先日、近所の神社で祭りが開催されていたそうです。
全国的に見ても早い時期に開催される夏祭りですが、地元では由緒ある祭りだそうです。
たまたま近くを通った妻が見物できたらしく、
「今年の夏は、家族で京都の祇園祭に行きたい」
という話になりました。
ちょうど祇園祭が開催される時期に、私は福岡で仕事の予定が入っているため、一瞬どう答えようか考えてしまいました。
少し考えた挙句、祇園祭の由縁について話をして、他の祭りに行くのはどうかと話を逸らしてみました。
そんなわけで今回は、夏祭りについて書いてみます。
祭りの時期
日本では、春の祭り、夏の祭り、秋の祭りがあります。
一番賑やかなのは、夏祭りではないでしょうか。
京都の祇園祭や秋田の竿燈、青森のねぶた祭りは、夏に行われる祭りです。
祭りの意味
夏祭りは、春や秋の祭りとは意味が異なっています。
春の祭りは、豊作を祈るための祈願祭であり、秋の祭りは収穫への感謝祭です。
日本では古来から、農業に関する春と秋の祭りが各地で行われていました。
夏祭りは、その後に生まれた祭りになります。
また、夏祭りを開催するのには、異なる4つの意味があるとされています。
夏祭りのタイプ① 雨乞い
夏祭りの時期である旧暦6月は、現在の7月中旬から8月中旬に当たります。
旧暦の6月初旬に梅雨が明けると、「梅雨明け10日の好天気」と言われるような晴天が続き、暑い気候となります。
この時期の農村部では、稲の生育に影響を与える水不足に悩まされることがありました。
当時の農村部では、水不足の解消のために雨乞いが行われるようになります。
雨乞いは、水神や鳴神、竜王など、水に関係する神に祈願します。
雨乞いの儀礼では、太鼓や鐘を打って踊ることが多くありました。
これは、水に関係する神が、太鼓の音を雷鳴と錯覚して、雨を降らせてくれると信じられていたからです。
夏祭りのタイプ② 疫病を鎮めるため
一方、都市部では疫病が恐れられる時期でした。
特に湿度が高くなる梅雨の時期は、疫病が発生する危険が最も高い時期でした。
当時の人々は、疫病に関する科学的な知識がありませんでした。
疫病は、悪霊によって引き起こされると考えられていました。
平安時代以降、京都などの大都市に人口が集中し始めると、衛生面が問題になります。
大都市では、疫病が頻繁に流行します。
疫病は悪霊によって引き起こされると考えられていたため、悪霊を祓うための祭りが行われるようになりました。
夏祭りの代表格でもある、京都・八坂神社のの祇園祭は、この疫病を鎮めるための祈願祭です。
平安時代の869年に、全国で疫病が流行します。
この疫病の流行は、京都の八坂に祭られていた、牛頭天王(ごずてんのう)の祟りであるという噂が広まりました。
祟りと疫病を鎮めるため、当時の国の数と同じ66本の鉾を立て「祇園御霊会」を開催したのが、祇園祭の始まりとされています。
夏祭りのタイプ③ 夏越し祓い
古来日本では、1年を2期に分ける考え方がありました。
この考え方によると、6月は前半年の最後の月になります。
6月の最終日である晦日は、忌み日とされていました。
そのため、6月の晦日に「夏越しの祓い」といって、半年間の穢れを祓う行事が神社で行われていました。
現在も多くの神社で、夏越し祓いの「茅の輪くぐり」という行事が行われています。
夏祭りのタイプ④ 虫送り
虫送りとは、田畑の害虫を追い払うための儀礼です。
夏は、害虫が最も田畑を荒らす季節です。
この害虫退治のための行事として、祭りが行われるようになりました。
最初は、村落で山椒やざくろなどの枝葉を焼き、鐘を鳴らしながら畦道を歩いて、川岸や村の外れまで害虫を追い払おうとする儀式でした。
それが時代と共に、季節の風物詩となります。
青森のねぶた祭りや秋田の竿灯は、この虫送りから生まれた祭りとされています。
参考文献