品目や特色 打ち込むだけ ネット上で販路開拓 農家・JA 実需と双方向 農水省が検索サイト
2017年06月18日
農水省は、農家やJAなどがインターネット上で、自らの条件に合った農産物の販売先を見つけられるサイトを立ち上げた。売りたい品目や量、農薬使用を抑えているといった経営の特色などの条件を打ち込めば、外食や中食、食品メーカーなど実需者、卸売業者の中から合致する事業者を絞り込める。産地の販路開拓を後押しし、農家の所得安定につなげる。
立ち上げたサイトは「アグリーチ」で、農産物流通の合理化を掲げた政府の「農業競争力強化プログラム」の一環。5月中旬から本格運用を始めた。実需者、卸側からも農家やJAの情報を検索できる双方向の仕組みのため、取引先へのアピールにも使える。
農家はまず、所在地や生産品目、出荷できる数量、農薬使用量を削減している、農業生産工程管理(GAP)認証を得ているといった経営の特色など、自らの情報を登録。JAや生産部会単位でも登録できる。一方、実需者も求める品目や数量、「外観より味にこだわる」といった仕入れで重視する点などを、卸も委託手数料率や出荷奨励金の水準、取扱品目などを登録する。
その上で販売先を探す場合、業種や所在地、品目などを入力すれば条件に合う実需者を検索できる。「小ロット希望」「従来よりも農薬使用量削減」といったキーワードを選び、さらに絞り込むことも可能。取り引きを希望する場合は業者に連絡を取ることもできる。
卸売業者については例えば、委託手数料や産地側が出荷量に応じて受け取れる奨励金で一定水準を打ち込めば、その水準以上の卸の一覧を表示できる。現状では、手数料は中央市場で営業する各卸の手数料率は横並び、奨励金も各卸は自治体が定める水準に準拠するなど固定的な状態で、今回のシステムで設定水準を「見える化」することで、競争を促す狙いだ。
「アグリーチ」は2016年度補正予算で開発し、公益財団法人の流通経済研究所が運営する。使用料は無料で、パソコンやスマートフォンなど携帯端末でも利用が可能。同研究所は初年は年間で農家、実需者とも各500件の登録を目指すという。
立ち上げたサイトは「アグリーチ」で、農産物流通の合理化を掲げた政府の「農業競争力強化プログラム」の一環。5月中旬から本格運用を始めた。実需者、卸側からも農家やJAの情報を検索できる双方向の仕組みのため、取引先へのアピールにも使える。
農家はまず、所在地や生産品目、出荷できる数量、農薬使用量を削減している、農業生産工程管理(GAP)認証を得ているといった経営の特色など、自らの情報を登録。JAや生産部会単位でも登録できる。一方、実需者も求める品目や数量、「外観より味にこだわる」といった仕入れで重視する点などを、卸も委託手数料率や出荷奨励金の水準、取扱品目などを登録する。
その上で販売先を探す場合、業種や所在地、品目などを入力すれば条件に合う実需者を検索できる。「小ロット希望」「従来よりも農薬使用量削減」といったキーワードを選び、さらに絞り込むことも可能。取り引きを希望する場合は業者に連絡を取ることもできる。
卸売業者については例えば、委託手数料や産地側が出荷量に応じて受け取れる奨励金で一定水準を打ち込めば、その水準以上の卸の一覧を表示できる。現状では、手数料は中央市場で営業する各卸の手数料率は横並び、奨励金も各卸は自治体が定める水準に準拠するなど固定的な状態で、今回のシステムで設定水準を「見える化」することで、競争を促す狙いだ。
「アグリーチ」は2016年度補正予算で開発し、公益財団法人の流通経済研究所が運営する。使用料は無料で、パソコンやスマートフォンなど携帯端末でも利用が可能。同研究所は初年は年間で農家、実需者とも各500件の登録を目指すという。
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2017年06月14日
農業再生産確保を 情報不足に苦言 日欧EPA 自民
自民党は15日、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)交渉を巡り、農業団体の意見を聴取した。JA全中の奥野長衛会長は、農業の国際競争力の強化に取り組むために、関税など国境措置を守ることが必要だと訴えた。出席議員からは、再生産確保へ焦点の乳製品を含め環太平洋連携協定(TPP)を超える譲歩をしないようくぎを刺す意見が相次いだ。
同日の党日EU等経済協定対策本部の下に設置した農業分野の作業部会で農業関連の9団体に聴取。党側の要請で「攻め」と「守り」の両面で意見を募った。奥野会長は「新しい強い農業につくり変える端緒についたところだ」とし、慎重な対応を求めた。
出席議員からは「TPP合意の内容は、一線として絶対守らなければならない」(進藤金日子氏)、「TPP合意は岩盤だ。そこまで譲る必要はないとの気持ちで臨んでほしい」(藤木眞也氏)と、TPP合意を超えないよう求める声が相次いだ。
国産と競合するソフト系チーズについては、TPPで関税を守ったが、EUは自由化を強く求めており、「将来不安を与えない配慮を」(簗和生氏)、「重要品目が守られたかと野党に追及されないように交渉に臨んでほしい」(中川郁子氏)など政府に注文が相次いだ。
小泉進次郎農林部会長は政府に対し、「TPPに比べ関係者への情報提供の体制が薄い」と苦言を呈し、情報提供を促した。団体の意見を踏まえて、6月末に党としての対応方針をまとめる。
国境措置確保を 自民に全中など要請
JA全中など農業関係9団体は15日、自民党の日EU等経済協定対策本部の作業部会で、大詰めを迎える欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)交渉について要請した。農業に打撃を与えないよう関税など必要な国境措置の確保を求めた。環太平洋連携協定(TPP)を上回る水準で譲歩しないよう訴える声も出た。
全中の奥野長衛会長は、畜産経営基盤の立て直しの途上であり「国境措置をしっかり守っていただかないと(農家の)態勢が取れない」と指摘。乳製品や豚肉など重要品目の再生産が可能になるよう国境措置の確保を求めた。
特に焦点の乳製品については、強い懸念が相次いだ。全中の飛田稔章酪農対策委員長は、乳製品が影響を受ければ北海道産生乳が飲用に回らざるを得ず、都府県酪農への影響が避けられないと懸念を訴えた。
森永利幸畜産対策委員長は「農家が懸念することがない断固たる交渉をお願いしたい」と述べた。日本酪農政治連盟も、貿易自由化交渉への将来不安が経営意欲を削いでいるとして、TPPの合意内容を最低限堅持するように求めた。
欧州産豚肉には低価格品もあり脅威になる。日本養豚協会は、関税引き下げがTPP水準であっても「EU産の豚肉が大量に入り国内価格が大きく押し下げられることを危惧している」とし、現在の差額関税制度が機能するよう求めた。全国肉牛事業協同組合も「TPPの合意内容がこれ以上譲れない一線」と強調した。
EU向けには牛肉以外の日本産畜産物の輸出が認められていないことから各団体は、輸出解禁に向けた協議を加速するよう政府に要請した。
この日の会合では全国農業会議所、日本食鳥協会、日本養鶏協会、日本乳業協会、日本園芸農協連合会も要請した。
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「日欧EPA大詰め 『合意ありき』許されぬ」 16日付「論説」
2017年06月16日
直接支払い廃止 大規模経営 不安募る 18年度米政策見直しの焦点に
米の生産調整の見直しが2018年度に迫る中で、積み残し課題が焦点になってきた。最大の課題は、10アール当たり7500円の米の直接支払交付金が廃止されるのに伴う対策。大規模経営ほど影響は大きく、所得確保に向け不安の払拭(ふっしょく)が欠かせない。今夏に予定される2018年度予算の概算要求がヤマ場になると見られ、政府・与党での水田農業の議論が活発化しそうだ。
2017年06月19日
[活写] 刈り音うなる 麦秋走る 前橋市
米麦二毛作が盛んな前橋市で、小麦の収穫が最盛期を迎えている。黄金色の水田に農家が操るコンバインのエンジン音が響く。
16日、水田35ヘクタールで小麦を作る農事組合法人・江木堤では、代表の斉藤禎さん(69)ら12人が5台のコンバインを使って「さとのそら」を刈り取った。同法人は14日に刈り始め、17日までに終える予定。収穫後は急いで耕起して水を張り、水稲を植える。斉藤さんは「晴れてよかった。田植えを終えればやっと一息つける」と話した。
JA前橋市管内の今年度の麦の作付面積は約1600ヘクタールで8割が小麦。主な品種は「さとのそら」や「つるぴかり」「ダブル8号」で、生育状況はほぼ例年並みという。(富永健太郎)
2017年06月17日
駆除した鹿、イノシシ 工芸品として活用 「命無駄にせず」 山梨県大月市 藤本二菜さん
山梨県大月市の藤本二菜さん(35)は、土に埋めたり、処分されたりする鹿やイノシシの命を無駄にしたくないと、かばんやポーチ、アクセサリーなどの工芸品にしてよみがえらせている。「ちょっと前まで生きていた命を無駄にせず、活用したい」との願いを込めた。
藤本さんは、都内で皮革製品のデザインや縫製を学び、工芸品メーカーで働いていた経験を生かし、実家のある大月市に戻り、3年前に工房兼作業場をオープンした。
実家は、山間部にあることから鹿やイノシシなどの鳥獣被害は切実な問題だった。都内に1枚からでも獣皮をなめしてくれる業者があることを知り、「地元で駆除された鹿やイノシシの皮を使って何か作れるのではないか」と思いつき、地元の狩猟会と交流を始めた。
ハンターから獣皮の提供を受け、「多くの人に使ってもらいたい」と、約1年前からかばんや小物などを作り始めた。
県内の東部地域は「郡内」と呼ばれることから商品は「郡内レザー」と名付けて販売。ロゴマークにもこだわり、郡内の頭文字の「g」に、角が生えたようなデザインを考案。工芸品に付けて、人と自然に優しいエコレザーとして、県内外のイベントやワークショップでアピールしている。
昨年は第一種狩猟免許も取得。昨年末に初めて狩猟に挑戦し、イノシシを仕留めた。藤本さんは「動物の命を無駄にしたくない。郡内レザーを通じて、地域の自然や野生動物のことを知ってもらいたい。工芸品作りが地域資源を生かした産業となり、定着すれば雇用の創出にもなる」と期待を込める。
アクセサリーは1500円前後、ポーチは4000円からで、同市の工房やインターネットで販売している。
2017年06月18日
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直接支払い廃止 大規模経営 不安募る 18年度米政策見直しの焦点に
米の生産調整の見直しが2018年度に迫る中で、積み残し課題が焦点になってきた。最大の課題は、10アール当たり7500円の米の直接支払交付金が廃止されるのに伴う対策。大規模経営ほど影響は大きく、所得確保に向け不安の払拭(ふっしょく)が欠かせない。今夏に予定される2018年度予算の概算要求がヤマ場になると見られ、政府・与党での水田農業の議論が活発化しそうだ。
2017年06月19日
ジビエ 欧州は輸入国日本産に余地?
農水省は欧州の野生鳥獣の肉(ジビエ)輸入量の調査結果を初めてまとめた。ジビエの本場でも国内産だけでは需要を賄えず、フランスは流通量の7割、ドイツで4割を輸入が占めている実態が明らかになった。日本政府はジビエの利用を倍増させる目標を掲げ、販路開拓に力を入れており、将来的な欧州への輸出も視野に入れたいとする。
同省の調査によると、フランスは2015年の流通量が1万1400トンで、うち輸入は8000トン。原産国はニュージーランドやオーストラリア、東欧などさまざま。
ドイツはデータが1998年と古いが、年間の流通量は4万5000トンと大きい。輸入物は2万トンと4割を占めた。
日本政府は5月にまとめたジビエ普及の対応方針で、19年度までに利用量の倍増を目指す。国内の需要はまだ小さく、外食などでいかに掘り起こすかが課題。欧州に販路を築けば、国産ジビエの安定した売り先確保につながる期待もある。同省は「欧州はジビエの需要が大きく、国産を輸出できる可能性がある」と有望視する。
2017年06月19日
品目や特色 打ち込むだけ ネット上で販路開拓 農家・JA 実需と双方向 農水省が検索サイト
農水省は、農家やJAなどがインターネット上で、自らの条件に合った農産物の販売先を見つけられるサイトを立ち上げた。売りたい品目や量、農薬使用を抑えているといった経営の特色などの条件を打ち込めば、外食や中食、食品メーカーなど実需者、卸売業者の中から合致する事業者を絞り込める。産地の販路開拓を後押しし、農家の所得安定につなげる。
立ち上げたサイトは「アグリーチ」で、農産物流通の合理化を掲げた政府の「農業競争力強化プログラム」の一環。5月中旬から本格運用を始めた。実需者、卸側からも農家やJAの情報を検索できる双方向の仕組みのため、取引先へのアピールにも使える。
農家はまず、所在地や生産品目、出荷できる数量、農薬使用量を削減している、農業生産工程管理(GAP)認証を得ているといった経営の特色など、自らの情報を登録。JAや生産部会単位でも登録できる。一方、実需者も求める品目や数量、「外観より味にこだわる」といった仕入れで重視する点などを、卸も委託手数料率や出荷奨励金の水準、取扱品目などを登録する。
その上で販売先を探す場合、業種や所在地、品目などを入力すれば条件に合う実需者を検索できる。「小ロット希望」「従来よりも農薬使用量削減」といったキーワードを選び、さらに絞り込むことも可能。取り引きを希望する場合は業者に連絡を取ることもできる。
卸売業者については例えば、委託手数料や産地側が出荷量に応じて受け取れる奨励金で一定水準を打ち込めば、その水準以上の卸の一覧を表示できる。現状では、手数料は中央市場で営業する各卸の手数料率は横並び、奨励金も各卸は自治体が定める水準に準拠するなど固定的な状態で、今回のシステムで設定水準を「見える化」することで、競争を促す狙いだ。
「アグリーチ」は2016年度補正予算で開発し、公益財団法人の流通経済研究所が運営する。使用料は無料で、パソコンやスマートフォンなど携帯端末でも利用が可能。同研究所は初年は年間で農家、実需者とも各500件の登録を目指すという。
2017年06月18日
日欧EPA TPP水準でも打撃 政府、影響試算示さず
日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)交渉で、政府・与党内から、農業分野で環太平洋連携協定(TPP)水準を容認する声が相次いでいる。だが、豚肉やチーズなどの重要品目は、TPPと同水準でも国内農業への打撃が懸念される。政府は、日EUのEPAで影響試算を示しておらず、TPP合意に日EUが上乗せされることによる“二重の影響”にも検討が不可欠だ。拙速議論を避け、慎重な対応が必要になっている。
農業分野の最大の焦点はチーズ関税の扱いだ。政府は特に、日本人が好むカマンベールなどソフト系を保護したい考えだが、EUは市場開放へ攻勢を強めている。
欧州産チーズは、TPP参加国のオーストラリアやニュージーランド産と生産量や消費のされ方が異なる。TPPと同水準で譲歩すれば、影響が大きくなる場合がある。
例えば、TPPで関税を下げるブルーチーズは、日本で流通するほとんどが欧州産。ハード系も、欧州産には人気の高いイタリア産「パルミジャーノ・レッジャーノ」など種類が多い。こうした、さまざまな欧州産チーズが安く流入する可能性がある。
豚肉でも不安を指摘する声がある。TPPでは差額関税制度を維持した上で、低価格帯の関税を引き下げた。政府は、高価格帯の肉と安い肉を組み合わせ関税を最小化する「コンビネーション」輸入が続き、安い豚肉の流入は防げると見る。
だが、日本が輸入する欧州産豚肉の特徴は価格の低さだ。ハムやベーコンなど加工に使われている。TPPと同水準まで関税を引き下げれば、安い部位が50円の関税を払い大量に流入し、国産に影響を与える可能性がある。
2017年06月17日
産業動物→ペット、地方→都会 「加計問題」で“本質”見えず― 獣医師「偏在」 是正こそ
学校法人「加計学園」による獣医学部の新設を巡る問題。“総理のご意向”など手続き論への批判や報道が集中し、政府は幕引きを図ろうとしているが、産業動物獣医師の偏在という課題をどう解決するのか、本質の議論がなされずじまいだ。高病原性鳥インフルエンザの発生など家畜防疫の重要度が増す中、大学開設だけで解決できるのかは不透明で、処遇の改善、産業動物獣医師の果たす役割への社会的な認知度向上など、幅広い対策が求められる。
食の安全に貢献 大学開設より社会的認知を
同学園と愛媛県今治市は2007年以降、15回にわたり同市での獣医学部新設を求めてきたが、文部科学省に却下されてきた。だが同市が国家戦略特区の指定を受けると、16年に安倍晋三首相が議長を務める国家戦略特区諮問会議が52年ぶりの獣医学部新設を認可。17年1月、同市で獣医学部を設置する事業者として同学園が選定された。
同学園の学部開設は「獣医学部がない四国地方に新設する」ことを掲げ、特区として認可を得た格好だ。同学園は、家畜の感染症への初動対応や学術的な拠点としての役割を強調する。
同学園が開設を目指す岡山理科大獣医学部は定員160人。全国16の獣医系学部と学科を合わせた定員数930人の2割に当たり、開設されれば全国最大となる。獣医師不足に悩む高知県の獣医師は「家畜疾病への対応力強化につながるならば、四国に獣医学部がないので開設はありがたい」と歓迎する。
四国だけでなく、東海や九州地方では獣医師不足はさらに深刻という指摘もある。
防疫に支障も
農水省によると、全国の獣医師数は14年に3万9000人。同省は「全体として不足しているのではなく、地域や職域に偏在がある」と分析する。犬や猫など小動物診療に当たる獣医師が4割と最も多く、牛や豚など産業動物の診療に従事する公務員や団体などの獣医師は約2割にとどまる。特に地方の自治体で確保が進まず、鳥インフルエンザや口蹄(こうてい)疫といった重大な疾病が発生すれば、防疫対策に支障が生じかねない状況にある自治体もある。
ただ、地方に獣医学系大学を開設すればこうした課題を解決できるかというと、単純ではない。14年8月に開かれた国家戦略特区ワーキンググループの議事録にも「地方に獣医学部があっても、必ずしも地方に獣医師が増えるわけでない」との意見が残る。
議事録によると、文科省は獣医学部のある全国の16大学を都市型(札幌、東京、名古屋、大阪近郊)と地方型に分け、入学率と就職率を分析。地方では、所在地以外の地域から入学し、他地域に就職する傾向が見られたとして「地方の場合は卒業生がその地域に定着するかというと、必ずしも高くない」と指摘している。
特区でなく・・・
日本獣医師会は一貫して、特区による獣医学部新設は「なじまない」との考えを示してきた。大学の立地や学生の増加が必ずしも獣医師の偏在解消につながらず、需給対策は国全体の施策として対応すべきとの考えだ。
獣医師会は「現場で家畜の臨床を教える専任教員の確保が最大の課題」と現状を指摘。学部新設に“総理の意向”が働いたとの疑惑について、同会の北村直人顧問は「政治判断で決めたこと。論じる立場になく、行く末を注視したい」と静観する。(福井達之)
待遇改善が不可欠
獣医師教育の改善などに取り組んできた食の安全・安心財団の唐木英明理事長の話
獣医師といえば多くの人がペット診療を思い浮かべる。畜産業すなわち食を守るという、重要な職業であることを認識しない獣医学生もいる。大学教育を通じ、社会的な意義や職業としての面白さを学生に伝えることが重要だ。志を持った学生を地方でつなぎとめるには、給与や勤務形態などの待遇改善も不可欠だ。
2017年06月16日
農業再生産確保を 情報不足に苦言 日欧EPA 自民
自民党は15日、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)交渉を巡り、農業団体の意見を聴取した。JA全中の奥野長衛会長は、農業の国際競争力の強化に取り組むために、関税など国境措置を守ることが必要だと訴えた。出席議員からは、再生産確保へ焦点の乳製品を含め環太平洋連携協定(TPP)を超える譲歩をしないようくぎを刺す意見が相次いだ。
同日の党日EU等経済協定対策本部の下に設置した農業分野の作業部会で農業関連の9団体に聴取。党側の要請で「攻め」と「守り」の両面で意見を募った。奥野会長は「新しい強い農業につくり変える端緒についたところだ」とし、慎重な対応を求めた。
出席議員からは「TPP合意の内容は、一線として絶対守らなければならない」(進藤金日子氏)、「TPP合意は岩盤だ。そこまで譲る必要はないとの気持ちで臨んでほしい」(藤木眞也氏)と、TPP合意を超えないよう求める声が相次いだ。
国産と競合するソフト系チーズについては、TPPで関税を守ったが、EUは自由化を強く求めており、「将来不安を与えない配慮を」(簗和生氏)、「重要品目が守られたかと野党に追及されないように交渉に臨んでほしい」(中川郁子氏)など政府に注文が相次いだ。
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JA全中など農業関係9団体は15日、自民党の日EU等経済協定対策本部の作業部会で、大詰めを迎える欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)交渉について要請した。農業に打撃を与えないよう関税など必要な国境措置の確保を求めた。環太平洋連携協定(TPP)を上回る水準で譲歩しないよう訴える声も出た。
全中の奥野長衛会長は、畜産経営基盤の立て直しの途上であり「国境措置をしっかり守っていただかないと(農家の)態勢が取れない」と指摘。乳製品や豚肉など重要品目の再生産が可能になるよう国境措置の確保を求めた。
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EU向けには牛肉以外の日本産畜産物の輸出が認められていないことから各団体は、輸出解禁に向けた協議を加速するよう政府に要請した。
この日の会合では全国農業会議所、日本食鳥協会、日本養鶏協会、日本乳業協会、日本園芸農協連合会も要請した。
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「日欧EPA大詰め 『合意ありき』許されぬ」 16日付「論説」
2017年06月16日
農地集積5割止まり 軒並み伸び悩み 数値目標進捗
農業の競争力強化に向けた数値目標(KPI)の実績が、軒並み伸び悩んでいる。農地の担い手への集積面積は5割にとどまるなど、このままでは8割としている目標の達成は難しい状況だ。成長戦略で掲げた目標達成のための具体策が十分成果を上げておらず、与党内からは見直しを求める声も出始めている。
2017年06月15日
自動車交渉が難航 与党内「国益見えぬ」批判 日欧EPA
日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)交渉で、日本の“攻めの分野”である自動車などの工業製品の関税引き下げが難航している。EUは乗用車に10%の関税をかけており、撤廃が焦点。だが、日本は環太平洋連携協定(TPP)で米国に長期の関税維持を容認したため、EU側が早期の関税撤廃に難色を示している。一方で、日本の自動車関税は既に撤廃済みで、工業製品分野では交渉のカードがない状況。代わりに農産品の関税引き下げを迫られる構図に持ち込まれている。守り一辺倒の交渉には、与党からも「国益がない」との批判が上がっており、自動車分野が大きな鍵を握っている。
14日開かれた自民党の日EU等経済協定対策本部の作業部会で、経済産業省の担当者は「欧州は関税を持っているのに、我々は鉱工業品分野では関税がほとんどない。これを攻めなければならないので大変なことになっている」と交渉の難航を認めた。
EUは韓国との自由貿易協定(FTA)で、小型乗用車が5年、中大型乗用車が3年での関税撤廃に合意。2011年7月に適用が始まり、現在はともに関税が撤廃されている。
一方、日本はTPPで、米国が自動車にかけている2・5%の関税について、25年という長い撤廃期間を認めさせられた。
日EU交渉は、13日にペトリチオーネ首席交渉官が来日し、事務レベル協議が始まっているが、日本は自動車で、韓国とEUのFTA並みの5年程度の関税撤廃を要求。一方で、EU側はTPPの合意内容を盾に早期撤廃に抵抗しているという。
作業部会では出席議員から「そもそも不公平な状態からスタートしているのに(農業など)日本の守りの分野だけ関税撤廃のターゲットにされるのでは割に合わない」といった意見が相次いだ。これに対し、経産省の担当者は「『不平等条約』を一掃する意気込みで臨みたい」と応える一方、「(EUを)交渉の土台に乗せることがわれわれの『攻め』だ」とも述べた。
経産省によると、日本からEUへの輸出額の7割を占める品目が有税なのに対し、EUからの輸入は7割超が無税。EUの関税徴収額は日本の2倍と大きな開きがある。日本はこうした不平等の解消を主張するが、TPPでの大幅な譲歩が裏目に出て、交渉が行き詰まっている。
自民党農林幹部の1人は「自動車関税は即時撤廃ですら割に合わないのに、交渉するだけで満足しているようでは話にならない。経済外交の失敗の歴史のつけを農業が払わされてはたまらない」と苦言を呈する。
2017年06月15日
バター、脱粉3万トン枠 豚肉TPP水準で調整 日欧EPA
欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)交渉で、政府がEU産のバターや脱脂粉乳に低関税輸入枠を設定する方向で調整していることが分かった。生乳換算で3万トン程度を検討している。豚肉については、差額関税制度を維持しつつ環太平洋連携協定(TPP)と同水準の関税引き下げとする方針だ。
日本はTPPで、バターや脱脂粉乳の関税を撤廃・削減しない代わりに、参加国全体に対して生乳換算で7万トンの低関税輸入枠を設定した。交渉筋によると、EUとのEPAでは、TPPより少ない同3万トン程度を軸に、輸入枠の設置を検討している。最大の焦点のチーズについても、TPPで関税を撤廃するハード系については、EUに対しても関税撤廃を容認する構えだ。
日本は現在、ガット・ウルグアイラウンド(多角的貿易交渉)合意に基づく国家貿易のカレントアクセス(現行輸入機会、CA)で、バターや脱脂粉乳を年間で同13.7万トン輸入する。だが国内の生乳生産の落ち込みから、農水省は3年連続で同10万トン以上の追加輸入をしている。政府は、TPPとEUを合計してこの範囲内であれば、国内生産への影響は小さいと判断しているとみられる。
一方、豚肉の関税についてはTPPと同水準までの引き下げを準備している。TPPでは、差額関税制度は維持したが、安い肉にかける従量税(1キロ当たり482円)を50円まで削減し、比較的高い肉にかける従価税(4.3%)は撤廃する。デンマークやスペインなどの豚肉輸出国を抱えるEU側はTPPを超える水準の自由化を要求していたが、TPP参加国から一層の関税引き下げを求められる可能性もあり、拒否する。
日本とEUは7月上旬の首脳会談でのEPA大枠合意を目指し、詰めの交渉に入っている。交渉関係者によると、EUのペトリチオーネ首席交渉官が13日、来日した。農産物以外では、EU側が日本産の自動車や自動車部品にかける関税の撤廃時期を巡っても、対立が続いているもようだ。
首相 国内対策を指示
安倍晋三首相は13日、首相官邸で山本有二農相と面会し、EUとのEPA交渉で国内農業対策の検討を指示した。7月大枠合意への首相の強い決意の表れで、政府・与党内の検討が加速する可能性がある。EUとは豚肉やチーズなどの農産物の扱いで厳しい交渉が続いているが、対策を前提に一定の譲歩を視野に入れているとも受け取れ、生産現場からは不安の声が出ている。
農相が同日の閣議後会見で明らかにした。首相は「対策が具体的になった場合にはお願いする」と呼び掛け、農相は「しっかりやらせていただく」と、応じたという。
会見で交渉の進捗(しんちょく)状況を問われた農相は「具体的な交渉内容に関わるコメントは差し控えたい」として明らかにしなかった。その上で「国益を守るために、十分センシティビティー(慎重を要する分野)に配慮しながら交渉したい」と述べるにとどめた。
農相は首相との面会で、今国会に農水省が提出した8法案の成立状況についても、意見交換したことも明らかにした。首相は「残った法案に関して説明責任を果たしてもらいたい」と丁寧な法案審議を指示。収入保険の創設とJAS法を改正する2法案が審議中で、農相は「しっかりやる」と応じたという。
2017年06月14日
全国一律 20アール772万円 今年分さかのぼり適用 災害復旧限度額
農水省は、農地1筆ごとに設定している、国の災害復旧事業の対象にできる限度額(災害復旧限度額)を見直す。これまで北海道は都府県に比べて安かったが、これを全国一律にする。同省は6月下旬に告示し、今年1月の災害にさかのぼって適用する方針。限度額見直しは32年ぶりとなる。
2017年06月14日