性犯罪厳罰化 改正刑法が成立

性犯罪厳罰化 改正刑法が成立
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性犯罪の厳罰化を盛り込んだ改正刑法が参議院本会議で全会一致で可決・成立し、刑法の性犯罪に関する分野が明治40年の制定以来、初めて大幅に見直されました。
改正刑法は、強姦罪の名称を「強制性交等罪」に変更するとともに、被害者を女性に限っている現在の規定を見直して性別にかかわらず被害者になり得るとしています。

また罰則を厳しくして、今の強姦罪の法定刑の下限を懲役3年から5年に、強姦傷害と強姦致死については懲役5年から6年にいずれも引き上げることや、強姦罪や強制わいせつ罪などで被害者の告訴を必要としている規定を削除し、告訴が無くても起訴できるようにすることも盛り込まれています。

さらに18歳未満の人を監督・保護する立場の者がその影響力に乗じてわいせつな行為をした場合、暴行や脅迫が無くても強制わいせつ罪と同様に処罰できる「監護者わいせつ罪」などを新たに設けるとしています。

改正刑法は衆議院で、施行から3年をめどに性犯罪に関わる実態に即した施策を検討し必要があれば措置を講じることを盛り込む修正が行われ、16日午前、参議院法務委員会で可決されました。そしてこのあと開かれた参議院本会議で全会一致で可決されて成立し、刑法の性犯罪に関する分野は明治40年の制定以来、初めて大幅に見直されました。

被害者「歴史的瞬間」

性犯罪の刑罰の引き上げなどを盛り込んだ改正刑法が参議院本会議で可決・成立したことを受けて、被害者や支援者で作る団体が会見を開きました。

この中で性暴力の被害者の山本潤さんは、「参議院本会議で、刑法の改正が可決する瞬間を傍聴席から見守りました。110年間変えられなかった刑法を今回変えることができたことはとても大きな成果で、その歴史的瞬間に立ち会えたことは大変うれしく、感激しています」と述べました。

専門家「課題も残されている」

性犯罪をめぐる問題に詳しいお茶の水女子大学の戒能民江名誉教授は、被害者を救済するためには課題も残されていると指摘しています。

刑法の「強姦罪」などは被害者が抵抗できないように暴行や脅迫を受けた場合でなければ罪に問えませんでしたが、今回の改正によって親など生活を支える立場の「監護者」が加害者の場合は罪に問えるようになりました。戒能名誉教授は、「画期的だが範囲が狭すぎる。ほかの親族や兄弟、祖父のほか、学校の教師や職場の上司などが『監護者』に入っておらず、今後、広げていくべきだ」と指摘しています。さらに暴行や脅迫を要件とする規定が残されているかぎり、被害者は激しく抵抗したことなどを証明する負担を負い続けるとして、要件の緩和などを検討する必要があるとしています。

また今回の改正では被害者の告訴がなければ罪に問われない「親告罪」だった「強姦罪」や「強制わいせつ罪」などが、告訴がなくても起訴できるようになりました。戒能名誉教授は、被害者にとって裁判での証言は負担になるため今後も意思を尊重すべきだとしたうえで、「被害を訴えるか訴えないかで揺れる人も多く、年齢が若いほどその傾向があるので、被害者の意思決定をサポートする仕組みが必要だ。支援体制の充実を考えなければならない」としています。

一方、今回の改正には性犯罪の被害者が求めていた「強姦罪」などの時効の廃止や延長は盛り込まれませんでした。戒能名誉教授は、被害を受けたことを周りに打ち明けづらく、犯行が発覚しにくいのが性犯罪の特徴だとしたうえで「犯人が別の犯罪で逮捕されて被害がわかることや、子ども時代に受けた被害の意味が分からなかったり周りに言えなかったりして20年後に発覚することもあるが、時効の壁がある。時効制度を検討し直すことが必要だ」と指摘しています。