東京への人口集中と地方の過疎化は予想以上に進むと思う理由
2008年頃に日本の人口減少が始まってから、将来推定人口への関心が高まっている。特に、いわゆる「増田レポート」(地方消滅 - 東京一極集中が招く人口急減 (中公新書))が出てからは、急激な人口減少による地方都市の消滅危機が騒がれるようになった。
増田レポートは単に2010年国勢調査に基づく2013年推計に基づいたものだが、私がより多くのデータを見ていて思うのはむしろ「本当の未来はもっと厳しいのではないか」ということだ。
以下のグラフを見て欲しい。これは、1995年から2010年の4回の国勢調査に基づく東京都と秋田県の推定人口の推移である。首都の東京と、人口の減少率の最も大きい秋田を選んだ。グラフを見ると、東京都の人口予測はほとんど「減る減る詐欺」みたいなもので全く当たっておらず、毎度上方修正されている。逆に秋田県の人口予測は、ほぼ毎度下方修正されている。
ちなみに最新の2015年国勢調査の結果(将来推計は未発表)を見ると、またしても東京の人口は予測より増えた。2010年国勢調査に基づく予測では、2010年の1316万人から2015年には19万人増の1335万人となっているが、実際には36万人増の1352万人となった。秋田の人口はほぼ予測通りとなったが、日本の総人口が上方修正されたことから相対的には引き続き下方修正されているとも言える。
そもそも地域別人口予測というのは非常に難しく、例えば、専門の統計屋を200人以上雇っている米国センサス局による州別人口予測も全く当たっていない。
地域別予測が難しいのは、地域間の人口移動が予測しにくいからだ。国をまたいで移動する人は少ないので日本の総人口であればそれなりに予想はつくが、国内での移動を予測するのは困難だということである。推計を行っている社人研も毎度のように「移動率の予測は難しいのでエイヤで決めました」という趣旨のことが書いてある。推計の前提は調査毎に異なるが、ここ20年の調査では移動率が徐々に落ち着くという前提で推定されているものが多い。
今後の人口移動率が推計通りに落ち着くのかどうかは分からないが、私はこの前提にはかなり疑問を抱いている。なぜなら、人口(正確に言えば世帯数)が減少する社会では住宅が余るので住宅確保の困難さが人口移動の制約になりにくいからだ。具体的には、人口集中に一定のブレーキをかけていた東京での住宅確保の困難さが今後、大幅に緩和される。少子化が激しい東京では、ただでさえ人口の自然減で住宅があまるというのに、建築規制の緩和でますます多くの高層マンションが建てられている。住宅の需給が緩み続けるのは必定で、いずれ家賃の下落が新たな需要を呼び起こすだろう。一方、過疎化が進む地方では都市の中心部以外ではもはや住宅市場は成立しておらず、今後価格によって需要が喚起される見込みはほぼない。
社人研による政府公式の人口予測は、あくまで過去の人口データに基づくベースラインを提供しているに過ぎない。総人口が減少する中で建築規制を緩和し自由な競争の中で各地域や自治体が人口を奪い合えば、恐らく現在の政府予測以上に東京への人口集中と地方の過疎化が進むだろう。
<増田レポート>
<近年の住宅政策について>
増田レポートは単に2010年国勢調査に基づく2013年推計に基づいたものだが、私がより多くのデータを見ていて思うのはむしろ「本当の未来はもっと厳しいのではないか」ということだ。
以下のグラフを見て欲しい。これは、1995年から2010年の4回の国勢調査に基づく東京都と秋田県の推定人口の推移である。首都の東京と、人口の減少率の最も大きい秋田を選んだ。グラフを見ると、東京都の人口予測はほとんど「減る減る詐欺」みたいなもので全く当たっておらず、毎度上方修正されている。逆に秋田県の人口予測は、ほぼ毎度下方修正されている。
ちなみに最新の2015年国勢調査の結果(将来推計は未発表)を見ると、またしても東京の人口は予測より増えた。2010年国勢調査に基づく予測では、2010年の1316万人から2015年には19万人増の1335万人となっているが、実際には36万人増の1352万人となった。秋田の人口はほぼ予測通りとなったが、日本の総人口が上方修正されたことから相対的には引き続き下方修正されているとも言える。
そもそも地域別人口予測というのは非常に難しく、例えば、専門の統計屋を200人以上雇っている米国センサス局による州別人口予測も全く当たっていない。
地域別予測が難しいのは、地域間の人口移動が予測しにくいからだ。国をまたいで移動する人は少ないので日本の総人口であればそれなりに予想はつくが、国内での移動を予測するのは困難だということである。推計を行っている社人研も毎度のように「移動率の予測は難しいのでエイヤで決めました」という趣旨のことが書いてある。推計の前提は調査毎に異なるが、ここ20年の調査では移動率が徐々に落ち着くという前提で推定されているものが多い。
今後の人口移動率が推計通りに落ち着くのかどうかは分からないが、私はこの前提にはかなり疑問を抱いている。なぜなら、人口(正確に言えば世帯数)が減少する社会では住宅が余るので住宅確保の困難さが人口移動の制約になりにくいからだ。具体的には、人口集中に一定のブレーキをかけていた東京での住宅確保の困難さが今後、大幅に緩和される。少子化が激しい東京では、ただでさえ人口の自然減で住宅があまるというのに、建築規制の緩和でますます多くの高層マンションが建てられている。住宅の需給が緩み続けるのは必定で、いずれ家賃の下落が新たな需要を呼び起こすだろう。一方、過疎化が進む地方では都市の中心部以外ではもはや住宅市場は成立しておらず、今後価格によって需要が喚起される見込みはほぼない。
社人研による政府公式の人口予測は、あくまで過去の人口データに基づくベースラインを提供しているに過ぎない。総人口が減少する中で建築規制を緩和し自由な競争の中で各地域や自治体が人口を奪い合えば、恐らく現在の政府予測以上に東京への人口集中と地方の過疎化が進むだろう。
<増田レポート>
<近年の住宅政策について>
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