ドイツ コール元首相が死去 東西ドイツ統一実現 欧州統合に尽力

ドイツ コール元首相が死去 東西ドイツ統一実現 欧州統合に尽力
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第2次世界大戦後、東西に分断されたドイツの統一を実現し、ヨーロッパの統合にも力を注いだドイツのコール元首相が16日、ドイツ南西部の自宅で死去しました。87歳でした。
コール元首相は1930年、ドイツ南西部の都市、ルートウィヒスハーフェンで生まれ、10代で中道右派の主要政党、キリスト教民主同盟に入党しました。

州議会議員や州の首相などをへて、1982年当時の西ドイツの首相に就任すると、東西に分断されていた国の融和に努め、東ドイツのホーネッカー議長の西ドイツ訪問を初めて実現させました。そして、1989年にベルリンの壁が崩壊すると、ドイツが再び強大化するのではと危惧する、当時のソビエトのゴルバチョフ書記長やフランスのミッテラン大統領などを説得し、ドイツ国民の悲願だった東西統一を実現させました。

ベルリンの壁崩壊の直後は、ドイツの統一までには時間がかかるとの見方が多くありましたが、壁の崩壊から1年以内に統一が実現したのはコール元首相の行動力や各国首脳との友好関係があったからだとされています。

また、EU=ヨーロッパ連合の基礎となったマーストリヒト条約を成立させるなど、ヨーロッパの政治や経済の統合の礎を築きました。

戦後のドイツで最も長い5期16年にわたって首相を務めましたが、統一後も東西の格差が解消せず、経済の停滞が続いたことなどから1998年に行われた連邦議会選挙で敗れ、首相の座を退きました。その後、在任中に多額の政治献金を秘密裏に受け取っていた疑惑も発覚し、批判を浴びました。

コール元首相は数年前から体調を崩して入退院を繰り返していましたが16日、死去しました。87歳でした。

メルケル首相がテレビ演説「私の人生にも決定的な影響」

ドイツのメルケル首相は訪問先のバチカンからテレビ演説し、「コール氏は偉大なドイツ人であり、偉大なヨーロッパ人だった。彼は、ドイツ統一とヨーロッパ統合というドイツにとって、過去数十年最も重要だった2つの課題に懸命に取り組んだ」と述べ、その業績をたたえました。

そのうえで、メルケル首相は「コール氏は歴史を理解したうえで、国境を越えた友好関係を築き、アメリカやポーランド、フランスやソビエトといった国々の人たちから信頼を勝ち得た。これにドイツ人は感謝すべきだ」と述べ、コール元首相が各国首脳らと友好関係を築いたことで、ドイツ統一へ向けて、周辺国の理解を得ることができたことを強調しました。

また、旧東ドイツで育ったメルケル首相は「コール元首相は私の人生にも決定的な影響を与えた。ほかの数百万人の市民と同様、私も独裁国家から自由で民主的な国へと移ることができた。それ以来、あらゆるものが監視されるおそれなしで生きることができた」と述べ、感謝の気持ちを示しました。

仏大統領「極めて偉大な人物失った」

フランスのマクロン大統領は声明を発表し、「コール氏はヨーロッパのみならず、世界で最も偉大な指導者の1人だった。フランスのミッテラン元大統領とともにドイツ統一を主導し、ヨーロッパの統合を推し進め、フランスとドイツの2国間関係を深めた。自由な移動や単一通貨など、われわれヨーロッパの偉大な業績は、コール氏に負うところが大きい」として、その功績をたたえました。そして、「メルケル首相とドイツの国民にお悔やみと友情を表す」として、哀悼の意を表しました。

マクロン大統領は、また自身のツイッターで、フランス語とともにドイツ語でも、「われわれはヨーロッパの極めて偉大な人物を失うことになった」などと投稿し、ドイツとの連帯をアピールしました。

米大統領「功績は生き続けるだろう」

アメリカのトランプ大統領は16日、声明を発表し、「ドイツの現代史で最も長く首相を務めたコール氏は、アメリカの友人であり盟友であった。ドイツ統一の父であるだけでなく、アメリカとヨーロッパの関係の推進役でもあった。世界は彼が描くビジョンや努力から利益をもたらされてきた。彼の功績は生き続けるだろう」と業績をたたえました。

中曽根元首相「立場を超えて親交いただいた」

中曽根元総理大臣は「大きな体でにこやかに話すコール元首相の姿が懐かしく思い出される。サミットや国際会議の場で、互いの立場を超えて親交をいただいた。特にサミットのもとで西側諸国が団結し、東西冷戦の終結とともに東西ドイツの統一が実現したことは、コール氏の指導力と判断、そして何よりその果断な行動力がもたらしたものだ。それが、その後のEU統合のうえで大きな推進力となったことは、コール氏の大きな功績だ。深甚なる敬意を表し、心からのご冥福をお祈りする」などとしたコメントを発表しました。

EU本部に半旗

EU=ヨーロッパ連合のユンケル委員長は声明を発表し、「コール元首相の訃報に深く傷ついた。私の師であり、友人であり、ヨーロッパの本質でもあった」と死を惜しみました。

そのうえで、ユンケル委員長は「コール元首相は東西の間に橋をかけただけでなく、ヨーロッパの未来に向け、よりよい青写真を描き続けた。単一通貨のユーロはコール元首相なしでは、なしえなかった」として、現在のEUの統合の基礎を築いた功績をたたえました。

ブリュッセルにあるEUの本部では、コール元首相の死去の知らせを受けて半旗が掲げられました。

米ブッシュ元大統領 功績たたえる

ドイツのコール元首相が16日、死去したことについて、同じ時期の1989年から4年間、任期を務めたアメリカのブッシュ元大統領は声明を発表しました。

この中で、「コール元首相は、第二次世界大戦後のヨーロッパで最も偉大な指導者の1人だった。私の友人であるコール氏と緊密に連携できたことで、東西冷戦は平和的に終わることになり、ドイツの統一は、私にとっても人生で最大の喜びの一つとなっている」と述べ、コール氏の功績をたたえました。