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 1カ月遅れで解明のスタートラインに立ったにすぎない。

 加計(かけ)学園の獣医学部新設をめぐる「総理のご意向」文書などについて再調査した結果、国会や報道で指摘されたものと同じ内容の文書が見つかった。松野文部科学相がそう発表した。

 先月の調査で「確認できなかった」こと自体が疑問だ。職員の間でやり取りしたメールなど、パソコンを検索すればすぐに見つかる。そうできない何かがあったのではないかと思うのが、大方の受けとめだろう。

 この間、政権は文書の存在を語る者の口を封じるような行いさえした。最初に証言した前川喜平前次官を菅官房長官が攻撃し、義家文科副大臣は国会で、内部告発者を処分する可能性をちらつかせる答弁をした。

 考え違いもはなはだしい。調査の手を抜き、都合の悪いことを隠そうとしてきた自分たちこそ、処分に値する。

 黒を白と言いくるめて恥じない体質が、不信のうねりを招いていることを、この政権はどこまで自覚しているのか。

 今回の再調査は、文書の存在を確認したにとどまる。肝心の「行政がゆがめられた」事実があったのかどうか。その判断材料は示されていない。

 問題の核心は、開学時期や手順について内閣府が文科省に伝えたとされる「総理のご意向」「官邸の最高レベルが言っている」の趣旨だ。文科省職員は調査に「真意はわからない」としか答えなかったという。

 将来のことが気になって、安心して真実を答えられないと見るのが自然だ。不利益になるようなことはしないと言明したうえで、第三者による徹底調査をあらためて行うのが筋だ。

 きょう参院予算委員会で、この問題の集中審議が開かれる。官房長官や文科相の責任追及はもちろん、「何があったのか」に迫る質疑を期待したい。

 政治主導で理不尽な規制を取り除くことは誰も否定しない。だがそれは、定められた手順に従い、公平公正に進められて初めて社会に受け入れられる。

 加計学園をめぐっては、国の発表前に地元自治体が開学時期を把握していたことなど、その「公平公正」を疑わせる事実がいくつか明らかになっている。さらに、きのう文科省が明らかにしたメールからは、同学園と競合した他大学を事実上排除する条件が、萩生田官房副長官の指示によって書き加えられたという新たな疑惑が浮かんだ。

 内閣の姿勢をチェックし、ただすのは国会の使命だ。このことに、与党も野党もない。

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