娘2人が今度の土日に、小学校の友達の家へ泊りがけで遊びに行くことになりました。
娘の友達は一人っ子らしく、姉妹で過ごす時間に憧れているそうです。
「2日間だけは、3人きょうだいになれるんだ」
と言いながら、娘たちは着替えを準備していました。
娘が「3人姉妹」と言わずに、「3人きょうだい」と言ったのが気になったので、今回は「女きょうだい」という言い方について書いてみます。
はらから
古い言葉に「はらから」というものがあります。
「同じ母親から生まれた兄弟姉妹」という意味の言葉です。
漢字では「同胞」と書きます。
8世紀に入るまで、日本にはこの「はらから」について、男と女を区別する言葉はありませんでした。
「え」と「と」
現在は兄弟や姉妹という言葉が使われていますが、8世紀頃の日本ではまだ使われていませんでした。
その頃は、自分より年上でのきょうだいのことを「え」と呼び、年下のきょうだいのことを「おと」や「と」と呼んでいました。
えと
この「え」と「と」を続けて読むと「えと」になります。
8世紀以前に中国から日本へ伝わったものに、「十干十二支」と「五行思想」というものがありました。
十干(じっかん)とは、甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸の10の要素のことです。
十二支とは、子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥の12の要素のことです。
そして五行には、木・火・土・金・水の5つの要素があります。
日本では、この十干と十二支と五行を組み合わせて、暦や歳を表現していました。
十干と十二支を組み合わせると、全部で60の組み合わせができます。
これが、暦を始めとして、時間、方位などに用いられてきました。
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例えば、甲は「きのえ」、乙は「きのと」、丙は「ひのえ」などと呼びます。
十干十二支と五行思想が組み合わさり、暦や歳を表す際に使われていたのは、年上の兄弟姉妹を「え」と呼び、年下を「と」と呼んでいたことに深く関係していたと思われます。
「おとうと」の意味する相手
古代日本では、同じ母親から生まれた兄弟姉妹のうち、年下のことは「おと」とも呼ばれていました。
時代と共に「おと」が「おとひと」に変化し、更にそれが「おとうと」と言われるようになります。
平安時代頃になると「おとうと」は男女どちらにの場合にも使える、年下の兄弟姉妹のことを指す言葉でした。
「せ」と「いも」
奈良時代から平安時代初期、女性は恋愛対象となる男性のことを「せ」と言っていました。
反対に男性は、女性のことを「いも」と言うことがありました。
これが徐々に、女性が男のきょうだいのことも「せ」と呼ぶようになり、男性が女性のきょうだいのことを「いも」と呼ぶようになります。
語尾に「ひと」が付くようになる
平安時代も中期以降になると、「せ」と「いも」に「ひと」を付けて呼び合うようになります。
男のきょうだいは「せひと」や「せうと」と呼ばれ、女のきょうだいは「いもひと」や「いもうと」と呼ばれるようになります。
年上の男きょうだいを「あに」、年下の男きょうだいを「おとうと」、年上の女きょうだいを「あね」、年下の女きょうだいを「いもうと」と呼ぶようになるのも、この頃からです。
中国語の兄弟姉妹
平安時代になっても、男きょうだいと女きょうだいをまとめて表現する言葉はありませんでした。
平安時代後期になって、中国語の「兄弟(ケイテイ)」と「姉妹(シマイ)」という言葉が、ようやく一般化します。
当時の仏教においては「きょうだい」という言葉が既に使われていました。
但しこの場合でも、仏の前では男も女も関係ないという意味から、女性の姉妹の場合でも使われていたようです。
兄弟と姉妹
兄弟姉妹という言葉が中国から伝わった当時は、「ケイテイシマイ」と呼んで男女を区別していたようです。
でも、仏教思想では、「きょうだい」は男女の区別なく使われる言葉でした。
現在の学校教育で学ぶ「きょうだい」は、「兄弟」の文字が用いられることが多いと思います。
「姉妹」という字の読み方は「しまい」だけではありません。
辞書を引くと「きょうだい」とも読むとされていますし、パソコンやスマホで「きょうだい」を変換すれば「姉妹」という字が出てきます。
同じ母親から生まれた子供のことは、男女関係なく古い言葉では「はらから」と呼ばれていました。
現在は、兄弟も姉妹も「きょうだい」と表現して良いようです。
参考文献