スポーツ選手に左利きが多いのはなぜか?
世界の人口の約10パーセントほどしかいないと言われる左利き。ですが、スポーツ界は例外です。例えばフェンシングのプロはその50パーセントが左利き。ほかにも、ボクシング、テニス、野球といったスポーツでも、トップレベルの活躍をする人たちには左利きの人が多いのです。左利きが右利きよりも身体能力が高いわけではないのに、なぜスポーツ選手には左利きが多いのでしょうか? それには「頻度依存選択」と呼ばれるプロセスが関係しています。今回のYouTubeのサイエンス系動画チャンネル「SciShow」では、スポーツ選手に左利きが多い理由について解説します。
- シリーズ
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SciShow 2017年6月6日のログ
- スピーカー
- Hank Green(ハンク・グリーン) 氏
スポーツにおける左利きの優位性
ハンク・グリーン氏 私を含めて、大抵の人は右利きです。右手を使って字を書いたりフットボールをしたりします。 ところが、左利きの人は10パーセントしかいないにも関わらず、フェンシングのプロはその50パーセントが左利きなのです。実際、ボクシング、テニス、野球といったスポーツでトップレベルの活躍をする人たちに左利きの人は多くいます。 これは一体なぜでしょうか? 左利きの人たちは、右利きのわたしたちとは違う「万能スポーツ遺伝子」のようなものを持っているのでしょうか? ずば抜けたアスリートが輩出されるのは、自然界の動物たちが生き残りをかけて闘った結果で数が変わることとよく似ています。 例えば、あなたがスズメだとしましょう。お腹をすかせた時に取る行動には2通りあります。時間と労力を払ってミミズを探す供給者となるか、供給者からミミズを奪うたかり屋になるかです。 自分でエサを探す供給者がたかり屋に比べて十分に数が多いなら、たかり屋のスズメは苦労せずにすみます。たかる相手がたくさんいるので、生きていく上でほとんど労力を必要としません。 ですが、たかろうと考えるスズメの数が多く、自分でエサを探そうとする供給者がほとんどいない場合、供給者は自分たちのエサを確保できますが、たかり屋はエサにありつけません。 つまり、こうした行動の頻度分布は生き残る上で重要で、ある行動が一般的になればなるほど生き残るのは難しくなります。生態学者はこれを「負の頻度依存選択」とよんでいます。 今の例からもわかるように、どういう行動を取るかはスズメの個体数にさえ影響を与えるのです。 研究者たちはこのモデルを使って、長年にわたる自然選択によって個体数がどのように変化したかを説明しようとしています。特定の行動をする動物が生き残りやすく、子孫にもその行動を伝えていくのです。 動物の個体数に関するこの説明は、世代が変わったり淘汰されたりするスポーツ選手についても適用できます。 勝ち続けて高いレベルに上がる選手もいれば、低いレベルにとどまり続けたり、競技自体をやめてしまったり選手もいるでしょう。 ボクシングやテニスといった選手同士が直接競う1対1のスポーツで勝つには、いかに早く打ち返せるか、腕を素早く動かせるかといった周りとは違う特性が必要になります。つまりそうした選手が自然選択されていくのです。 ここまで考えてみると、左利きが遺伝することは素早さや強さとはとくに関係なさそうです。ですが、1対1の試合形式のスポーツでは、左利きが少ないことは初心者なら有利にはたらきます。 例えばフェンシングを右利きで始めた場合、左利きの相手と練習する機会はほとんどありません。そのため左利きの相手とは経験不足になってしまい、負けやすくなるでしょう。 周りがほとんど右利きの選手なので、左利きの選手ははじめのうちは勝ちやすく、順位も上げていけます。まさに負の頻度依存選択ですね。 ですが、上のランクに進むに連れて左利きの選手の割合も増えていくため、徐々に左利きの優位性は失われていきます。 試合にはもちろん他にも多くの要素が関係しているので、この説明だけではすべてを説明できません。 ですが、左利きの人は、左利き用のハサミが使いやすいですし、フルーレ(フェンシングの剣)も誇りと一緒に使えば優位に立てますよ!