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【言わねばならないこと】(93)戦前回帰の異論封じ 清洲日吉神社宮司・三輪隆裕さん犯罪の合意を処罰する「共謀罪」の趣旨を含む改正組織犯罪処罰法を安倍晋三政権のもとで運用するのは非常に危険だ。安倍政権は、ともに改憲運動を進める神社本庁などの影響を強く受けている。理想とする国家は、天皇を頂点として国民がまとまる家族主義的国家。つまり、個人主義を敵視する戦前の日本のような国に戻りたいということだ。 戦時中、国内の異論を排除する上で猛威をふるったのが治安維持法。どんどん拡大解釈され、いくつもの宗教団体も弾圧された。「日本が負けそう」などと言った個人も対象となった。全体主義的な国となり、破滅的な敗北につながった。 共謀罪も、いくらでも拡大解釈ができる点など、法律の仕組みとしては一緒だ。異論を許さない姿勢の政権が「反抗的な勢力」だと見なせば、それだけで監視されるような事態が起きかねない。 戦前の日本では、学校教育の指針とされた「教育勅語」で国民のあるべき姿を定め、その基本となった皇国史観について、国家施設である神社への国民参拝を通じて、定着を図った。これが国家神道だ。 神道は本来、多神教で、地域に根ざしたさまざまな神話の寄せ集め。教育勅語のように一つの規律を押しつけるのは、真逆の姿だ。各地域にある神社の役割は、祭祀(さいし)を通じて地域の人々の心をつなぐ空間をつくることだ。 個人よりも全体を優先する態勢づくりが進めば、民主主義や立憲主義の否定にまで行き着く。基本的人権が損なわれれば、世界中の国からそっぽを向かれる。そんな事態を許していいのか。異議があれば、国民も、投票などでしっかりと意思を示す必要がある。 <みわ・たかひろ> 1948年生まれ。清洲山王宮日吉神社(愛知県)の宮司。神職三輪家56代目。名古屋大卒、至学館大研究員。 PR情報
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