TBSラジオで毎週土曜日、午後1時から放送している「久米宏 ラジオなんですけど」。
6月17日(土)放送のゲストコーナー「今週のスポットライト」ではオリンピック女子マラソンで2大会連続のメダリスト、有森裕子さんをお迎えしました。2016年からIOC(国際オリンピック委員会)の「スポーツと活動的社会委員会」のメンバーを務め、つい数日前(6月12日)には日本陸連の理事就任が発表されたところです。
有森さんは1992年のバルセロナオリンピック女子マラソンで銀メダル、96年のアトランタオリンピックで銅メダルを獲得。アトランタでゴール後に語った「自分で自分をほめたいと思います」という言葉は、その年の流行語大賞にも選ばれました。また、その年に日本で最初のプロ宣言をして、実業団所属ではないプロランナーの草分けとして活躍。さらに、現役中からアスリートのマネジメント会社を設立したり、スポーツを通じた社会活動を幅広く行うなど、後進のアスリートたちに大きな影響を与えています。
実は有森さんが現役中から現在に至るまで20年以上にわたって関わっているのが、カンボジアの支援活動。対人地雷被害者の社会復帰や自立支援を目的にした国際チャリティマラソンは、1996年に招待選手として参加したのをきっかけに、NPO法人「ハート・オブ・ゴールド」を設立して大会運営を長年手がけてきました。また、2006年からはカンボジアの小中学校の体育を整備・充実させるプロジェクトにも取り組んでいます。
そんな有森さんは、2020年東京オリンピック・パラリンピックをめぐってよく使われる「アスリートファースト」という言葉には違和感をあると言います。社会で人々が平和に楽しく暮らしていくための手段として、芸術、文化、ものづくりなどいろいろな手段があってスポーツもその一つ。オリンピックも社会を幸せにするための手段の一つなのです。それなのに、社会に優先して「アスリートファースト」だというのはおかしい。今のオリンピックの考え方、物言い、進め方はあまりにも傲慢で、社会の感覚とずれている。本当は「社会ファースト」であるべきだというのです。「元々は東日本大震災からの復興という思いからオリンピックを招致したのに、ふたを開けてみたら全然違うものになっていました。今はどこみているんだろう? 2020年に何をやろうとしているだろう? という不安を感じます」と有森さん。
オリンピックについては筋金入りの反対論者の久米さんは「選手じゃない人が、目標は金メダルは何個! とか、バカじゃないかと思うんです。2020年のオリンピックは金メダルゼロで結構、と言ったら、案外いいと思う。ハート・オブ・ゴールドでいいんですよ」
最近はすっかり暗い話題ばかりになってしまった東京オリンピック。この日、番組で「東京オリンピック・パラリンピック、今からでも返上すべき?」というテーマでリスナー国民投票を実施したところ、「返上すべき」というご意見が圧倒的多数! 同じようにアスリートのみなさんにもぜひお聞きしたいところですが、実際には立場もありますから難しいでしょう。でも有森さんはこの点について、正面から答えてくれました。
「返上すればいいという感情が起きるのは、オリンピックを招致したときの思いが見えなくなってしまったから。私も、もう自分たちだけではどうしようもないかもという不安はあります。でも、やれることはやるつもりです。みなさんもオリンピックをめぐるお金の感覚や物事の進め方に、もっともっと、興味を持っていただきたい。東京だけではなく全国にしわ寄せがいきますから。だから他人事のように無関心にならずに、怒るところは怒っていただきたいです。そして、喜ぶところは喜んでくださいね」
有森裕子さんのご感想
久米さんは言葉の引き出し方が軽快で、なんかどんどん話したくなるような“久米さんマジック”でした。
ラジオは元々好きなんです。ラジオにしか出せないものが感じられて、ついたくさん話してしまいました。今日は楽しかったです。ありがとうございました。