目次
旅館・ホテル業概要
施設数
平成27年3月末現在の旅館業の営業許可施設数は、7万8,898施設であり、前年度より621施設の減少となっています。うち、ホテル営業施設数は9,879施設、旅館営業施設数は4万1,899施設、簡易宿所数は2万6,349施設となっています。(衛生行政報告例より)
旅館業法の法とは
「法」を知る前に、まず「法令」とは何かを知る事が大事です。
「法令」とは、国会が制定する「法律」と内閣が制定する命令「政令」や大臣が制定する命令「省令」などのことです。
つまり、「法令」は「法律」と「命令(政令や省令など)」の二つを合わせたものです。
この「旅館業法」は国会で制定された法律です。
それと、「旅館業施行令」は内閣が制定する命令ということになります。
旅館業許可までの手続き
(参考:「旅館業のてびき」より(千代田保健所))
旅館業法概要について
旅館業法(昭和23年7月法律第138号)
1 定義
旅館業とは「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」と定義されており、「宿泊」とは「寝具を使用して施設を利用すること」とされている。旅館業は「人を宿泊させる」ことであり、生活の本拠を置くような場合、例えばアパートや間借り部屋などは貸室業・貸家業であって旅館業には含まれない。
また、「宿泊料を受けること」が要件となっており、宿泊料を徴収しない場合は旅館業法の適用は受けない。
なお、宿泊料は名目のいかんを問わず実質的に寝具や部屋の使用料とみなされるものは含まれる。例えば、休憩料はもちろん、寝具賃貸料、寝具等のクリーニング代、光熱水道費、室内清掃費も宿泊料とみなされる。
また、宿泊施設付きの研修施設(セミナーハウス)等が研修費を徴収している場合も、例えば当該施設で宿泊しないものも含め研修費は同じとするなど当該研修費の中に宿泊料相当のものが含まれないことが明白でない限り研修費には宿泊料が含まれると推定される。
ただし、食費やテレビ・ワープロ使用料など必ずしも宿泊に付随しないサービスの対価は宿泊料には含まれない。
2 旅館業の種別
旅館業にはホテル営業、旅館営業、簡易宿所営業及び下宿営業の4種がある。
(1) ホテル営業
洋式の構造及び設備を主とする施設を設けてする営業である。
(2) 旅館営業
和式の構造及び設備を主とする施設を設けてする営業である。いわゆる駅前旅館、温泉旅館、観光旅館の他、割烹旅館が含まれる。民宿も該当することがある。
(3) 簡易宿所営業
宿泊する場所を多数人で共用する構造及び設備を設けてする営業である。例えばベッドハウス、山小屋、スキー小屋、ユースホステルの他カプセルホテルが該当する。
(4) 下宿営業
1月以上の期間を単位として宿泊させる営業である。
3 営業の許可
旅館業を経営するものは、都道府県知事(保健所設置市又は特別区にあっては、市長又は区長)の許可を受ける必要がある。
旅館業の許可は、旅館業法施行令で定める構造設備基準に従っていなければならない。
旅館業の運営は、都道府県の条例で定める換気、採光、照明、防湿、清潔等の衛生基準に従っていなければならない。
4 環境衛生監視員
旅館業の施設が衛生基準に従って運営されているかどうか、都道府県知事(保健所設置市又は特別区にあっては、市長又は区長)は報告を求め、立ち入り検査をすることができる。この業務は環境衛生監視員が行う。
5 宿泊させる義務等
旅館業者は、伝染性の疾病にかかっている者や風紀を乱すおそれのある者等を除き宿泊を拒むことはできない。また、宿泊者名簿を備えておかなければならない。
宿泊者名簿は、「厚生労働省の所管する法令の規定に基づく民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する省令」第4条第1項に基づき、電磁的記録による保存ができる。
(省令の概要、条文 http://www.mhlw.go.jp/topics/2005/03/tp0328-1.html)
6 改善命令、許可取消又は停止
都道府県知事(保健所設置市又は特別区にあっては、市長又は区長)は構造設備基準又は衛生基準に反するときは改善命令、許可の取消又は営業の停止を命ずることができる。
(参考:厚生省「旅館業法概要」より)
旅館業法施行令で定める「簡易宿所」構造設備基準とは
二 階層式寝台を有する場合には、上段と下段の間隔は、おおむね一メートル以上であること。
三 適当な換気、採光、照明、防湿及び排水の設備を有すること。
四 当該施設に近接して公衆浴場がある等入浴に支障をきたさないと認められる場合を除き、宿泊者の需要を満たすことができる規模の入浴設備を有すること。
五 宿泊者の需要を満たすことができる適当な規模の洗面設備を有すること。
六 適当な数の便所を有すること。
七 その他都道府県が条例で定める構造設備の基準に適合すること。
(参考:「旅館業法施行令」より)
簡単に説明しますと、次のようになります。
- 客室の延床面積は、33平方メートル以上であること。
- 2段ベッド等階層式寝台を有する場合には、上段と下段の間隔は、おおむね1メートル以上であること。
- 適当な換気、採光、照明、防湿及び排水の設備を有すること。
宿泊者の需要を満たすことができる規模の入浴設備を有すること。(近場に公衆浴場があれば問題はありません) - 宿泊者の需要を満たすことができる適当な規模の洗面設備を有すること。
- 適当な数の便所を有すること。
例として- 宿泊者5人につき1つ洗面設備をつける、5人に付き男性用1つ、女性用1つ計2つトイレをつけるなど。
- 収容定員6~10名:便器3個、定員11~15名:便器4個、定員16~20名:便器5個〔大阪市〕
構造設備基準について
玄関帳場等を有しない施設〔大阪市の例〕
イ 宿泊施設の出入口に宿泊者の出入りを確認するためのビデオカメラその他の機器を有すること
ウ 宿泊施設の出入口及び窓は、鍵をかけることができるものであること
エ 宿泊施設及び管理事務室に宿泊者と連絡をとることができる電話機その他の機器を有すること
オ 宿泊施設及び管理事務室の出入口に近隣住民からの苦情等に対応する者の氏名及び電話番号並びに当該宿泊施設及び管理事務室が簡易宿所営業の施設である旨が表示されていること
カ 宿泊施設の出入口に管理事務室の所在地が表示され、かつ、管理事務室の出入口に宿泊施設の所在地が表示されていること
その他都道府県が条例で定める構造設備の基準に適合すること。
建築基準法「用途変更」とは
もうひとつ建物には建築基準法で用途を登録することが求められています。
100㎡以上の建物については「旅館」以外の用途に指定された建物を使う場合、「用途変更」という手続きが必要です。
「用途変更」する場合現行の建築基準法に適するように改造しなければならないので100㎡以上の建物では注意が必要ですが、ただ、「規模に関わらず」以下の項目等については建築基準法に適合させる必要があります。(原則100㎡未満は用途変更申請の必要はりませんが、建築基準法に適合させる必要があります)
<主な規定>
- 耐火性能の確保
- 排煙設備の設置
- 非常用証明装置の設置
- 階段の寸法(幅・蹴上・踏面)、手すりの設置、主なる階段における周り階段の禁止
- 階段・エレベーター・吹き抜け部分等の竪穴区画〔鉄製の扉等で遮煙性能が必要〕
- 廊下の幅
- 間仕切壁の使用(準耐火構造等の壁で天井裏・小屋裏まで達せしめること)
下の「用途地域」では、ホテル・旅館・簡易宿所等の建築が可能です。
- 第一種住居地域
- 第二種住居地域
- 準住居地域
- 近隣商業地域
- 商業地域
- 準工業地域
設置場所に関して旅館業法(旅館業法第3条第3項)
二 児童福祉法 (昭和二十二年法律第百六十四号)第七条第一項 に規定する児童福祉施設(幼保連携型認定こども園を除くものとし、以下単に「児童福祉施設」という。)
三 社会教育法 (昭和二十四年法律第二百七号)第二条 に規定する社会教育に関する施設その他の施設で、前二号に掲げる施設に類するものとして都道府県(保健所を設置する市又は特別区にあつては、市又は特別区。以下同じ。)の条例で定めるもの
つまり、周囲約100m以内の区域に
- 学校(大学は含まれません)
- 児童福祉施設
- 公民館
- 図書館
- 博物館
- 青少年育成施設
があって、設置するとその施設の清純な施設環境が著しく害されるおそれがある場合は許可されません。(旅館業法第3条第3項)
またこの施設は各都道府県の条例によって異なるので注意が必要です。
周囲100メートル以内(ちなみに大阪市は110m以内)に学校や児童福祉施設等があっても清純な施設環境が著しく害されなければこれらの施設があっても大丈夫です。
消防の許可
旅館業の許可取得には消防の許可も必要です。
具体的には「消防法令適合通知書」というものをもらいます。
旅館業法に必要なのは「消防用設備検査済証」ではなくて、「消防法令適合通知書」とのこと「消防法令適合通知書」をもらうためには「消防法令適合通知書交付申請書」を消防長に提出したのち立ち入り検査があります。
「消防用設備検査済証」は建物内の設備(火災報知器)が消防法に則ったきちんとした設備ですよ、ちゃんと消防は検査しましたよという証明書です。
「消防法令適合通知書」は、設備だけではなくで避難経路や防災担当者の明示など、事業者全体として消防法令に適合していますよという証明書です。
消防署の担当者によっても基準が変わってくるので図面をもって担当者と協議しましょう。