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カプリスのかたちをしたアラベスク

このブログはフィクションです。詳しくはプロフィール参照。

【最近のできごと】

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アイドルが「掟破り」の結婚宣言する前に「推しが武道館いってくれたら死ぬ」というマンガを読んでほしい件

 

朝目覚めたら、Twitterが魑魅魍魎阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。

 

その事件とはいうまでもなく48グループの総選挙で、NMB48の須藤凛々花が結婚宣言をし、その相手もいるとスピーチでぶっちゃけた話だ。

Twitterの反応に、不覚にも笑ってしまった。

 

 

 

 

今回はこの事件から思わず想起したアイドルについての雑感と、ぜひ読んでもらいたいドルヲタマンガ「推しが武道館いってくれたら死ぬ」について言及したいとおもいます。

このマンガ、アイドルにこそ読んでほしい。

 

アイドルという仕事

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アイドルは仕事だ。これは一貫してそうであり続けたし、いまも当然そうなのだと思うのだけれど、最近は「アイドルという職をまっとうするひとりの女の子」として彼女らが見られているようになったように感じている。

このことについては以前KAI-YOUさんに寄稿したアニメ「ガーリッシュナンバー」のレビュー記事にもすこし書いたのだけれど、人前に出る仕事をすると、ステージ上ではパッケージ化されたアイドル像を求められるが、しかしそれだけでは多くいるライバルとの効果的な差別化はできない。そこでSNSなどを使って、「ステージから降りた私」さえもファンの消費対象にする手法が近年よく使われるようになったように感じられる。

ぼくはアイドルがそこまで好きなわけじゃないんだけど、なんだろう、みんなアイドルが好きなんじゃなくて、「中のひと」という特別さが好きなんじゃないかって思う。

kai-you.net

 

なんか、こう、「夢を与える」 とか「手の届かない存在」とかじゃなくて、「どこにでもいる」とか「カジュアルさ」の方へ向かっているんだよね。

そういう意味で、「結婚」という最も平凡にして個人として大きな幸せを宣言したことは、アイドル像の否定という意味で究極のカジュアルな気がするけれど、このやり方に関しては賛成することは到底できない。

 

だれかを狂信的に好きになるって、いいよね。

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まぁ、じぶんではそんなにしたくないのだけど笑

いわゆる「ドルヲタ」を題材としたマンガが最近ちらほら増えてきているのだけれど、ぼくは「推しが武道館いってくれたら死ぬ(平尾アウリ)」が好きだ。

 

このマンガは、岡山のご当地アイドル「Cham Jam」のなかでも最も人気のない舞菜を推すドルヲタ・えりぴよの彼女への愛がひたすら描かれている純愛ギャグマンガだ。

 

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主人公のえりぴよはパン工場でバイトしていて、その収入のほぼすべてを舞菜のために使い、自分の服はといえば高校時代の学校指定ジャージしかない。

学校指定ジャージでイベントやCham Jamが出演するファッションショーにいったりする。でも場所をわきまえて髪の毛だけはセットする「推しが恥をかかないための」気配りもできている。

 

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ぼくが個人的にとても好きなシーンは1巻の最後、えりぴよがプライベートの舞菜に電車で出会うシーンだ。

 

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このとき、えりぴよはあくまでも「アイドルとファンの距離」を大事にした行動をとる。

 

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ぼくは「関係性」というものは、すべて「距離の問題」に置き換えることができると思っていて、そして関係性についてなんらかの言及や表現を行うのだとすれば、距離の問題は避けられないと確信している。

距離は「ふたつの点がどこにあるのか」が確定すれば決まる。

「アイドルであるあなた」と「ファンであるわたし」……これらがどこにあるのかはとても大切なことだ。

あの結婚宣言ではそういうものが欠如していたんじゃないかなって強く思った。

 

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わざわざ奇をてらったことをしなくても、良くも悪くも、「ステージを降りた私」なんてじゅうぶん伝わってしまう。

 

「推しが武道館いってくれたら死ぬ」は超おすすめです。たしなみとして読むべき!