野際陽子さん、肺腺がん81歳で死去…日本一の姑役
「キイハンター」「ずっとあなたが好きだった」など、多くのテレビドラマで活躍した女優の野際陽子さんが13日午前8時5分、肺腺がんのため都内の病院で死去したことが15日、分かった。81歳だった。この日、近親者のみで密葬を済ませた。野際さんは現在放送中のテレビ朝日系昼の連続ドラマ「やすらぎの郷」(月~金曜・後0時半)にレギュラー出演していたが、5月中旬に入院。病床では最後まで現場復帰に意欲を見せていたという。
関係者によると、野際さんは14年に肺がんを患った。15年に再発。摘出手術を受けた。以降も女優業と並行しながら治療を続けていたが、今年5月8日に肺炎を併発し入院。一進一退を繰り返していたが、13日に長女で女優の真瀬樹里(42)、親族やスタッフにみとられながら帰らぬ人となった。故人の意向でお別れ会は行わない。
この日、近親者のみで密葬が営まれ、喪主は真瀬が務めた。真瀬はこの日夜、所属事務所を通じファクスで「2度の手術、抗がん剤治療と仕事をしながらの壮絶な3年の闘病でした。最期は、抱きしめる私の腕の中で天国に旅立ちました」と別れの様子を報告。「多くの人に愛される、役者としても一人の人間としても偉大な母だったと誇りに思っております。母と、母の遺(のこ)した作品を、どうかこれからも忘れずに愛し続けて頂けたら」とつづった。
東京・文京区の野際さんの自宅には、突然の訃報を受けて30人以上の報道陣が集まったが、弔問客や親族が出入りする様子はなく、ひっそりと静まりかえっていた。また関係者によると、元夫で俳優の千葉真一(78)は「娘から(訃報を)聞いたが、直接会うまでは信じない」と大きなショックを受けているという。
放送中の「やすらぎの郷」では、主演の石坂浩二(75)が暮らす老人ホームに入居している、覆面小説家の元女優役を演じていた。今後の出演予定もあったが野際さんの体調を考慮して台本を変更していた。3月の制作発表時は、メインキャストの中で野際さんだけが欠席していたが、病床では最後まで復帰に意欲を見せていたという。
1958年に、合格率0・3%の狭き門を突破してNHKのアナウンサーに。62年の退局後は広告代理店勤務を経てフリーアナに転身。TBS系「女性専科」の司会を務めた。翌年、TBS系「悲(ひ)の器」で女優デビュー。66年にはフランスのソルボンヌ大学に留学し仏文学を学んだ。帰国後の68年、TBS系「キイハンター」で女優復帰すると、同番組は5年間放送され、視聴率30%を超える大ヒット作になった。73年には同作で共演した千葉と結婚。75年に真瀬をもうけたが、94年に米国に活動拠点を移そうとした千葉に対し「アメリカには行けない」と離婚した。
92年のTBS系「ずっとあなたが好きだった」では、佐野史郎(62)演じる息子を「冬彦さん」と呼び、溺愛する姑役のイメージが定着。以降も品のある演技で多くのドラマに出演した。NHKアナ時代から交流のある女優の黒柳徹子(83)とは公私ともに交流が深く、テレビ朝日系「徹子の部屋」(月~金曜・正午)には女性ゲスト最多の21回出演していた。
◆野際 陽子(のぎわ・ようこ)本名同じ。1936年1月24日、富山県出身。立教女学院中学、高校を経て、立教大では長嶋茂雄氏と同期。58年、約3200人の志願者中、合格11人、うち女性はわずか2人という難関を突破しNHKアナウンサーに。62年に退局後、女優として活躍。主な代表作に「赤いダイヤ」「鬼平犯科帳」「ダブル・キッチン」「スウィート・ホーム」「TRICK」「浅見光彦」シリーズ、「必殺仕事人」シリーズ、「DOCTORS~最強の名医~」など。放送文化に貢献し、07年に「橋田賞」を受賞。