私には父との思い出があまりありません。
一緒に暮らしたのは生まれてからの9年間ぐらいでした。
なので父のことは実際にはあまりよくわかりません。
父がいなくなってから、母はなにかあると父のことを話してくれました。
父が私にかけてくれた愛情をたくさん話して聞かせてくれました。
月日が経ったある日、父が末期ガンだと人を通じて連絡が入りました。
父は病気がわかった時、みじかな人にこう話していたそうです。
「脳に転移してしまったら娘のことがわからなくなってしまうからその前に会いたい」と。
私は父の住む街に行きました。
そして、会って決断しました。
介護をしながら、最期の日まで父のそばにいようと。
父とは幼い頃に離れてしまっていたため、まるでお互いに他人同士のようでした。
なのでこのままでは私自身、後悔が残ると思ったのです。
父と本当の親子になりたいとその時、強く思いました。
それからは毎日が覚悟の日々でした。父の前では決して泣かないと決めて…。
父の最期はとても壮絶でした。
父は歳も若かったのに加え、とても進行の早い癌に侵されていたため、すぐに首から下が動かなくなり、全身に激しい痛みが走るため、狂ったように痛がり、とても苦しみました。
その姿を見るたび、耐えられず父の病室を出ては父には知られないように、毎日たくさん泣きました。
代わってやれるならと何度も何度も思いました。
直前まで病院で働いていたにも関わらず、身内となると冷静ではいられなくなってしまいます。
それでも父はどんなに痛みに苦しんでいても、「退院するんだ」…と生きる希望を捨てませんでした。
父は亡くなる数日前に私にこう言いました。
「お父さんの人生、まんざらでもなかったよ。結構、いい人生だった」と。
父との時間はわずか50日位でした。
私にとってその50日は一生分の宝物になりました。
もっと色んな話がしたかったです。そして甘えてみたかったです。
父はいまだに私の憧れの存在です。
今日は父の日。
最期まで言えなかった「大好き」と「ありがとう」を空を見上げて伝えようと思います(^ ^)