「吉田がGKに任せずクリアすべきだった」 元日本代表の“潰し屋”、失点時の対応を一刀両断 

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解説者の戸田氏が、イラク戦後にブログで守備の課題を厳しく指摘

 バヒド・ハリルホジッチ監督率いる日本代表は、13日のロシア・ワールドカップ(W杯)アジア最終予選イラク戦で序盤にFW大迫勇也のゴールで先制するも、後半に自陣ゴール前での連係ミスから同点弾を許し、1-1の引き分けに終わった。勝ち点1を積み上げ、6大会連続となるW杯出場権獲得に王手をかけたが、元日本代表で2002年日韓W杯に出場した解説者の戸田和幸氏は、自身のブログで冷静な分析を交えながら守備の課題を厳しく指摘。さらに失点場面についても、「吉田がGKに任せずクリアすべきだった」と一刀両断している。

 4-2-3-1システムで臨んだ日本は、ダブルボランチにMF遠藤航とMF井手口陽介を抜擢。最終予選で初スタメンというリオデジャネイロ五輪代表コンビを送り出した。そして、この日が31歳の誕生日だったMF本田圭佑にキャプテンマークを託し、右ウイングに起用した。前半8分、本田の右CKから大迫勇也がヘディングで合わせて幸先良く先制。しかし後半に入るとイラクが攻勢を仕掛け、同27分には自陣エリア手前から中央突破を許し、DF吉田麻也とGK川島永嗣の連携ミスから、こぼれ球をカミルに押し込まれて1-1の同点に追いつかれ、そのまま試合は終了した。

 この一戦を、「しかしながらやはり守備は難しい。まずは明確なコンセプトがあり、その上でフィジカル的にも強い対応をグループとして連続して行って初めてボールは奪えるという事が良く分かる試合でした」と振り返ったのは、現役時代に日本代表として活躍した戸田氏だ。

 清水エスパルスを皮切りに、プレミアリーグのトットナムやオランダのADOデンハーグを経て、東京ヴェルディやサンフレッチェ広島などを渡り歩き、韓国の慶南FCでもプレー。2002年日韓W杯では、赤く染めたモヒカンヘアーで注目を集め、ボランチとして4試合にフル出場し、16強進出に貢献した。13年に引退後は、見聞を広めつつ解説者として活躍している。

 現役時代はハードな守備を信条とし、“潰し屋”としてW杯の舞台に立った男の眼に、ハリルジャパンの戦いぶりはどう映ったのだろうか。

連動した守備にならず「見事に崩された」

 戸田氏がとりわけ強調したのは守備面だった。失点場面について「『プレスの方向と連動』の部分がモロに出てしまっての失点だった」と指摘し、中盤3人の名前を挙げながら次のように見解を示している。

「倉田(秋)・今野(泰幸)・遠藤と中盤の選手達がそれぞれプレスには入りましたが一人一人別々にアタックをしてしまい一つずつ剥がされ最終的には日本の左サイドから始まった相手の攻撃がピッチの中央からボックス内に進入されて失点してしまいました。」

 35度を超える酷暑のなか、標高1300メートルの高地で息も上がりやすく、中立地のイラン・テヘラン開催とはいえ不慣れな環境だった。戸田氏はそうした面を踏まえつつ、個々の奮闘ぶりは高く評価している。しかしながら、チームとしての連動性が欠如したと説明を加えた。

「一人一人はあの気候条件の中で必死に相手ボールホルダーにアタックしていますが、残念ながらそれが『グループ』としての『連動』した守備にはならなかったので見事に崩されてしまっています」

 そして失点場面の対応についても、戸田氏なりの最適解を導き出した。中央を崩される端緒となった遠藤のプレーをクローズアップし、「あえて寄せない」という判断もあったと力説する。

「ボックスに進入される直前、最後の1タッチでのフリック気味のパスを出されたところに遠藤が寄せていますが、寄せるタイミングが遅れた事に加えて入れ替わってしまった事が痛かったと感じました。味方が一人ずつ寄せてはかわされ、いざ遠藤のところに来たわけですがこの局面ではあえて『寄せない』という判断が必要だったと思いました」

「乾、見たかった」と本音チラリ

 ボックス内に相手を入らせないという観点からプレスの方向と連動について仔細に分析を加えた戸田氏は、連動性の欠如をチームの問題点として挙げた一方、失点に関しては吉田のプレーに苦言を呈している。

「もちろんボックス内での対応についても吉田がGKに任せずクリアすべきだったと思います」

 ハリルジャパンのスタイルについて「強い守備をベースに速く攻めるというサッカーを目指しているのは間違いない」としながら、「であれば守備の部分でよりソリッドな組織を構築して相手がボールを『持たされている』と感じるような形に持ち込みたいところ」と、チームの目指すべき方向性を語っている。

 理路整然と説明する様子は、すでに理知的な指導者のそれだが、元日本代表のW杯戦士はハリルジャパンのパフォーマンスに物足りなさを感じているようだ。そして戸田氏は本音をチラリと漏らすように、こんな一言も添えて締めくくった。

「乾(貴士)、見たかったですね」

【了】

フットボールゾーンウェブ編集部●文 text by Football ZONE web

ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images