起業、その前に。事業開始までに7つの基本準備を済ませよう!

例えば会社を辞めると、国民健康保険や国民年金に入りなおす手続きをします。
フリーランスとして事業を始めるには、開業届などの書類を提出する必要があります。
では、何をどの時期に、どのような手順で手続きすればいいのでしょうか。
事業を始めるまでの具体的な行動を、順序立ててご紹介します。

1、社会保険の手続き

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フリーランスになったら、今まで会社で加入していた健康保険・厚生年金から、国民健康保険国民年金に切り替えます。
退職日の翌日に、健康保険・厚生年金の資格は喪失するので、退職日の翌日から14日以内にお住まいの市区町村役場で手続きを行いましょう。納付方法は、口座振替からコンビニでの支払いまで幅広く選ぶことができます。

《国民健康保険》
・医療保険
・保険料は全額自己負担
(会社員時代は会社が保険料の半分を負担していたので、自己の負担は大きくなる。)
・世帯主と家族の医療費は3割負担
・加入には下記の書類が必要
(離職票or健康保険資格喪失証明書、退職証明書、国民健康保険被保険者資格取得届)

《国民年金》
・20歳以上60歳未満のすべての人が加入する保険。
・納付額は、会社員時代の厚生年金に比べて少ない。
・納付額が少ないので、受給額も少ない。
・加入に必要な書類
(年金手帳、退職証明書、国民年金被保険者資格取得届)

2、屋号を決める

まず、会社でいう「会社名」にあたる、フリーランスの屋号を決めましょう。「必ず決めないといけない」ものではありませんが、個人名を言われるよりも屋号を聞くほうが、「この人はこういうことをやっている人なんだな」と顧客に早く理解してもらうことができます。屋号を決める際に気をつけたいのが、法律ネット検索の2点です。

《各種法律に注意!》
会社として登記しているわけではないので、「株式会社」や「合同会社」など、法律上で会社を表す言葉は使用できません。また、すでに商標登録されている言葉を使えば訴えられる可能性があるので、そういった言葉は使わないようにチェックしておきましょう。不正競争防止法(他者への営業妨害の意図があって、悪い噂を流したり、真似をしたり、虚偽表示を行うことを取り締まる法律)にも注意が必要です。他の会社や屋号と同じような名前をつけたからといってすぐに罰せられるわけでありませんが、向こうが営業妨害とみなした場合、訴訟を起こされる可能性もあります。このあたりの法律には十分注意して、屋号を決めていきましょう。

《ネット検索を意識して》
屋号をつける際はSEOを意識します。インターネット検索でヒットしやすいよう、商品名やサービス名で顧客が検索しそうなワードを屋号にいれるなど工夫しましょう。また、公式Webサイトやメールアドレスなどを取得する際、ありがちな言葉だとすでに誰かが取得済みということもありえます。おおかた決まったらそのワードで検索してみるなど、あらかじめ調査しておくと安心です。

3、事業に必要な名刺・印鑑をつくる

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《名刺》
次に、事業をやっていうえで最低限必要な名刺を作りましょう。名刺は、挨拶回りや物件探し、金融機関との契約、仕入先との交渉、専門家探しなど、様々な場面で役立ってきます。凝ったものを最初からつくるのも良いですが、まずは必要最低限の情報が書かれたシンプルな名刺から始めましょう。最低限いれたい項目はこちら。

・屋号
・ロゴ(できていればいれる)
・名前
・郵便番号と住所
・電話番号、FAX
・メールアドレス(フリードメインは避け、独自ドメインのメールアドレスにする)
・公式ホームページのURL(できていればいれる)

《印鑑》
次に印鑑を作ります。新しく作りたい印鑑は、実印、角印、銀行印の3種類です。
・実印は、本人が市区町村役場で印鑑登録する正式な印鑑です。
(不動産賃貸借契約書や、創業融資の契約書等に使用)
・角印とは注文書の取引などで一般的に使われる屋号が入った印鑑です。
(領収書や請求書、注文書等に使用)
・銀行印は、事業用の口座を開設するために銀行に届ける印鑑です。
(金融機関の取引に使用)

4、事業用のクレジットカード・銀行口座をつくる

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《クレジットカード》
フリーランスや個人事業種はクレジットカードの審査に通りにくいため、まだ会社に勤めているときに事業用のクレジットカードをつくることをおすすめします。

《銀行口座》
個人口座とは別に、事業用の銀行口座を作りましょう。事業者本人の名前が入らずに屋号のみで口座を開設することは基本的にできません。また、個人口座の開設時より添付する書類が多めだったり、窓口での手続きを求められたりする場合が多いです。このあたりは金融機関によっても違うので、より利便性の高い銀行を選んで口座を開設しましょう。

・拠点が都会であり、全国展開している金融機関がいい
→都市銀行(3大メガバンク等)がおすすめ。大企業、中小企業、個人と取引の幅が広く、大規模な投資も行っている。

・拠点が地方で、きめ細やかな対応を期待したい
→各都道府県に拠点を構える地方銀行、信用金庫がおすすめ。取引先は地方中小企業、個人など。とくに信用金庫でたいへんきめ細かい対応を期待できる。

・とにかく安く、早く手続きを済ませたい
→ネットと郵便のみで口座開設ができるネット専業銀行がおすすめ。手数料が安く、銀行に出向く手間も省くことができる。

5、開業届の提出

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開業時に必要な書類はいくつもあり、必須のものと、場合によっては必要なものがあります。個人の開業・廃業届と事業開始等申告書は必須書類。それぞれ提出先が違うので、下の表で確認しましょう。また、提出する書類によっては納める税額に違いが出てくるので、事前に税理士に依頼して調べてもらうのもおすすめです。

6、許認可の手続き

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業種によっては、許認可が必要なものがあります。許認可には「許可」「届出」「登録」という3つのレベルがあり、取得しやすさも変わってきます。タクシー業・トラック運送業・飲食店・中古品販売には「許可」が必要です。一方で美容院、クリーニング店、軽トラック運送業は「届出」でOK。旅行業は「登録」のみで許認可が取れます。それぞれ取り扱っている所管官庁が違うので気をつけて手続きを行いましょう。

《許可》
・タクシー業:国土交通大臣
・トラック運送業:運輸局長
・飲食店:保健所
・中古品販売店:公安委員会

《届出》
・軽トラック運送業:運輸局長
・クリーニング店:保健所
・美容院:保健所

7、創業融資の申請

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ここまできたら、資金調達を実際に行っていきましょう。資金調達には様々な方法がありますが、最も早くて確実な方法は、日本政策金融公庫の創業融資です。この創業融資は、個人事業の開業届を税務署へ提出した後に申請できます。また、資金計画をたてるうえで気をつけたいのが、借り入れた資金を使う時期です。融資が実行されてから2ヶ月以内に使いはじめるのが基本で、半年だと申請できません。

《日本政策金融公庫での創業融資の手順》
(1)専門家へ相談→マーケティング調査と資料収集→事業計画書の作成
(2)申込書、添付資料、推薦状の準備
(3)正式申込み(審査期間は1週間ほど)
(4)融資担当者と面談(3日〜3週間ほど)
(5)審査結果通知(数日〜1週間)
(6)金銭消費貸借契約書等の締結(2〜3日)
(7)融資実行

※なお、会社に在籍中でも申請できますが、その場合は2ヶ月以内に会社を辞めることが求められます。(会社に在籍したままでは企業ではなく副業なので、創業融資は受けられません。)また、退職金を自己資金のアテにしている場合は、退職金を入手した後でしか申請はできません。

8、補助金・助成金申請

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補助金・助成金は大きく分けて3種類。厚生労働省系の補助金、市区町村や都道府県等の独自の補助金、経済産業省系の補助金です。

《厚生労働省系の補助金》
人を雇用する際に申請できる補助金です。従業員の教育のために受給できます。
社会保険労務士に事前に相談しておくとよいでしょう。

《市区町村や都道府県等の独自の補助金》
各自治体で用意している独自の補助金。これは各都道府県、市区町村によって様々です。
Webサイトをつくるのに補助金を出している市町村もあれば、独立して間もない人に支
給しているところもあります。自分の所属する自治体の制度について調べてみましょう。

《経済産業省系の補助金》
これから事業を始める人を対象とした補助金で、受給申請にいくつか段階があります。
事前にすべきことと、審査通過の通知がきたらすべきことを分けて考えましょう。

・事前にすべきこと
認定支援機間に相談と、事業計画書の作成を事前に行います。認定支援機関とは、国が認めた、企業財務や金融について一定の基準以上の知識と実力を持った支援機関のことです。まずはこの機関と連絡を取り、補助金についての説明を受けましょう。その後、認定支援機関に援助を受けながら、事業計画を作ります。最後に確認の印鑑をもらうのを忘れずに行いましょう。

・審査通過の通知がきたらすべきこと
審査を通過したら、交付申請と完了報告を行います。補助金交付申請書を提出して、こちらから申請の手続きをしましょう。事務局が申請書を受理し、交付決定通知で正式な交付が決まります。補助対象の事業が完了したら、こちらから完了報告書を提出し、補助金交付となります。

各種手続きが終了したら、いよいよ事業開始へ

ここまで、事業準備と書類提出の流れを確認してきました。全て完了したら、いよいよ事業開始です。屋号、名刺、ドメイン等の準備は万全でしょうか。社会保険、銀行口座、税務と資金調達手続きは終わっていますか?これで事業準備は終わりです。ここから実際に事業を回して、フリーランスとして活躍する未来を掴みにいきましょう。