「漢族の領土は万里の長城の内側だ」と主張する日本人の学者がいます。しかし、この主張は本当のことではありません。
中国は漢族国家ではない
中国は56の民族が暮らす多民族国家です。そのため、中国の歴史の中で、非漢族王朝が多く存在していました。非漢族王朝とは五胡十六国、北魏、遼、金、元、清などです。鮮卑族王朝の北魏のように、皇帝自らが自分の民族(鮮卑族)を漢族化させたり、清朝のように、漢族を満洲族化させたりと、王朝によって様々なのですが、いずれの王朝も中華文明を受け継いでいたのです。その証拠は以下の私が作成した知恵ノートにあります。
http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n191423
http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n191411
万里の長城を国境として扱ってはいけない
秦や明などの王朝が北方に万里の長城を建設して、遊牧民の侵入から防ごうとしました。長城は本来、戦国時代には外敵に備えるために戦国七雄の全ての国が建設していたのです。戦国七雄とは、秦・楚・燕・斉・趙・魏・韓の七カ国のことですが、いずれも中国の中にある国なのです。つまり、長城というのは、中国の領土内で建設されるのが特徴です。
そもそも、国際法の中で「万里の長城の内側だけが中国の領土」ということは決まっておりません!
滅満興漢
孫文を指導者とする革命派は、「滅満興漢」というスローガンを唱えて清朝を打倒しようとしました。清朝が打倒されて、中華民国が成立した後、五族共和を国是としたから「滅満」というスローガンは外されましたが 、これは領土的な野望ではありません。
日本だって中国と同じことをやっていました。日本の幕末の人たちが倒幕のために、幕府の開国に反対して「尊皇攘夷」を唱えましたが、倒幕に成功し、自分たちが政権を握ると「攘夷」というスローガンが外されたのです。
ある日本人の学者は「孫文は万里の長城の中だけに満足せず、清朝が広げた版図をそのまま中国の領土にするというズルをやった。」と唱える人がいますが、だったら、日本人が唱えている「尊皇攘夷」というスローガンの中で、「尊皇」は達成できていますが、「攘夷」は達成していません。だから、日本は鎖国をして、外国との貿易などを一切禁止したらどうでしょう。でも、食料自給率40%の日本が鎖国をすれば、栄養失調になる人が出るし、ひどい場合には餓死してしまいます。さらには、経済的に大きな打撃を受け、アフリカなどのようになってしまうでしょう。
本当は、「滅満復明」やら「尊皇攘夷」やらを標榜していることが、それらを本気で意図していたわけではなく、単なる「かけ声」「お題目」に過ぎないのです。