開業意思を固めてから開業まで通常は1年間かかると言われています。
しかし、業種や事業内容、フランチャイズ加盟の有無、ワークスペースなどの諸条件が変われば準備期間も当然異なるため、要注意です。
開業をゴールに設定し、細かな作業をリストアップしてみましょう。
事業の方向性が決まってきたら、それを書面にまとめていきましょう。この書面を「事業計画書」といいます。
事業計画書には決まった書式は存在していないため、自分で表計算ソフトなどを用いて作成しても問題ありません。融資を受ける際などは融資元によってもう少し詳細な記述やデータが求められることがあるので、その点は注意してください。
最初に作りたい事業計画書として、「①全体構想」と「②具体的な事業内容」の2種類に分けて考えていきましょう。
全体構想:事業全体を描く
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自分のビジネスを客観的に見ることで、「どうやって利益を得るのか」について練り上げていきます。
①創業の動機 |
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②事業の概要 | デザイン性に優れたステーショナリーの小売業 |
③市場の環境 | 持ち物に妥協をしたくないという価値観の浸透 →最も身近な仕事道具であるステーショナリーをデザインで選ぶ消費者が増えてきている |
④事業の将来目標 | 起業から5年以内にはもう1店舗出店したい |
⑤事業の課題 | メーカー、卸に対するバイイングパワーの弱さ |
具体的な事業内容:事業内容を詰める
①事業の内容 | 万年筆や手帳など、機能性とデザイン性を併せ持ったステーショナリーの小売業 |
②事業の特色(セールスポイント) | 国内外問わず、さまざまなメーカーの商品を取り扱う 無名のデザイナーによる商品も取り扱う 古民家を改装した、落ち着いて買い物が楽しめる店舗 |
③販売計画 | その商品が持つベネフィットを顧客に与えられるよう、ブランドの価値を下げてしまいがちな安売りは基本的に行わない |
④仕入れ計画 | 小さい店舗の中で多くの商品を取り扱いたいため、仕入先を選別した上で小ロットでの仕入れを行なう |
⑤設備計画 | 古民家を店舗に改装。家具は木材を中心にそろえる。場合によっては材料のみ購入し、自作する |
⑥要員計画 | 開業後の2年間はパートナーと2人で運営。その後、アルバイトとして1〜2名採用し、5年後の支店開設を目指す |
これらの書類をまとめる際のポイントとしては、「競合他社に負けない、自分の事業だけが持つ特性は何か」をできるだけ具体的にイメージすることです。「そもそもなぜ企業を決意したのか」という段階からはじめ、書き直し、読み返しながら、常に自問自答するようにしてください。
この段階で自分自身からの質問に対して明確に答えられないようであれば、誰も納得させられないと思ったほうがいいでしょう。
独立に欠かせない資産「人」「モノ」「金」
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「人」とは人脈のこと。個人事業は多くの人の助けがなければ成り立ちません。同業者、他業種の個人事業主、友人、家族からのサポートが成功への大きなステップです。さらに、この中にはあなた自身も含まれます。体力・キャリア・技術・資格・特技は財産だと自覚しましょう。
「モノ」とは商品の材料・原料をはじめ、店舗や事務用品に至るさまざまな物的資源を指します。限られた予算内で、優先順位を決めましょう。本当に必要なものは、開業してしばらくしてからわかってくるもの。最初からお金をかけすぎないほうが賢明です。
資金となる「金」については、現在の貯蓄金額を洗い出してみましょう。現金・定期預貯金・退職金・有価証券を書き出します。当面の生活費・ローン・これからかかる教育費などのマイナス分を引いて、自己資金が不足するときは借金することになります。ここで金融機関がどれだけ融資してくれるかが、あなたの現在の信用度と言えます。自分の評価を知るためにも、自分の借金能力は一度確認してみましょう。
開業時に必要な資金の計算をする
必要な資金 | 金額 | 調達の方法 | 金額 | |
①店舗(工場)など <内訳> ・内装工事費(550万円) |
550万円 | 自己資金 | 420万円 | |
設備資金 | ②機械設備・備品など> <内訳> ・備品類(40万円) ・商品棚(90万円) |
130万円 | その他(親・兄弟・親戚など) <内訳> ・両親(100万円)5万円×20回(無利子) |
100万円 |
③その他 ・保証金(100万円) |
100万円 | 金融機関 | ||
運転資金 | 開業時に必要な商品の仕入代金・経費など ・商品仕入(300万円) ・広告費等諸経費支払 (40万円) |
340万円 | <内訳> 日本政策金融公庫より (600万円) 元金7万円×86回 (年利○.○%) |
600万円 |
資金計画を考える上で重要なのは、資金には「設備資金(=開業準備資金」と「運転資金」があるということです。この2つをしっかり分けて考え、資金の調達方法を考えます。最初のうちは大まかでも構いませんが、できるだけ細かく数字を積み上げ、どれだけの資金が必要なのか把握しておきましょう。
すべてを自己資金で賄えるのがベストですが、そういうケースはほとんどありません。親族から借金をしたり金融機関から融資を受けるのが一般的です。
損益計算表で実際にシミュレートする
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次に損益計算表を作成します。まずは「売上高」から考えますが、小売業の場合は「客単価×購入客数×営業日数」、飲食店の場合は「客単価×席数×回転率×営業日数」で求めることができます。事業を実際に始めているわけではないため、ここで求められる数字の8割程度の数字を記載するようにしましょう。
「売上原価」とは、業種別の平均マージン率を1から引いたものです。「売上高×原価率」でおおまかな売上原価がわかります。
そして「売上高−売上原価」が「売上総利益(粗利)」です。ここからさらに人件費や家賃、広告宣伝費、水道光熱費、支払利息などの諸経費を引いたのが「利益(営業利益)」となります。