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リアム・ギャラガーはエネルギーに満ち溢れている。セルフリッジズの控え室。ここでリアムは、Pretty GreenのTシャツやパーカーの購入者を対象にサイン会を行う予定だ。我々と話している間、彼は自身のブランドのデザートブーツを履いた足で地面を踏み鳴らし続けていた。まるで絶えず鳴り続ける奇妙なドラムビートのように。

時に、飛び上がるように立ち上がると、質問に対してちょっとした身振りを加えて答えようとする。そして時に、怒りを抑えきれなくなると、罵り、身振りは大きくなり、拳が突き出される。私は、彼が洒落た皮椅子を蹴り倒したり、拳で壁に穴を開けてしまうのではないかとひやひやしたものだ。

もしかすると、私はリアムを誤解していたかもしれない。彼はただとてつもなく興奮していただけということもありうる。というのも、クリスマスが終わった後に、ノエル抜きでOASISのニューアルバムのレコーディングに入るという話をしている時の彼は、一番生き生きとしてみえたのだ。

「俺達その最中なんだよ」。大きな声で、リアムは言う。

「全曲そろってんだ。ノエルは一切抜きでな。俺とアンディ、それとゲムでやってる。前からそうだったんだぜ。最後のレコードでも」。

「俺達は、そうだな、俺達でほとんどのことをやって、ノエルは自分のことだけやってた。だからクリスマスの後にスタジオを押さえて、入ったらさっさと始めるんだ、ぐだぐだ悩まずにな。不安は全然感じてないぜ」。

もちろん、そうだとすればとても魅力的な話だ。バンドの創造力だった男抜きでのニューアルバム?「Wonderwall」や「Live Forever」を書いた人間抜きでのOASISなど考えられるだろうか。

しかし、使い古された考えはまず頭から追い払おうではないか。

ノエル・ギャラガーがOASIS脱退を発表したのは今年8月のことだった。パリのバックステージで起こった大喧嘩はギターを壊すまでに至り、取り返しのつかない言葉が飛び交った。それを最後に、ギャラガー兄弟は話をしていない。

だが、リアムはその喧嘩こそ解散の原因だとする説をはねつける。

「俺にとってはそこまでの大喧嘩じゃなかったんだ。自分の足の爪とだってあれの上を行く喧嘩をしたことがあるくらいだぜ、わかるだろ?あいつはただ辞めたかっただけなのさ」。

「今の仕事はもう十分で、新しいことに挑戦したいんだろう。別に当てこすりを言ってるわけじゃない。でもこれじゃ自分で自分を貶めてるようなもんだよな」。

「18年間もバンドを続けてきて、見切りをつけたと思ったら、ラッセル・ブランドや新しいお友達と一緒につるみ始めるなんてよ。お前はケヴィン・キーガンかっての」。

この言葉はつまり - ノエルが腹を立てること確実だが - ノエルは、ケヴィン・キーガンがよく言われていたように、まともな喧嘩をせずして仕事を投げ捨てたという意味だ。

しかし、セルフリッジズで行っているPretty Greenの発売イベントの場で、リアムがノエルについて話しているとくれば、彼がヒートアップしないわけがなかった。

リアムの声が突然、皮肉に満ちたものに変わる。

「まあいいさ、出て行って好きにすればいい。でも俺は俺でやらせてもらうぜ」。

メディアでは、非常識で自分勝手な行動をとるのはリアムと糾弾されているが、リアム曰く「ドアをあけっぴろげにして、ジャーナリストみたいな無礼な連中やら赤の他人を大勢招きいれてバンドの和を乱したのは、ノエル」だという。

こう聞くと、リアムはバンドの方向性、もしくはバンドの中心にいるべき自分の位置を保てなくなったと思っているようだ。

しかし、なぜ彼はいまだにノエルの脱退にここまで憤慨しているのだろう。ファンの中にはその態度を次のように説明して擁護する向きもある。注目を集めるような大喧嘩や厄介な罵りあいを繰り返してきたところを見るに、ギャラガー兄弟はそこらの兄弟と比べてあまりに距離が近く、二人が自覚している以上に人間的にも音楽的にもお互いを必要としているのだと。

「あいつはそうは思ってないさ」。リアムが唸る。

「あいつの周りにはいつだってゴマすり連中が群がっているし....」。

それでもだ。リアムの声とカリスマの魅力、そしてノエルの紡ぎだす根本的な美しさを持つ楽曲。90年代半ば、世界を圧巻したOASISの成功が、ノエルとリアムがタッグを組むことにより生まれる一瞬即発のダイナミズムによって打ち立てられたものであることに異論の余地はない。

いや....リアムは異議を唱えている。

「いいか、俺は全てに満足していたんだ。OASISを愛していた。レコードを作るのも大好きだった。それが俺のやることだからな。中毒に近い。完成させようとしても絶対に終わりは見えないんだ」。

「ニューアルバムを作って、どうなるか様子を見るよ。願わくばそれでくだらねえ作り話を終わらせることができたらいいと思ってる。誰がああしたとかあれはこうだったとか...」。

「みんなはこう言うだろう。『大人しく稼いだ金でも数えとけ』ってな。でもそんなのは俺のすることじゃない」。

「一人バンドを辞めたとなったら、俺は絶対証明してみせ...」。そこでリアムはためらったように口をつぐんだ。ノエルがいなくなったことで影響を受けていることを認めた彼は、脆さを露にしようとしていた。

「いや、証明じゃないな」と、リアムは口を再び開く。

「証明することなんて何もないさ。つまり、これまで俺がバンドに貢献せずにフロントマンの位置に居座ってただけと考えてOASISを応援してきた連中なんて、俺には必要ねえんだよ」。

「確かに、ノエルがいなくなったら色々違ってくるだろうし、ノエルのファンはそんな俺達のことを馬鹿にするんだろうが、そうだな、俺達の音楽が気にいらねえんなら買わなきゃいい。ギグにも来んな、もうDon't Look Back In Angerは聴けないんだからな....でも、ネブワースに集まった25万人のファンの全てがノエル目当てだったとは思いたくねえんだ」。

彼は正しい。人々はノエルを見に来たのではなかった。ノエルの音楽に乗って歌うリアムの姿を見に来たのである。

もしリアムがバンドの音楽に変革をもたらすことができたなら、OASISは生き延びるだろう。もし逆にリアム抜きのOASISだとしたら、あのだみ声とステージでの存在感なしでは、OASISは全く骨抜きになっていたはずだ。

ニューアルバムがOASISの名の下で作られるのかそれとも他のバンド名を考えるのか、それについてはまだ考えは定まっていないようだ。

「今はOASISを名乗っていないけど、もしアルバムをリリースするまでに良いのが思いつかなかったら、OASISでいく」。

「その場しのぎで適当な名前を名乗りたくないんだ。今は色んな案を出してるところ。でもそればっかり考えてるわけじゃなくて、音楽に集中してるんだよ。ノエルの曲は一切やってない」。

では、新しい作品はどのようなものになるのだろう。一気に音楽性を変える?そうだとしたら、勇気ある一歩だ。

「いや、そんなんじゃない。それはないぜ。ちょっとは違ってくるだろうが、そこまで違わない。俺達のファンがずっと気に入るような音楽さ、わかるよな?でもやってみないと。無理やり押しつけるつもりはない。そんなことしても『心』に悪いからな」。

そんなリアムは、最近「心の洗濯」にはまっている。20年間のバンド生活と連夜のパーティを続けてきたにしては、引き締まった身体と血色の良い顔色をしたリアムは、とても37歳には見えない。

今日は、バンドの将来について聞くためではなく、彼の立ち上げたアパレルブランドについてインタビューをしに来たのだ。モッドカルチャーに影響を受けた高品質のメンズウェアブランドであるPretty Green。コレクションには、グリーンとアイボリーの2色が選べるパーカー、ポロシャツ、コート、そして1000ポンドの滑らかな質感が魅力のレザージャケットがならぶ。

セルフリッジズの販売員から、Pretty Greenで購入可能な商品全種類を1着ずつ購入した客がいて、その支払い金額は5000ポンドを優に上回ったことを聞いたリアムは、それはノエルに違いないと即答した。

「それ俺の兄貴だぜたぶん。ここに詮索しにきてるって聞いた。店員が声をかけたら嫌な顔をして出て行ったんだと」。

まあ、Pretty Greenの洋服を気にいった金持ちのファンが購入したのだろう。リアムは、どうしてもノエルとの喧嘩別れで出来た生傷を自分で引っかいてしまうようだ。

リアムの毎日を取り仕切るのは、ファッションでもロックスターの座でもなく、学校への送り迎えだ。

2人の息子、10歳になるレノンと8歳になるジーンをハムステッドにある私立学校に送っていく。レノンとは1週間に1度と隔週末に会える約束だ。

「一緒にいると楽しいんだ」。リアムは笑う。

「俺のヒーローだよ、二人とも」。

彼自身の父親 - 家族に暴力を振るうことで悪名高く、リアムが10歳の時、母親のペギーは3名の息子達を連れて家を出ている - は、息子達にはおさがりを着け回しさせ、自分はピエール・カルダンを着けていたそうだ。

「とてもおしゃれだったよ。でも稼いだ金は全部自分のものにつぎこむんだ。家族には少しだって与えようとしなかった....俺達はおふくろが編んでくれたジャンパーを着て教会に行ったのさ。3名とも同じ格好なもんだからジェドワードみたいだったぜ」。

リアムは、父親の「スタイル」に憧れ、ティーンエイジャーの常としてフットボールの影響でタッキーニのトラックスーツやラコステのジャンパー、ダンロップ・グリーン・フラッシュといった「カジュアル」な格好にも興味を持った。

もちろん、彼の子供達は一人前のワードローブを揃えている。「ベッカムのガキとは違う」ということで、頭からつま先までブランド一色というわけではなく、しかし、Pretty Green御用達の裁縫師が特別に作ったパーカーを着けるのだ。

そして、リアムは言う。

「順調に行ってるぜ。毎日楽しんでる。幸せ。本当に幸せだよ」。

でも、ノエルが戻ってきてくれたらもっと幸せ、そうでしょう?

すると、リアムの頭に一瞬で血が上った。

「あいつはきっとこう思ってるんだ。ソロをやろう。上手く行くとは思うがそうならなかったら、弟に電話すればいい。どうせあいつはやけくそになってるだろうし、OASISのためならなんだってやるだろうから』とね」。

「そうだな、もしそうなったら即答してやる。『勘違いしてんじゃねえよ』」。

「時間がある時にいつでも電話をしてもいいと思ってるようだが、俺は忙しいんだ。あいつが電話をかけてきても話す暇なんてねえんだよ」。

そこまでまくし立て、リアムは一息置いてにやりと笑った。

「わかるだろ、こういう話題になると俺は自分を抑えきれねえ。いいか、俺はただ正気を保ちたいだけなんだ。洋服やニューアルバム、そしてバンド...どういうバンド名になったとしてもな」。