「中国では反日教育が行われている」というのが、日本ではすでに“常識”となっています。しかし本当にそうなのでしょうか。ここでは、その常識に敢えて挑戦し、「中国は反日教育を行っていない」という“反常識”を打ち立てたいと思います。
１．「反日教育」というのは日本側の呼称である。
仮に中国で実際に「反日教育」が行われていたとしても、それを自ら「反日」と称することはあり得ません。つまり、「反日教育」というのは日本側の呼称であると言えます。
では、日本人がそう呼んでいるものは、中国では何と呼ばれているのでしょうか。
２．中国で行われているのは愛国主義教育である。
1994年8月、中国共産党は「愛国主義教育実施綱要」を定めました。当時の最高指導者は江沢民です。つまり、江沢民時代に愛国主義教育が開始されたということです。
日本でいう「反日教育」というのは、この愛国主義教育を指しています。中国側の正式名称は愛国主義教育ですが、日本側が、その内容（の一部）を「反日的だ」ととらえ、自国内で反中宣伝を行う際に使用し広まっていったのが「反日教育」という用語です。
３．愛国主義教育の目的は「反日」ではない①
愛国主義教育が開始されたのは江沢民時代ですが、鄧小平もまた、愛国主義教育の重要性を何度も訴えています。鄧小平によると、民族（漢民族と少数民族を合わせた中華民族）の自尊心や自信を高めることで、資本主義勢力に蝕まれることなく、社会主義建設を遂行することが愛国主義教育の目的とされています。
日本では、共産党への不満を回避することが「反日教育」の専らの目的だと理解されています。しかしそれは日本側の解釈です。中国側の狙いは、民族の誇りを持って国家建設に邁進する人材を育てるという点にあります。
４．愛国主義教育の目的は反日ではない②
愛国主義教育の重要な拠点として、「愛国主義教育示範基地」というものが定められています。これは、愛国主義教育を推進する上で有効だと思われる全国の遺跡や展示施設などを選び、党が認定したものです。
この中には、中国人民抗日戦争記念館や九一八事変（＝満州事変）博物館など、日本がメインとなっているものもあります。しかしそうではないものも多数含まれています。
ここでは、日本とはあまり関わりのないもののうち、日本人に比較的よく知られているものをご紹介します。
北京 円明園（英仏軍が破壊）・八達嶺長城・周口店遺跡（北京原人）
遼寧省・丹東 抗美援朝（＝朝鮮戦争）紀念館
黒竜江省・黒河 璦琿歴史陳列館（アイグン条約で中ロ国境を画定）
上海 宋慶齢（孫文の妻）陵園
江蘇省・南京 中山（＝孫文）陵・南京条約資料陳列館
江蘇省・淮安 周恩来紀念館
浙江省・紹興 魯迅故居紀念館・禹（＝古代の伝説上の君主）陵
福建省・福州 林則徐紀念館
福建省・厦門 鄭成功紀念館
山東省・曲阜 孔子故居
河南省・安陽 殷墟博物苑
湖北省・武漢 辛亥革命武昌起議紀念館
湖南省・寧郷 劉少奇同志紀念館
湖南省・炎陵 炎帝（＝古代の伝説上の君主）陵
広東省・中山 孫中山（＝孫文）故居紀念館
広東省・東莞 アヘン戦争博物館
四川省・広安 鄧小平同志旧居
四川省・儀隴 朱徳故居曁朱徳銅像紀念園
四川省・都江堰 都江堰水利工程
陝西省・臨潼 秦始皇兵馬俑博物館
陝西省・黄陵 黄帝（＝古代の伝説上の君主）陵
甘粛省・嘉峪関 嘉峪関（万里の長城最西部）
甘粛省・敦煌 莫高窟
これを見てお分かりのように、中国文明の偉大さを感じさせたり、中国共産党の偉大な指導者について教えたりすることが狙いとなっています。日本以外の欧米列強による侵略がテーマの遺跡・施設もあります。
愛国主義教育は、ただ「反日」を目的としたものではないということがこのことから分かります。愛国主義教育とは、さまざまな角度から中国人としての誇りを高めることを狙ったものです。したがって、愛国主義教育の一部を取り上げて「反日教育」と宣伝するのは、愛国主義教育の全体像を正しく伝えていないことになります。
以上、愛国主義教育との関連を中心に、中国で行われている教育が「反日」を狙ったものではないということを説明してきました。しかし、ここまで読まれた方の中には、次のような感想を持たれた方もいらっしゃると思います。
「なるほど。愛国主義教育が反日一辺倒でないことは分かった。しかし、愛国主義教育示範基地の中には日本関連の施設も含まれており、これらの内容は反日的なのだから、やはり反日教育は行われていると理解すべきではないか。」
これについては、別の知恵ノートを後日作成するつもりです。なお、関連する知恵ノートとして次のものがあります。よろしければご参照ください。
「中国は反日国家ではない」
http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n130944