2017-06-18
■同窓会で明かされた高校進学の秘密 
僕は中学を卒業した後、高校はみんなとは違って新設校に行くことにした。
そこの校長先生の話が魅力的だったからだ。
僕の中学は受験が必要な国立学校(大学附属だから通称、附属)で、みんなは地域で一番レベルの高い長岡高校に進学するのが当たり前だった。
だけど、高校の説明会のとき、他の学校は校長先生が来ていたのにそこは教頭先生が来ていて、そのうえ「おまえらの先輩は評判が悪いからおまえらはこなくていい」みたいなことをいった。バカにしてる、と思った。僕は学校の勉強はサッパリだったから、多少は頑張らないと長岡高校に入ることはできない。けれども、教頭がこんな人をバカにしたような話をするなら、長高(長岡高校の略称)を母校になんかしてやるものかと思った。
それでその年から新設された国際情報高校に進むことにした。新設校なので比較的入りやすいというのもあったが、とにかく文部官僚をやめてまで新潟の教育向上に人生を賭けることにした校長先生の熱意に強く惹かれたからだ。
初代校長である宮沢稔校長は、全県一円に超法規的教育を行うために敢えて学区の制約を受ける普通科を儲けず、情報科学科と国際文化科を新設した。
宮沢稔校長の言で中学の頃の僕をときめかせたのは、たしかこんな言葉だった。
「これからの時代に必要とされる能力は、2つ。国際的視野がものを考え、コンピュータを道具として使いこなすこと。つまり英語とコンピュータを自分の手足のように使いこなせるような人間を育成することこそ、これからの新潟、そして日本に必要なことである。当校は国際的感覚を持ち、コンピュータを手足のように使いこなせる人材を育成し、日本の未来を担う人材を育成するために設立する」
そのとき僕はあまたいるコンピュータおたくの一人に過ぎなかった。
コンピュータを愛してはいたが、それで飯を食おうとは夢にも思っていなかった。プログラミングは大変だし、大変だから仕事にするのはもっと大変だろうと思っていた。だから僕は警察官とか自衛官とか公務員とか、とにかくコンピュータの専門職以外の仕事に就きたいと思っていて、コンピュータはそのときに便利な道具として活用できるはずだと漠然と考えていた。
その考えを見事に言葉にしてくれたのが宮沢稔校長で、だから僕は彼のつくる学校に行きたいと思いそこへ進学した。
ところが、である。
昨日の中学の同窓会で、恩師の斎藤先生に会ったらとんでもない事実を聞かされてしまった。
なんと、一期生は各校から選りすぐりの人間を送るように、という要請が高校側からあり、僕を国際情報高校に進学させることになんと担任の斎藤先生以外全員が反対したらしい。理由は「地域の名門である附属ブランドが清水亮が進学することによって毀損される」というものだったそうだ。
だけど美術の専攻だった斎藤先生は「清水亮が新設校にいけば必ず面白いことが起きる」と強硬に主張して僕の出願に介入することを拒否した。その結果、僕は国際情報高校に進学して、素晴らしい仲間たちと出会い、今でも高校時代の仲間と時々酒を飲んでる。国際情報高校に行かなかったら、高校時代に雑誌に連載したりすることはなかっただろう。
確かに中学の頃の僕は控えめに言っても問題児で、先輩にエロ本を処分しろと言われて屋上で焚き火で燃やしたり、4Fから飛び降りたり、学校の地下を探検したり、まあとにかくバレてるものもバレてないものも含めてやばかった。まあ天文部の部長の武田はもっと頭がおかしくて、ヤツのせいで廃部になりそうになったことが何度もあるが。
斎藤先生はいつもこんなことを言っていた。
「おまえはキチガイだ。いや、キチガイは美術の世界じゃ褒め言葉だから撤回する。おまえは頭がおかしい。でも、面白ければそれでいいんだ。芸術ってのはそういうもんだ」
芸術ってのはそういうもんなのか、と思いながら僕は日々頭おかしく過ごした。
夏休みの美術の宿題はセル・オートマトンのプログラムを提出した。そしたら展覧会でそれをそのまま展示しろ、ということになって僕だけコンピュータで動くキネティック・アートを展示した。
同窓会でたまたま隣の席に座った女性が、「私の事覚えてる?」と聞いてきた。もちろん覚えていた。機械が大好きな女の子、亀田亜樹だ。
「むかし、清水亮が学校のコンピュータで人工無能を作っていたのをすごく覚えているんだよね。そして今もそういう仕事をしてるんだもんね」
僕が昔から人工無能を作っていたことを知ってる人はとても少ない。その頃はネットも今ほど普及しておらず僕はネットをやっていなかった。月刊アスキーのAWK特集で人工無能のプログラミングにハマり、もしかしたら彼女にも見せたことがあるかもしれない。
そういえば進路相談のときに、斎藤先生にこんなことを言ったのを覚えている。
「おまえは将来何がやりたいんだ」
「人間の人格をコンピュータで再構成する」
「マックス・ヘッドルームか。そんなことできるようになるまで何年かかると思ってるんだ」
あと何年だろう。
もうすぐできるかもしれない。
少なくともワープ航法よりは早く実現しそうな気がする。
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