プーチン氏、コーミー前FBI長官の証言からかう
サラ・レインズフォード、BBCニュース(モスクワ)
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は15日、国民からの電話を生中継番組で直接受ける毎年恒例の直接対話で、米連邦捜査局(FBI)のジェイムズ・コーミー前長官が情報漏洩(ろうえい)の責任を問われて立場が危うくなれば、ロシアに亡命すればいいと冗談を飛ばした。コーミー前長官がドナルド・トランプ米大統領との会話内容を解任後にマスコミに提供したと、上院公聴会で証言したことに言及したもの。
プーチン大統領は、米政府機関による盗聴活動を暴露して現在はロシア在住のエドワード・スノーデン氏を例に出し、もしコーミー氏が米国内で法的責任を問われるようなことがあれば、「政治亡命すれば我々が受け入れる」と笑った。
上院公聴会でコーミー氏は、ロシアが2016年米大統領選に介入した事実は疑いようもなく、深刻で、かつ「ロシアはまたやってくる」と証言した。これについてプーチン大統領は何の証拠もないことだと一蹴し、ばかにしてみせた。
しかし今年の「直接対話」番組でプーチン氏は、外交よりも国内情勢を多く取り取り上げた。
大統領は4時間近くかけて国内各地からの電話に答えた。薄給や粗末な医療、劣悪な道路などの不満に耳を傾け、同情を示し、地方の行政幹部を批判したり指示を出したりした。
「寛大なるウラジーミル・プーチン」の姿を広めるための、練り上げられた番組だ。
いらだちの様子
一方で、番組冒頭のあいさつで大統領は、国民は辛い思いを重ねていて、13%以上が貧困状態で生活するほど国民の年収が激減していると認めた。プーチン氏はその上で、経済は再び成長軌道に戻ったため、自分の最優先課題はそれを維持することだと述べた。
しかし、次の大統領選まで1年を切った今、はっきりといらだちを示すロシア人もいた。
画面に流れたテキストメールは、任期は3期でもう十分だとプーチン氏に苦言していた。
モスクワで取材するBBCのスティーブ・ローゼンバーグ特派員は、「あなたは『玉座』に長く座りすぎだ。ロシア全体がそう思ってる」という視聴者コメントが国営テレビの画面に流れたと指摘した。
「金はないががんばれと、いつまで言われなきゃならないんだ」という投稿も、画面に流れた。
さらに、「これは茶番だ」、「ウラジーミル・ウラジミロビッチ、さようなら!」などのコメントが画面に流れたが、しばらくして視聴者メッセージは画面上に出なくなった。
番組の後、BBCはプーチン氏に、国内で最近相次いだ反政府抗議について尋ねた。プーチン氏は、合法的な抗議は民主主義の一部だと答えた上で、反政府抗議の裏にいる人物(名前は特定せず)は、自分のことしか考えていないと批判した。
ロシア最高指導部の汚職疑惑に抗議するデモを呼び掛けている、野党指導者のアレクセイ・ナワリヌイ氏は、来年の大統領選に出馬する方針だ。
プーチン氏は自分自身が再選を目指すのかどうかについて、ことさらに言明を避けたが、BBCに対して、一人が国のトップを続ける長期政権の例は各国にあり、「合法」ならば「問題はない」と話した。