“なんとなく” 風俗で・・・

“なんとなく” 風俗で・・・
風俗で働く女性たちはどのような思いを抱えているのか。ことし2月、支援団体がまとめた「夜の世界白書」によると、現役で風俗で働いている377人の女性たちへのアンケート調査では、風俗を続ける理由として、お金に次いで、「なんとなく」が2番目の理由に挙げられていました。「なんとなく」風俗で働くということはどういうことなのか、私は、そのズレが気になり、支援団体を通して取材をすることにしました。(横浜局 大石達生カメラマン)
西日暮里にある雑居ビルの一室。さまざまな悩みを抱えながら風俗店で働く女性たちが毎日のようにやってきます。

風俗で働く女性の支援団体「GrowAsPeople」の事務所です。女性たちが抱える仕事のトラブルや、転職などを支援しようと5年前に設立されました。

この団体では、風俗で働くことの是非は問わずに、風俗から派生する女性の問題を解決したいと、これまでに5000人の悩みと向き合ってきたそうです。

風俗で働くことに悩む女性たちの駆け込み寺

西日暮里にある雑居ビルの一室。さまざまな悩みを抱えながら風俗店で働く女性たちが毎日のようにやってきます。

風俗で働く女性の支援団体「GrowAsPeople」の事務所です。女性たちが抱える仕事のトラブルや、転職などを支援しようと5年前に設立されました。

この団体では、風俗で働くことの是非は問わずに、風俗から派生する女性の問題を解決したいと、これまでに5000人の悩みと向き合ってきたそうです。

なんとなく風俗で

支援団体の代表の角間惇一郎さんによると、今「なんとなく」風俗で働く人がとても多いといいます。

そして彼女たちのほとんどがある悩みを抱えています。
相談に来ていた女性に話を聞くことができました。

彼女の名前はノゾミさん(仮名・33)。
20代のころに風俗の仕事をはじめました。
当初はお金に困っていたそうですが、今はそれも解決しています。それではなぜ、風俗を続けているのか聞くと、彼女から返ってきた答えは「なんとなく・・・」でした。

やめるきっかけもないし風俗は収入もいいので、そのままダラダラと続けているのだといいます。

でも、彼女は「もやもやした」悩みを抱えて角間さんの元へ相談にやってきました。その理由は将来に対する漠然とした不安です。

角間さんによると「なんとなく」働く人たちの多くが、ノゾミさんと同じように将来に対する不安を抱えています。

肉体労働の風俗の仕事は、いつまでも続けることができません。

「なんとなく」続ける人の多くが、風俗を辞めた後の明確な目標や夢がなく、抜け出す理由があいまいになるため、将来への不安があってもズルズルと続けてしまうと角間さんは考えています。
ノゾミさんは取材の中で、私にこう語ってくれました。

「風俗は強い動機がないと辞められない世界です」

風俗の仕事はなぜ、そこまで辞めることが難しいのか。私はその理由をさらに知りたくなりました。

抜けたい でも埋められない空白

相談に来ていたもうひとりの女性が取材に応えてくれました。

都内の風俗店で働くハルカさん(仮名・30)は、この仕事を始めて7年になります。

学費を払うために始めた風俗の仕事でしたが、支払いが終わった後も辞められずにいます。

理由は転職をしたくても履歴書を埋めることができないからでした。
取材で彼女の自宅を訪れた際、私に見せてくれた書きかけの履歴書には、短期大学を中退したあとの職歴は「なし」の文字。風俗で働いてきた7年間は、“なかったこと”にしていました。
「ほかの人に知られたくない」という後ろめたい思い。

一度は飲食業の仕事に就きましたが、風俗業に従事していたという過去がばれてしまうのではないかと不安になりすぐに辞めてしまいました。そうやって仕事を続けるうちに「なんとなく」7年が経過していました。

ハルカさんが履歴書を見つめながら漏らしたひと言です。

「あ、ないんだな、確かに仕事をしてちゃんとお金を得て生活をしてきたはずなのに今までのことってなんだろう」

遠くを見つめる彼女の目には、誰にも相談できずに時間だけがすぎてしまったこれまでの苦悩が表れているように見えました。

だれにも過去を知られずセカンドキャリアを築くために

支援団体の角間さんは、「なんとなく風俗で働く女性の多くは、過去を知られたくない気持ちを持っていて、いざ辞めたいと思ったときに前に進めず立ち止まってしまうことが多い」と指摘します。

そこで角間さんたちは、風俗で働く女性たちの転職に理解のあるNPOや中小企業など15社と提携して、インターン先を紹介しています。
本格的な就職の前に、働く経験を積みながら「空白の職歴」を埋めるセカンドキャリアプログラムです。

インターン先の企業は、担当者をのぞいて彼女たちがどういう過去を背負っているのか、ほかの社員には明かさないように徹底しています。

このプログラムを利用して、2年間で37人がインターンを経て正式に就職を果たしています。

私たちの取材中、履歴書の空白に悩んでいたハルカさんもこのプログラムを利用して都内の企業と条件が一致し、インターンが実現することになりました。

インターンが決まった日、ハルカさんの表情から不安を感じながらも、辞めるきっかけをつかめるのではないかという期待を感じました。

“なんとなく”から見えてくるのは

「なんとなく」風俗の仕事を続け、辞めるきっかけをつかめず悩む多くの女性たち。

角田さんは
「風俗で働くことの是非を論ずるのではなく、彼女たちが昼の社会に戻りたいというニーズがあるならそれに応えていきたいし、社会も彼女たちを受け入れる度量を持ってほしい」と考えています。
取材を通して感じたのは、「なんとなく」働く人たちは風俗という仕事を知られたくない、という思いを常に抱えているということ。

大切なのは、偏見を無くして彼女たちの思いをまず知ることだと感じました。
「風俗というところ以外でも、居場所は作れるんだということを、私は実践してみたい」

ハルカさんの決意を私も応援したいと思いました。