ヒーローの居る町
【まえがき的なもの】
この度は、ご閲覧誠にありがとうございます。
この作品は私が今度の夏コミで発売する予定のライトノベル(と呼んで良いのか…)
『ヒーローの居る町』の冒頭、一話、二話までを公開した内容となっております。
目指す内容はファンタジーSF(と自負してみたい…)となっております。
ちなみに、私の書く作品は短編、長編含めすべて同一の世界観での物語となっております。
舞台となる国や時代が違うだけですので、どこかで私の作品を読んだ事のある方は、小ネタも挟んでいるのである意味面白いかと。
それでは、ここでのひと時がどうか楽しい物でありますように…
《壱》
時は近未来。
残念ながら車もバイクも宙には浮かず、青いネコ型ロボも完成していない。
しかし、異星人、つまりは宇宙人の存在は公とされ、今では様々な星と交流を持つように成った。
だが何事にもメリットとデメリットというものはある。
星間貿易が盛んになるほど、この星を訪れる宇宙海賊や犯罪者の数は増加の一途を辿った。
今日もまた、世界の何処かで犯罪者達が暴れていた。
『わーっはっはっはっ!。聴くが良い、地球人どもよ! 我が名はカーヤ・イナミナ! 全宇宙を掌握する絶対王者じゃ!』
何処かにある町。
『尾ノ枝町』の上空に、ドーム球場を一回り小さくした様な物体が、派手派手しい光を放ちながら飛来した。
『光栄に思うがよい。此度、厳選なる抽選の結果、この辺境の星に拠点を築く事になった。手始めに、この小さな島国を支配下に置く! 抵抗しても構わんが、するだけ無駄じゃ。なにせこの艦に積まれた兵器は、どれも宇宙ブラックマーケットで買った最新型だからのう! さぁ、大人しく降伏し、私が住む専用の御殿を建て、毎日食事を用意するのじゃ!』
ドームの天辺から飛び出した、拡声器のような物から、幼い少女の様な声が響く。
しかし、尾ノ枝町の人々は空を見上げようとしない。
いや、全く反応しないと言う訳では無いのだが、目線を軽く向ける程度。
住宅街の主婦達は世間話に花を咲かせ、学校の子供達は昼休みのサッカーにいそしみ、杖をつくお爺さんはヨロヨロと散歩を続ける。
いたってのどかな、平日の昼下がり。
余りにも注目されない事に、スピーカーの声は『き、聞こえておらんのか?』と戸惑いを隠せない。
『何度もリハーサルしたし、大丈夫なはずじゃが…。言語翻訳機はぁ…、うむ、この前のように点け忘れてはおらぬ。ミスは無いはずじゃ。成らば何故じゃ! 何故無視される!』
「あ~、無駄無駄」
『む、何奴じゃ!』
漸く得られた反応に、嬉々として、ドームは急ブレーキを掛けた。
素早く旋回し、正面を声のした方向へ向ける。
そこに居たのは、実用性重視の服装に身を包み、健康的な黒髪と、これまた健康的な体つきをした、普通の青年だった。
『宙に浮いている』事を除けば。
手には菓子パンと紙パック牛乳を持っている。
『ほぅ、殊勝な心掛けじゃな。早速貢物を持ってまいったか?』
「ンな訳あるか、これは俺の昼食だ」
『そ、そうなのか? 残念じゃ…』
あからさまに声が落ち込む。
スピーカー越しでも、落ち込む姿が想像できるほどに。
「何だ、腹減ってんのか?」
「な、何を言うか! この私が空腹如きでこの島国を支配しに来たとでも言うつもりか!」
スピーカーから明らかに動揺した声が飛び出す。
「うわ、マジでそんな理由かよ…。無いわー…」
『ち、違う! 断じて違うぞ!』とスピーカーから怒鳴り声が響くが、同時に腹がグーグー鳴る音が聞こえる。
「減ってんだな。…仕方ねぇな、食うか?」
『ふ、フン! その様な粗末な食べ物…』
「要らないのか?」
『いる!』
途端、ドームから二本のロボットアームが飛び出した。
パンと牛乳を青年の手からかっさらい、そのままドームへと引っ込んだ。
『ご飯♪ ご飯♪ 三日ぶりのご飯♪』
心底嬉しそうに歌う声。
だが青年が「お前、犯罪者に成り立ての新人だろ?」と訊ねると、声は「ぐっ!」言葉を詰まらせた。
「どうせ装備に金かけすぎて、生活費も使っちゃった口だろ」
『な、何故それを…。さては貴様、エスパーか!』
「否定はしないけど、読心系の能力は持ってないから。それと、今時そんな演説でビビる人なんか居ないぞ?」
『そ、そうなのか?』
「考えてみろよ。このご時世、お前みたいな奴が現れるのなんて日常茶飯事だぞ。もうみんな、慣れちゃってるんだよ」
『成る程…』
物を咀嚼する音をたてながら感心する声。
次いで、液体を飲む音が聞こえ、最後に『はぁ~』と満足げなため息がスピーカーから響く。
「食べきったか?」
「うむ、満足じゃ」
「成らばよし。それじゃぁ…、覚悟しろ」
おもむろに、青年は右手を後ろに引く。
『へ?』
「加減してやっから、出直して、…来い!」
青年は引いた腕を、ドームめがけて力一杯突き出した。
拳を受けたドームは『にょぁあああ!』と何とも言えない叫び声を上げながら、空の彼方へと飛んでいってしまった。
「うん、我ながら最長記録更新か?」
「お~い、イチロ~!」
不意の呼びかけに、イチローこと、時翔 一郎は声の方へと目線を向ける。
彼の眼下、一番近くにある電柱の上で、一人の人物が手を振っていた。
男とも女とも取れる可愛らしい容姿のその人物は、変わった柄のフード付きトレーナーに身を包み、器用に電柱の天辺に座っている。
「遅いぞヒカル、何やってたんだ」
イチローはヒカルこと、蘇我 晃に文句を言うと、地上へと舞い降りる。
ヒカルはそれを確認すると電柱からジャンプ。
膝を胸に引付けると、体をクルクル回転させながら彼の前に着地する。
…予定の筈だったが、着地の瞬間にバランスを崩して尻餅をついてしまった。
イチローが呆れて手を差し伸べると、ヒカルは苦笑しながらその手を利用して立ち上がった。
「ごめんごめん。来る途中道に迷ったお婆さんを助けたら『お礼』って事でお茶に誘われて、のほほ~ん、としてたら遅れちゃたよ」
「『のほほ~ん』が余計だろ。あのなぁ…、もう片付いたから良いけどさ、ヒカルには俺の『パル』としての自覚をだな…」
「おぉ、流石は『最強の矛』だね。何時もながら仕事が速い」
「ま、まぁな」
おだてられ、イチローは腰に手を当て優越感に浸る。
「んで、捕まえた犯罪者は?」
「『…捕まえた?』」
ヒカルの発言に、イチローの誇らしげな笑顔から一変、困惑へと変わる。
「いや、だから進級課題。『宇宙犯罪者を捕まえる』」
「……あああああ!」
イチローが頭を抱えて叫んだ断末魔のような叫びの方が、尾ノ枝町の人々の関心を集めた。
《弐》
尾ノ枝町の中心から少し離れた場所に、イチローとヒカルの在籍する学園がある。
『超人』と書いて『ヒーロー』と読む。
その名も『超人学園』
横行する宇宙犯罪者や宇宙海賊を抑止出来る人材を教育する『警察学校』の様な物である。
『銀河連合安全保障理事会』通称『G.U.S.C.』によって設立された全寮制のこの学園は、様々な星から選抜された多くの超人達が教職員、生徒として在籍し、日夜世界を脅威から守り続けている。
しかしそうは言っても学校は学校。
戦っているだけで良いと言う訳ではないらしい。
『一つ、ヒーローは文武両道であるべし!』
学園の職員室に掛かっている、でかでかとした掛け軸に達筆な筆遣いで書かれた文字。
イチローはそれを眺めつつ、目の前で怒っているクラス担任の初老男性の話を聞き流していた。
因みにこの初老男性、地球人ではない。
地球からは何千光年も離れた星の住人で、厳しい体格と赤みが掛かった肌は、まるで『赤鬼』を彷彿とさせ、更に、彼が怒った時の声の凄まじさから、学生達の間では『鬼神』と揶揄されている。
「聴いてるのか時翔!」
耳元で怒鳴られ、流石にイチローは反応して見せる。
「うす、聴いてます!」
「ちっ『返事だけは』いっちょ前だなお前は…。俺は涙が止まらんよ」
鬼神は掛けていた眼鏡を外して目頭を押さえる。
『鬼の目にも涙』ということわざがイチローの口から出掛るが、彼はそれを飲み下した。
言ったら最後、寮の門限までの貴重な自由時間を、説教+補習のフルコースで潰す事になる。
「俺の担当するクラスの中で、逮捕数がゼロなのはお前だけだぞ?」
「いや次こそは、次こそは大丈夫すから!」
「お前それ今年に入ってから何回目だ!」
「今の含めて二八回ですかね?」
つまり、ほぼ毎日である。
「…時翔、進級査定日がある如月までもう三日もない。散々引き伸ばしたったが、これ以上は無理だ」
鬼神の表情が一層険しくなる。
説教ではなく、本気の忠告にはイチローも真面目に「解ってます」と答える。
「なにも指名手配犯みたいな重大犯罪を検挙しろって訳じゃない。引ったくりでも、下着泥棒でも、何なら交通違反でも良い。何が何でも捕まえろ、良いな?」
「…はい」
「よし、解ったのなら、この話は終わりだ。楽にして良い」
鬼神の言葉に、イチローは(やれやれ…)と、伸ばしていた背筋を丸めた。
鬼神は『終わり』と言った事には関しては、本当にそれ以上の言及も小言も言わない性格をしている。
つまり、説教はここまでと言う事だ。
「そう言えば、俺が投げ飛ばしたUFOってどうなりました?」
「調べたが、なにぶん本当にド新参者らしくてな。目撃証言もあやふやで正直解らん」
「まったく注目されて無かったっすからねぇ…」
「しかし『イナミナ』とかいうファミリーネームは、どこかで聞いた記憶がある。まぁ、なんか解ったら知らせてやるから、今日はもう帰って良いぞ」
「たのんます。んじゃ、失礼しました」
イチローは鬼神に一礼し職員室を後にした。
「……はぁ…」
彼を見送った鬼神は眼鏡を掛け直すと、デスクに置かれたパソコンを操作し、イチローの成績表を呼び出す。
彼が『鬼神』と称される程の強面でも、イチローに関しては顔を歪めざるをえない。
イチローは学力面、体力面から見ても進級に何ら問題は無い。
しかし、イチローは進級に必要な必須条件。
『進級査定日までに、一名以上の犯罪者を捕まえる』を未だに達成出来ていない。
担任である鬼神としては進級を許してやりたいのだが、えこひいきする事は出来ない。
「本気で急げよ、時翔…」
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以下、製品版掲載
【あとがき的なもの】
以上、ここまで公開させていただきましたが、如何だったでしょうか?
少しでも楽しんで頂けたのならばこれ幸い。
さて、大変申し遅れましたが、私、性は見砂、名は遼一と申します。
別サイト、某所におきましては335(さんびゃくさんじゅうご)という名義を使用しております。
売れもしなければ、注目もされない。
書いた所で見向きもされない、物書きを目指すちゃちな若造であり、執筆中の新品を一部を公開するという暴挙にでた愚か者にございます。
当方『小説』という物を専門的に学んだ事のないズブの素人で、駄文により御気分が優れなくなる事も多々あったかと思います。
ご意見ご感想、批判など大歓迎なので、容赦なくビシビシくださると喜びます(私が)
今作はこのあとも続く作品です。
どこかで見かける事がありましたら
『なんだ、コイツまだ書いてんのか、ツマネーwww』と、冷ややかに読んでやってくださいませ。
本日は僭越にも、公開する場をいただきありがとうございました
二〇一四年 二月二四日 見砂 遼一
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ツイッター:335DM
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