是非知っていてほしいのが動物行動学という学問です。
多くの人にとっては聞きなれないものかもしれません。
ですが、今は動物行動学が非常に発達しているのです。例えば、鳥が生まれて初めて目にしたものを親と思いこむ『刷り込み』という現象はローレンツというノーベル賞を受賞した動物行動学者が発見したものでした。
動物行動学とは?
動物行動学とは動物たちの行動や社会性を追求する学問であり、現在ではそれらを通じて動物たちの心を科学的に解明しようとする学問のことです。
もっと具体的なビジョンは、動物に関する様々な逸話や科学的検証をもとに、動物たちの、人間に勝るとも劣らない感情世界を解明し、種を超えた共存に向かうための学問なのです。
多くの人にとって、また動物を愛したことのある全ての人にとって、動物たちが感情を持ち、愛情、憎しみ、喜び、寂しさ等の感情を大いに示すことは疑いの余地がありません。
しかし、残念ながら、動物は客体にすぎず、環境の刺激に反応しているだけの機械のようなものにすぎないと、本気で信じている人が、科学者にも、一般にも、いまだ大勢います。
動物行動学はそのような考え方を覆せる可能性を秘めた学問だと思います。
どうでしょうか、動物行動学に興味を持っていただけたでしょうか。
動物行動学関連書籍
ソロモンの指環/コンラート・ローレンツ著
ソロモンの指環とはソロモン王が持っていた動物たちと心を交わすことができるという魔法の指輪のことです。そしてローレンツはそんな指環などなくても多少なら動物の心がわかるとの思いから『ソロモンの指環』という本を書きました。
たくさんの動物たちに囲まれながら暮らしたローレンツからみた動物たちの世界が非常に魅力的に、そしてわかりやすく描かれています。
小学生でも読めるような作品であり、小学生から高校生の間に読んでいたら、世界が変わっていたかもしれないと思う一冊でした。
この記事を読んで少しでも動物行動学に興味を持っていただけたら、この本だけでも是非手に取ってみて頂ければと思います。
ちなみに、犬好きであるならば ローレンツが書いた『人イヌにあう』という本もお勧めです。
次に紹介するのが『動物たちの心の科学』という本です。『ソロモンの指環』よりもより最近書かれた本であり最近の動物行動学が明らかにしてきたことを知ることが出来ます。また、『ソロモンの指環』が日常から見た動物行動学なのに対して、こちらの本はより学問として確立された動物行動学なので、これから動物行動学を学びたいという人には是非読んでみてもらいたいと思います。
日本で動物行動学が学べる場所
最後に日本で動物行動学が学べる大学を紹介します。
動物資源科学科 動物行動学研究室/北里大学獣医学部 (こちらは獣医学部所属です)
わかり次第これからも増やしていきたいと思います。