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ブランディングの戦略家が【ブランド戦略の全て】を解説するブログ

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3C分析とは?使える3C分析のやり方を徹底解説【無料テンプレート付】

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ビジネスの世界には数多くのビジネスフレームワークが存在する。

その中でも、多くのマーケティング担当者にとって馴染みが深いのは「3C」や「4P」ではないだろうか?

このブログに辿り着いたあなたなら、すでに様々なビジネスフレームワークに触れていることだろう。多くのビジネスフレームワークは、長年の歴史に耐え「それなりに」有用なものだ。

しかし「それなりに」と書いたのには理由がある。ビジネスフレームワークは、その「利点」や「用途」を正しく理解した上で使いこなせなければ、有用な分析結果は導き出せないからだ。

世の中には様々な「ビジネスフレームワーク本」が氾濫しているが、ビジネスフレームワークが真に役立つどうかは、あなた自身の「ビジネスフレームワークに対する向き合い方」にかかっている。

よく見られる間違いは、様々なビジネスフレームワークを「単なる情報収集・整理のための穴埋め道具」として扱ってしまうことだ。これだけインターネットが普及し、誰でもそれなりの情報を入手できる。そのような環境の中で、ビジネスフレームワークを単なる「情報収集」や「情報整理」に使うだけでは、あなた独自の付加価値は生み出せない。

一般論として、どのような分析も「情報の収集」→「情報の整理」→「思考」→「解釈」→「示唆」というステップを辿る。「情報の収集」や「情報の整理」はもちろん欠かせない業務だが、情報のコモディティ化が加速度的に進んでいる現在では、より重要度が増しているのは後半の「思考」→「解釈」→「示唆」のステップだ。

「整理した情報」は、どの面を切り出して考えるかによって現状認識が変わる。そして現状認識が変われば、その後のフェーズである戦略や施策の内容が変わる。

もしあなたが優れた戦略や施策を導き出したいのなら、ビジネスフレームワークを単なる「情報収集・整理」のためだけに使うのではなく、ぜひ「思考を巡らす」ために使い倒してほしい。

今回は、数あるビジネスフレームワークの中でも、特に汎用性が高い「3C分析」について解説する。

もちろん目指すのは、これまでのPEST分析ファイブフォース分析の解説と同様に「フレームワークのカタログ本」によくある浅い解説ではなく、3C分析を「思考ツールとして使い倒す」方法だ。

www.missiondrivenbrand.jp

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今回は、無料でダウンロードできるテンプレートも用意している。

もしあなたが「3C分析について理解したい」はもちろん、単なる理解を越えて「3C分析を思考ツールとして使いこなせるようになりたい」と考えているのなら、ぜひこの解説を最後までお読みいただきたい。

3C分析とは?

3C分析の「3C」とは、ブランディングやマーケティングを取り巻く環境である「Customer(市場・顧客)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」の3つの頭文字を取ったものだ。

市場を取り巻く環境を「3つのC」という視点で整理することで、抜け漏れのない市場環境分析が可能になる。もしあなたがマーケティング担当者なら、以下のような図をどこかで目にしたことがあるはずだ。

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この「3C」を考案したのは、元マッキンゼー&カンパニーのコンサルタントで、現在ではビジネスブレイクスルー大学の学長である大前研一氏だ。1984年に出版された「ストラテジック・マインド―変革期の企業戦略論」によって広く知られるようになった。

「3C分析」は、マーケティングの教科書では必ずといってよいほど紹介されているビジネスフレームワークだ。しかし「なぜそもそも3つのCなのか?」という「根本」から解説している書籍は驚くほど少ない。

マーケティングとは、突き詰めて言えば「競合ブランドを上回る魅力で生活者ニーズを満たし、利益を上げ続ける企業活動」だ。

ここで勘の良いあなたなら、上記の文章の中に「3C」の要素がすべて含まれていることに気が付いたはずだ。

  • 「生活者ニーズを満たし…」←Customer(市場・顧客)のニーズ
  • 「競合ブランドを上回る…」←Competitor(競合)の強み・弱み
  • 「上回る魅力で…」←Company(自社)の強み・弱み

上記をご覧になれば、3C分析の本質とはマーケティングの本質そのものであることがわかる。つまり3C分析の目的とは「Customer(市場・顧客)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」の3つを分析し、ブランデンングやマーケティングのKFS(Key Factor for Success:成功要因)を発見することだ。

一般に、分析となると数多くのデータを収集し、多大な労力が必要とされる。しかし3C分析の目的や本質を理解していれば、要点を絞り込んだ情報収集や分析が可能となる。

そして冒頭で解説した通り、3C分析をするに当たって重要なのは「情報の収集」や「情報の整理」だけでなく「思考」→「解釈」→「示唆」まで辿り着くことだ。特に3C分析の次のフェーズは「戦略策定」となるため、あなたが3C分析で導き出す「示唆」は、戦略を形作る上で非常に重要なインプットとなる。

それでは、ここから先は「3C分析」について詳細に解説していこう。

3C分析-1:「市場・顧客分析」の視点とやり方

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「市場・顧客分析」の目的とは何だろうか?

「市場・顧客分析」の目的は、ニーズの量と質、つまり「市場規模の大きさ」と「どのようなニーズが存在するか?」を把握することだ。

それに加えて重要なのは「市場・顧客分析」は「競合分析」や「自社分析」に先立って分析しなければならない点だ。その理由は以下の2点となる。

  1. 3C分析において致命的に重要なのは「市場の定義」
  2. 「市場の定義」ができなければ「競合の定義」ができない

以下、一つずつ解説していこう。

3C分析において致命的に重要なのは「市場の定義」

論理学の考え方の一つに「因果推論」という考え方がある。

端的に言えば「AだからB」「BだからC」「CだからE」…と因果関係を結びながら結論を導き出す考え方だ。

「因果関係」といえば、人はつい「結論」や「結論に至るまでのロジック」に着目しがちだ。しかし因果関係において最も重要なのは、因果関係を結ぶ上で置いている「そもそもの前提」だ。

上記の例でいえば、どれだけ「AだからB」「BだからC」「CだからE」というロジックが正確だったとしても、そもそもの前提である「A」が間違っていれば、その後の因果関係や結論は意味をなさなくなる。

これを3C分析に置き換えれば「そもそもの前提」とは「市場の定義」のことを指す。

例えば、あなたが眼鏡チェーンのマーケティング担当者だったと仮定しよう。普通に考えれば、眼鏡チェーンにおける「市場の定義」とは「視力が落ちて困っている人々」となる。しかしそう考えなかったブランドがある。JINSだ。

JINSは「市場=視力が"正常"な人々」と定義した。その結果、PCのブルーライトをカットする眼鏡を発売し、眼鏡市場を席巻したことはあなたもご存じの通りだ。もしJINSが市場の定義を「視力が"落ちた"人々」と定義していれば、JINSPCは誕生しなかったはずだ。

「市場の定義」は、3Cのその後の分析だけでなく「セグメンテーション」や「ターゲティング」あるいは「ポジショニング」を考える上での前提となる。そのため何度も吟味し、思考を巡らせながら決めていくべき最も重要な要素となる。

これが、3C分析の一番初めに「市場・顧客分析」を行わなければならない理由の一つ目だ。

「市場の定義」ができなければ「競合の定義」ができない

競合分析には、陥りがちな罠がある。

「会社規模が同等だから」「製品が似ているから」など、似て非なるブランドを誤って競合と捉えてしまう罠だ。

しかし競合とは「ターゲットとニーズが重なる他社ブランド」のことだ。だとすれば、ターゲットとニーズの集まりである「市場」が明確になっていなければ、競合ブランドを特定することはできない。

例えば「タブレット端末市場」を想定してみよう。

あなたがタブレット端末ブランドのマーケティング担当者なら、競合としてすぐに思い浮かぶのはライバル企業のタブレット端末ブランドのはずだ。しかしもし仮にタブレット端末に対するニーズが「いつでもどこでも仕事がしたい」ならノートパソコンが、あるいは「いつでもどこでもメールチェックしたい」ならスマートフォンが競合になることも有り得る。

このように「市場の定義」次第で分析すべき「競合」は変わる。3C分析の一番初めに「市場・顧客分析」を行わなければならない二つ目の理由だ。

市場・顧客分析で必要な3つの視点

次に「市場・顧客分析」を行う上で必要な視点の解説に移ろう。

「市場・顧客分析」を行う上で必要な視点は「量」「質」そして「変化」の3つに分けることができる。

市場規模を把握する:量の視点

あなたのブランドの売上は「市場規模×マーケットシェア」の2つの要素で決まるはずだ。そして売上を決める要素の一角である「市場規模」とは、端的に言えば「ニーズの量の多さ」のことだ。

あなたの目の色は、参入している市場の市場規模(ニーズの量の多さ)が10億円なのか1,000億円なのかによって大きく変わってくるはずだ。なぜなら市場規模の大きさによって、ブランドの売上見込みや投資額が大きく変わってくるからだ。

それだけ重要な「市場規模」だが、量を捉える上で重要な原則がある。それは量を「全体からみた割合」として相対的に捉えることだ。

世の中には第三者機関が独自に調べた「市場規模」が存在する。しかしそれらは「市場内で競争するブランドの売上高を足しあげて積算する」というアプローチをとっている。そのため、市場規模の絶対額はわかるが「ターゲット全体の中で何%の人が買っているのか?」という「全体から見た割合」がわからない。

そして「ターゲット全体の中で何%の人が買っているのか?」がわからなければ「ターゲット全体の中で何%の人が買って"いない"のか?」もわからないため、開拓余地=ホワイトスペースの規模がわからなくなる。

もし「全体から見た割合」も含めて市場規模を把握したいなら、ぜひ第三者機関の市場規模だけでなく、マーケティングリサーチの活用を検討しよう。

市場のニーズを把握する:質の視点

「量」の中には、当然その内訳としての「質」が存在する。市場規模が把握できたら、次は市場の質、つまり市場内に存在するニーズを把握しよう。

例え同じ市場であっても、市場内に存在するニーズは大きく異なる。例えば、以下のようなニーズだ。

  1. 実利を求めるニーズ:品質・性能・利便性など
  2. 感性を求めるニーズ:デザイン・イメージなど
  3. 気分を求めるニーズ:実感・体験など
  4. 自己表現を求めるニーズ:自己実現・社会実現など

当たり前のことだが、生活者のニーズを満たせなければモノやサービスは売れない。そしてあなたの競合ブランドはこれらのニーズのどれか(あるいは全部)を満たそうと、虎視眈々と狙っている。

あなたがブランディングを成功させ競争優位を築くためには「市場ニーズの把握」は欠かせない分析となる。そして市場のニーズを把握する際には、ぜひどの競合ブランドがどのニーズを狙っているのか?を念頭に置きながら分析を進めて欲しい。

市場の変化を把握する:変化の視点

市場ニーズが把握できたら、次は市場の変化に着目しよう。

あなたがベテランのマーケティング担当者ならすでにご存じかもしれないが、マーケティングの世界には市場の変化を捉える上で有用な「プロダクトライフサイクル」という理論が存在する。

詳細はマーケティングの専門書に譲るが、ざっくり解説すると下記の通りだ。

  1. 市場の成長期:
    市場が右肩上がりの時期。実利ニーズが先行していることが多い。「ニーズの量」が急速に増えている時期であることから、競合よりもいち早く「ホワイトスペース」に浸透していく「スピード」が重要となる時期。

  2. 市場成熟期:
    市場規模が横ばいとなり、ニーズが細分化していく時期。この時期になると競合ブランドとの差別化のために「格安ブランド」や「キャラクターブランド」が出始める。逆に言えば、市場に「格安ブランド」や「キャラクターブランド」が出始めたら市場成熟化のサインとなる。この時期は「ニーズの量」が一定であり、顧客はリピート顧客が中心となる。よってブランドロイヤリティを高めて自社顧客を守りながら、いかに差別化戦略によって他社顧客のブランドスイッチを獲得するかがカギを握る。

  3. 市場衰退期:
    市場規模の縮小が始まる時期。「ニーズの量」自体が減少し「ホワイトスペース」の余地はほとんどなくなる。ブランドはコモディティ化し、差別化の中心が「低価格」となる。

こうしてみていくと「2.市場成熟期」や「3.市場衰退期」はホワイトスペースの余地が少なく、市場機会が見出しづらいことがわかる。しかしもう一歩深い視点を持つことで、新たな市場機会が発見できる場合がある。それは「変化の内訳を見る」という視点だ。

例えば、以下の図をご覧頂きたい。左側のチャートを見る限り、この市場は縮小しているように見える。しかし右側のチャートで「変化の内訳」を深掘りすると、市場の縮小はサブ市場Bに起因しており、サブ市場Aはむしろ拡大していることがわかる。

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このような現象は多くの市場で見られる。

例えばビール類市場における「ビール⇔発泡酒・第三のビール」自動車市場における「乗用車⇔軽自動車」などだ。

そしてこのような状態を、一般には「二極化」と呼ぶ。

市場成熟期あるいは衰退期には、ぜひ「市場の変化」だけでなく「変化の内訳」にも目を向けて欲しい。思わぬ発見が見出せるはずだ。

3C分析-2:競合分析の視点とやり方

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続いて競合分析の視点とやり方を解説しよう。

まず必要となるのが「競合ブランドの特定」だ。「市場・顧客分析」の項目で解説したが「市場の定義」がしっかりできていれば「競合」はおのずと明らかになるはずだ。

当たり前のことだが、競合ブランドを特定できなければ、競合分析をすることはできない。そして競合ブランドを特定するとき、大きく2つの視点を持つとヌケモレを防ぎやすい。

直接競合の視点

直接競合とは「生活者から見て、あなたのブランドと直接比較されるブランド」の事でだ。もしその競合ブランドが購入された場合、あなたのブランドは購入されない。逆にあなたのブランドが購入された場合、競合ブランドは購入されない。いわば「ガチンコ」で競合しているブランドを指す。

間接競合の視点

間接競合とは「同じ姿形の商品・サービスでなくても、提供価値が同じ商品・サービス」の事を指す。

例えば中古品の売買事業者である「ハードオフ」にとって、直接競合は「トレジャーファクトリー」となる。しかしハードオフの提供価値は「中古品を高く売れる」あるいは「中古品を安く買える」であり、例え業態が違えど「メルカリ」や「ヤフオク!」は提供価値において競合となりうる。

このように、競合ブランドを特定する際には「直接競合」だけでなく、ブランド提供価値に着目した「間接競合」も含めてリストアップしよう。

競合ブランドの構図を把握する

競合ブランドがリストアップできたら、次は俯瞰で見た「競合ブランドの構図」を把握するステップだ。

競合ブランドの中には、以下のような色分けが存在する。

  1. 市場そのものを牽引しているリーダーブランド
  2. リーダーに対して差別化でチャレンジしていくチャレンジャーブランド
  3. 専門性を強みにニッチな強みを活かしているニッチブランド
  4. リーダーやチャレンジャーを徹底的に模倣するフォロワーブランド

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上記は一般に「競争地位別戦略」と言われる。

1980年にフィリップ・コトラーが提唱した競争戦略理論であり、ブランドを競争地位別に4つに類型化した上で戦略目標を設定する考え方だ。

例えば飲料業界でいえばリーダーブランドは「コカ・コーラ」だ。自動販売機の設置数が最も多く、市場をけん引している。

一方で、コカ・コーラに対してユニークなプロモーションで果敢に挑んでいるサントリーはチャレンジャーブランドの位置づけとなる。

そして「緑茶」というニッチな分野で専門性を発揮している「伊藤園」はニッチブランド、売れ筋カテゴリーが現れるとすぐさま模倣品を出してくる「サンガリア」はフォロワーブランドとなる。

このように各ブランドごとの「色分け」が理解できれば、それぞれのブランドのおおよその戦略が推測できるようになる。結果、次のステップである「競合ブランドの特徴」を明らかにしやすくなる。

競合ブランドそれぞれの特徴を把握する

「競合ブランドの構図」が把握できたら、各ブランドの具体的な特徴を把握するステップに移ろう。各ブランドの特徴を把握するにあたって、ぜひ押さえておきたいのは以下の5点だ。

  1. 競合ブランドが捉えようとしているのはどのようなニーズか?
  2. 競合ブランドはどのような価値(=喜び)を提供しようとしているか?
  3. 競合ブランドはどのような戦略を採っているか?
  4. 競合ブランドはどのようなオペレーションを展開しているか?
  5. 競合ブランドの戦略やオペレーションを支えるリソースは何か?

以下、簡単に解説を加えよう。

競合ブランドが捉えようとしているのはどのようなニーズか?

当たり前のことだが、ブランディングやマーケティングにおいて最も重要なのは「ニーズを満たす」ことだ。

ニーズの満たし方には「今あるニーズを満たす」最適化アプローチと「今ないニーズを創り出して満たす」創造型アプローチの2つがあるが、どちらのアプローチも重要となるのが「競合ブランドより上手に」ニーズを満たすことだ。

よって、まずは「どの競合ブランドが」「どのニーズを」満たそうとしているかを把握することが重要となる。

競合ブランドはどのような価値(=喜び)を提供しようとしているか?

「どの競合ブランドが、どのようなニーズを満たそうとしているか?」が把握できたら、次のステップは各競合ブランドが「どのように」ニーズを満たそうとしているか?を把握するステップだ。

その際に着目すべきなのが、各競合ブランドの「ブランド提供価値」だ。ブランド提供価値とは「生活者がブランドから受け取る価値(=喜び)」のことを指す。

各競合ブランドには「品質」や「機能」「価格」など様々な側面があるが、それらの中で「ブランド提供価値」だけが、唯一各ブランドの「存在理由」であり「生活者」と「ブランド」をつなぐ接点となる。

よって、ぜひ入念に「競合ブランドは、どのようなブランド提供価値で生活者ニーズを満たそうとしているのか?」を検証しよう。

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競合ブランドはどのような戦略を採っているのか?

各競合ブランドの「意図」は、如実に「戦略」に現れる。なぜなら「戦略」の本質は「捨てる」意思決定だからだ。

一般に、マーケティングにおける「戦略」とは「セグメンテーション」「ターゲティング」「ポジショニング」であるとされる。

「セグメンテーション」とは「市場の捉え方と細分化の切り口」のことだが、いったん「市場の捉え方」や「細分化の切り口」を決めてしまえば、その他の視点は捨てることになる。

また「ターゲティング」においても、一度ターゲットを決めてしまえば、その他のターゲットは「捨てる」ことを意味する。

「ポジショニング」もまた「自社ブランドが担える独自の役割」を決めてしまえば、その他の役割は「捨てる」ことになる。

戦略とは、目的のために何に資源を集中し、何を捨てるかの意思決定だ。あなたの競合ブランドは、何に資源を集中させ、何を捨てているだろうか?

戦略を分析すれば、競合ブランドの「意図」が明確になる。そして「意図」が明確になれば、競合ブランドの「これからの動き」も推測しやすくなる。

競合ブランドはどのようなオペレーションを展開しているのか?

戦略は「オペレーション」によって具現化されて始めて成果を生む。

各競合ブランドの「意図(=戦略)」が把握できたら、その「意図」をどのように具現化しているのか?を把握しよう。

あなたがマーケティング担当者なら、4Pというフレームワークはどこかで聞いたことがあるはずだ。

4Pとはマーケティングミックスのオペレーションを捉えるフレームワークであり「Product:商品・サービス」「Price:価格」「Place:流通」「Promotion:販売促進施策」の頭文字を取ったものだ。

しかし最近では上記の4Pに加え「People:顧客対応スタッフ」「Process:顧客対応プロセス」「Physical Evidence:品質や信頼の証拠・証明」を加えた7Pの考え方を取り入れることも多い。

オペレーションは直接顧客と接する部分だ。よってオペレーションを分析すれば、より競合ブランドの特徴は見えやすくなる。

ぜひ入念に「各競合ブランドは、どのように戦略を具現化しているのか?」を検証しよう。

競合ブランドの戦略やオペレーションを支えるリソースは何か?

どのようなオペレーションも、投入している「リソース」の量や質によって成果は大きく変わる。リソースとして代表的なのは、以下の4点だ。

  1. 組織・人:
    組織カルチャー/企画系・実行系・管理系の人材能力/実行スピードなど
  2. モノ:
    基礎技術/応用技術/生産技術/設備/販売拠点など
  3. カネ:
    研究開発予算/設備投資予算/販売促進予算/広告宣伝予算など
  4. ブランド:
    知名度/知覚品質/ブランド連想/ブランドロイヤリティなど

競合ブランドのリソースは、外側から捉えるには限界がある。しかし「足」や「人脈」を使えば有識者やジャーナリスト、あるいは顧客から思わぬ情報が得られることがある。

ぜひ、できるだけの情報を集め分析してみよう。

3C分析-3:自社分析の視点とやり方

自社分析のやり方は、基本的に「競合分析」のやり方と同様だ。よってこの項目では、自社分析ならではの留意すべきポイントを中心に解説していく。

競合ブランドに対して自社ブランドを位置づける

「競合分析」で「競合ブランドの構図」を把握したように、今度は「自社ブランド」を競争地位戦略の中に位置づけてみよう。

しかしここでよくありがちなのは、つい「感情論」が入ってしまうことだ。

リーダーブランドに比べて、量的にも質的にもマーケティング資源が圧倒的に少ないにも関わらず、ついプライドからか(あるいは上司の顔色を慮って)自社ブランドを「フォロワー」ではなく「チャレンジャー」として位置付けてしまうケースが散見される。

気持ちとしてはわかるが「チャレンジャー」とは「リーダーにあと一歩及ばない2-3番手の地位」のブランドだ。リソースに圧倒的な差があるのなら、競争地位の位置づけは「ニッチャー」か「フォロワー」しかない。

上記の飲料業界の例でいえば、まさか「サンガリア」が「コカ・コーラの一歩及ばない2-3番手」とは、あなたも思わないだろう。

「フォロワー=模倣戦略」と聞くと嬉しい気はしないかもしれないが、3C分析の目的は「分析」であり「意気込み」ではないことに留意しよう。

自社ブランドの特徴を把握する

「競合分析」で押さえておきたいポイントとして、以下の解説を行ったことをあなたは覚えているだろうか?

  1. 競合ブランドが捉えようとしているのはどのようなニーズか?
  2. 競合ブランドはどのような価値(=喜び)を提供しようとしているか?
  3. 競合ブランドはどのような戦略を採っているか?
  4. 競合ブランドはどのようなオペレーションを展開しているか?
  5. 競合ブランドの戦略やオペレーションを支えるリソースは何か?

これを「自社分析」に当てはめると以下のようになる。

  1. 自社ブランドが捉えようとしているのはどのようなニーズか?
  2. 自社ブランドはどのような価値(=喜び)を提供しようとしているか?
  3. 自社ブランドはどのような戦略を採っているか?
  4. 自社ブランドはどのようなオペレーションを展開しているか?
  5. 自社ブランドの戦略やオペレーションを支えるリソースは何か?

上記のうち、特に留意したいのが「自社ブランドの戦略やオペレーションを支えるリソースは何か?」の部分だ。これまでk_birdは様々なクライアントにお伺いしディスカッションを重ねてきた。その経験上、こと「リソース」に関してはクライアントの態度は大きく2つに分かれることが多い。

1つ目は「うちの会社の強みは最新鋭の工場です」と工場案内を促されるケースだ。

実際に工場に案内していただくと確かに優れた工場であることはわかる。しかし、ことブランディングやマーケティングに関して言えば、重要なのは「工場がすごい」ことではなく「工場のすごさが、ブランド提供価値にどう結びついているか?」だ。

どんなに優れた工場も、そこから生み出された製品が生活者の魅力につながっていなければ宝の持ち腐れとなる。よって、もし「自慢の工場」が存在する場合には「それがどうブランド提供価値に反映しているのか?」を分析してみよう。

2つ目は、自信なさげに「うちの会社には強みといえる強みがないので、3C分析ができません」とおっしゃられるケースだ。

このケースは頻繁に遭遇するが「強み」は必ずしも「今、存在していなければいけないもの」ではない。「今後、創り出していけるもの」だ。

よって自社分析を行う際には「自社は際立った強みがないからしょうがない」ではなく「自社はどのような強みを獲得すれば勝てるのか?」という創造的な視点を持ち合わせておこう。

「把握」から「分析」へ。クロス3C分析のすすめ

ここまで、3C分析の3つの視点である「市場・顧客分析」「競合分析」「自社分析」について解説した。

しかし冒頭でも述べた通り、ビジネスフレームワークは単なる「穴埋め問題」ではない。単なる穴埋めであればそれは「作業」でしかなくなるが、3C分析を「思考ツール」として使いこなせるようになれば、それはあなたにとって「一生のスキル」となる。

よってここからは「3C分析」を「穴埋め」ではなく「思考ツール」として使いこなすための方法として「クロス3C分析」を紹介しよう。

クロス3C分析とは?

一般に、3C分析といえば以下の図とセットで紹介されることが多い。

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しかし上図では「市場・顧客」「競合」「自社」を個別に捉えることが前提となってしまっているため「単なる穴埋め問題」に陥りやすい。

3C分析では、よく「強み」という言葉が使われる。しかし「強み」とは生活者から見れば「魅力」のことであり「感じ方」のことだ。

だとすれば「強み」は「自社」と「市場・顧客」との間で相対的に決まることになる。だとすれば、いくら「自社」と「市場・顧客」を「個別」に分析したところで、強みは明らかにならないことになる。

また「自社」と「競合」との間でも同様だ。

例えどんなにあなたが「自社ブランドの強みはこれです!」と主張したところで、競合ブランドがそれを上回る強みを持っていれば、それは本質的な意味であなたのブランドの強みにはならない。

「強み」とは「自社」と「競合」との間で相対的に決まる。だとすれば、こちらも「自社」と「競合」を「個別」に分析したところで「強み」は明らかにならない。

どのような物事も、単に「対象を見る」だけでなく「対象と対象の関係性を見抜く」ことで初めてその本質が浮き彫りになる。

これらを踏まえた上で、k_birdがおすすめしている3C分析のフレームワークが下図だ。「Customer(市場・顧客)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」をクロスさせることで「関係性」にも思考を巡らすことを意図したフレームワークだ。

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 クロス3C分析の視点-1:市場×競合の関係性の視点

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「市場×競合」の関係性を分析する目的は「競合ブランドが抱えている課題」を発見することだ。

なぜなら、もし「競合ブランドの課題」が発見できれば、それはあなたのブランドから見た時の「機会」となり得るからだ。

以下、解説しよう。

市場×競合の関係性-1:競合ブランドは誰にどのような価値を提供しているか?

「市場×競合」を掛け合わせた時に見えるのが「競合ブランドは誰に、どのような価値を提供しているのか?」だ。

上記を分析することで明らかにしたい事柄は下記の通りだ。

  1. 競合ブランドが手薄になっているニーズは何か?
  2. 競合ブランドの「ブランド提供価値」と「ターゲットニーズ」にズレはないか?

もし「手薄になっているニーズ」や「ニーズと提供価値とのズレ」が発見できれば、それは競合ブランドが抱える市場課題となる。つまり裏を返せばあなたのブランドにとっては市場機会となる。

市場×競合の関係性-2:提供価値に対して、競合ブランドの方針は一貫性があるか?

競合分析を解説した際に、以下のポイントを紹介したことを覚えておいでだろうか?

  1. 競合ブランドが捉えようとしているのはどのようなニーズか?
  2. 競合ブランドはどのような価値(=喜び)を提供しようとしているか?
  3. 競合ブランドはどのような戦略を採っているか?
  4. 競合ブランドはどのようなオペレーションを展開しているか?
  5. 競合ブランドの戦略やオペレーションを支えるリソースは何か?

この5つのポイントを分析する際に重要な視点が「1-5までの一貫性」だ。

もし競合ブランドが1-5まで一貫している場合、それは競合ブランドの強力な「強み」となる。なぜならその競合ブランドの提供価値は、より強固で永続的なものとなるからだ。

一方で、現実的には上記5つを一貫させるのは難しく、どこかに矛盾が存在することが多い。そしてあなたがその矛盾を発見できたとすれば、それは競合ブランドが抱える課題であり、あなたのブランドにとっては機会となる。

クロス3C分析の視点-2:市場×自社の関係性の視点

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「市場×自社」の関係性を分析する目的は「自社ブランドの機会と課題」を発見することだ。

市場×競合の関係性-1:自社ブランドは誰にどのような価値を提供しているか?

「市場×自社」を掛け合わせた時に見えるのが「自社ブランドは、誰にどのような価値を提供しているのか?」だ。

上記を分析することで明らかにしたい事柄は下記の通りだ。

  1. 自社ブランドを魅力に感じてくれているターゲットは誰か?
  2. 「自社ブランドのターゲット」と「ブランド提供価値」はマッチしているか?

もし上記2つがマッチしていれば、それはあなたのブランドにとって市場機会となりうる。一方でマッチしていない場合、それはあなたのブランドが抱える市場課題となり、ブランドスイッチのリスクに晒されていることになる。

市場×競合の関係性-2:その提供価値に対して、自社ブランドの方針は一貫性があるか?

こちらも「市場×自社」に関して「一貫性」に着目しよう。

  1. 自社ブランドが捉えようとしているのはどのようなニーズか?
  2. 自社ブランドはどのような価値(=喜び)を提供しようとしているか?
  3. 自社ブランドはどのような戦略を採っているか?
  4. 自社ブランドはどのようなオペレーションを展開しているか?
  5. 自社ブランドの戦略やオペレーションを支えるリソースは何か?

もし、あなたのブランドに「1-5までの一貫性」があれば、それはあなたのブランドにとって大きな「強み」となる。

なぜなら、例え「個々の要素」では競合ブランドに劣ってたとしても「個々の要素を組み合わせる力」が競合より上回れば、生活者に提供できる価値も上回ることが可能だからだ。

ビジネスの世界には、企業の強みを把握する上で有用な「VRIO」というフレームワークが存在する。

  • V:Value(経済価値)=提供できる価値(=喜び)の度合い
  • R:Rarity(希少性)=企業資源の希少性の度合い
  • I:Imitability(模倣可能性)=模倣されにくい度合い
  • O:Organization(組織)=企業資源の組織的運用能力の高さの度合い

「様々な要素を組み合わせて一貫させる力」は、特にブランディングにとっては価値ある組織能力となる。そしてVRIOフレームワークに当てはめればわかる通り「希少性があり真似しにくい組織能力」として、大きな強みにもなる。

特に大手企業は組織の階層が多く、かつ関係する部門が広範に渡るため「一貫性」を保ちにくい。よって、もしあなたが下位企業のマーケティング担当者なら「一貫性を生み出す強み」に着目してみよう。もし「一貫性」を形創れるのなら、大きな強みとなり得るはずだ。

クロス3C分析の視点-3:自社×競合の関係性の視点

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「自社×競合の関係性」を分析する際のポイントは以下の2点となる。

  1. 競合が満たせていないニーズを満たすことができるか?
  2. 競合が満たしているニーズを上回ることができるか?

以下、解説しよう。

自社×競合の関係性-1:競合が満たせていないニーズを満たすことができるか?

先の「市場・顧客分析」のステップで「市場に存在するニーズ」は洗い出せているはずだ。そして「競合分析」によって、既に競合ブランドが「どのニーズを」「どうやって」満たしているかも、明らかになっているはずだ。

その分析結果をもう一度眺めてみよう。もし「洗い出したニーズ」の中で「競合ブランドが満たせていないニーズ」があり、かつ「自社ブランドの強みが活かせるニーズ」があるのなら、それは大きな競争優位となるはずだ。

自社×競合の関係性-2:競合が満たしているニーズを上回ることができるか?

例え競合ブランドが市場ニーズを満たしていたとしても、その裏付けとなる「ブランド提供価値」や「戦略」あるいは「オペレーション」「リソース」に弱みがあれば、あるいはそれらの一貫性が弱ければ、あなたのブランドはその隙を突くことができる。

つい「すでに競合ブランドが満たしているニーズだから」と諦めがちだが、そのニーズを満たしている競合ブランドの「一貫性」に着目してみよう。

もし「一貫性」に弱みがあれば、あなたのブランドは「一貫性」を形創ることによって競争優位を築くことが可能となるはずだ。

クロス3C分析の視点-4:市場×競合×自社の関係性の視点

いよいよ最後に「市場×競合×自社」で整合のとれた結論を導き出そう。クロス3C分析に当てはめると、下記の図の真ん中の三角となる。

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そして、思い出してほしい。

冒頭で、マーケティングとは「競合ブランドを上回る魅力で生活者ニーズを満たし、利益を上げ続ける企業活動」だと紹介した。

  • 「生活者ニーズを満たし…」←Customer(市場・顧客)のニーズ
  • 「競合ブランドを上回る…」←Competitor(競合)の強み・弱み
  • 「上回る魅力で…」←Company(自社)の強み・弱み

クロス3C分析を通して、あなたは「個別のC」だけでなく「それぞれのCの関係性」も分析できているはずだ。それはつまり、3C分析を通して「優れたマーケティングの条件」を満たした結論を見出したこととイコールだ。

そして、そこから得られた結論こそが、あなたのブランドを成功に導くKFS(Key Factor for Success:重要成功要因」となる。

使える3C分析:ダウンロード用無料テンプレート

3C分析は一見手軽に見えるだけに「穴埋め問題」に陥りがちだ。

よって1人でうんうん頭をうならせるよりは、チームメンバーが参加するワークショップ形式のほうが生産性が高まりやすい。

今回の解説では、3C分析を「思考ツール」として使いこなすためのテンプレートを用意している。以下の画像をクリックしてもらえれば、ダウンロードできるようになっている。

このテンプレートを貼り出してチームでポストイットワークを行えば、多様な視点で3C分析を行えるはずだ。ぜひ、あなたはもちろん、チームメンバーで使いこなしていただければ幸いだ。

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終わりに

今回は「3C分析とは?3C分析を【思考ツールとして使い倒す方法】を徹底解説」と題して、3C分析について解説した。ぜひ、あなたのチームのブランドマーケティングにおいて、有益な示唆となれば幸いだ。

今後も、折に触れて「ロジカルで、かつ、直感的にわかるブランディングの解説」を続けていくつもりだ。(過去記事と今後の掲載予定はこちら

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