「人種差別と女性差別との複合差別」在特会敗訴
77万円の支払いを命じた1審・大阪地裁判決を支持
民族差別的なヘイトスピーチで名誉を傷付けられたとして、在日朝鮮人の女性が「在日特権を許さない市民の会(在特会)」と元会長に550万円の賠償を求めた控訴審判決が19日、大阪高裁であり、池田光宏裁判長は、77万円の支払いを命じた1審・大阪地裁判決を支持し、双方の控訴を棄却した。その上で、人種差別を認めた1審から踏み込み、「人種差別と女性差別との複合差別に当たる」と認定した。
原告側弁護士によると、複数の差別が結びつく「複合差別」を認めた判決は初めて。
原告は、ヘイトスピーチに批判的な記事を書いたフリーライターの李信恵(リ・シネ)さん(45)。判決によると、在特会の元会長は2013~14年、神戸市内の街宣活動で「朝鮮人のババア」、インターネット上の動画では「立てば大根、座ればどてかぼちゃ」などと発言した。
控訴審で、李さん側は「ババアという発言は女性としての人格を認めず、尊厳を踏みにじる」などと主張。池田裁判長は「名誉毀損(きそん)や侮辱は原告が女性であることに着目し、容姿などをおとしめる表現を用いた」と女性差別を認定した。
判決後、大阪市内で記者会見をした李さんは「差別のない未来を子どもたちに残すため、これからも小さな勝ちを積み重ねていきたい」と喜んだ。
一方、在特会の元会長は代理人弁護士を通じて「賠償金が77万円にとどまったことは、判決の政治利用をもくろむ勢力の思惑をくじく結果となったことを評価する」とコメントし、上告する意向を示した。【遠藤浩二】