中国とパナマ 外交関係樹立 パナマは台湾と断交

中国とパナマ 外交関係樹立 パナマは台湾と断交
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中国政府は13日、これまで台湾と外交関係のあった中米・パナマと外交関係を樹立したと発表しました。パナマは台湾との外交関係を断つとしており、「一つの中国」という考え方を受け入れていない台湾の蔡英文政権に対する中国の外交的な圧力が背景にあると見られています。
中国政府とパナマ政府は、13日共同声明を発表し、両国が外交関係を樹立したことを明らかにしました。
パナマはこれまで台湾と外交関係があったものの、中国とはありませんでした。

中国側の発表によりますと、「パナマ政府は、世界に中国は一つしかなく、台湾は中国とは分けることができないものだと認める。即日、台湾との外交関係を断つ」としています。

パナマのバレーラ大統領は、みずからのツイッターで、「今回の一歩は、パナマと中国の両国の現在、そして将来の世代に利益をもたらすと確信している」と述べました。

パナマが中国との外交関係を樹立した背景には、世界第2位の経済大国との結びつきを強めたい狙いがあるものと見られます。

一方、中国の王毅外相は、北京で開かれた各国の大使らを集めた会合で、「なぜ今突然にと思われるかもしれないが、パナマ側が何年も前から望んでいたことであり、いかなる前提条件や取り引きも存在しない」と強調しました。

去年5月に台湾に蔡英文政権が発足した後、台湾と断交し中国と国交を樹立したのは、アフリカ西部の島国、サントメ・プリンシペ以来、今回で2か国目で、これによって台湾と正式な外交関係がある国は20か国になります。

中国政府は、「一つの中国」という考え方を受け入れていない台湾の蔡英文政権への批判を続けていて、今回のパナマとの外交関係の樹立の背景には中国の外交的な圧力があると見られ、台湾にとっては大きな痛手になりそうです。

パナマ大統領「両国に利する」

パナマのバレーラ大統領は12日、みずからのツイッターで、「台湾はパナマにとって偉大な友人だった。これまでの外交関係の間の友好と協力に感謝している」と書き込み、台湾と断交したことを明らかにしました。そのうえで、「今回の一歩は、パナマと中国の両国の現在、そして将来の世代にとって利益をもたらすと確信している」として、中国との外交関係を樹立したことを宣言しました。

また、バレーラ大統領は、「中国は、パナマ運河を2番目に多く利用する重要な国であるだけでなく、コロン市のフリーゾーンに商品を供給する最大の国だ。物流や電力、銀行や建設などに従事する複数の巨大な中国の多国籍企業が、パナマに定着してきた。それはパナマ国民に新たな雇用をもたらす」と述べており、中国との外交関係を樹立した背景には、世界第2位の経済大国との結びつきを強めたい狙いがあるものと見られます。

台湾側もパナマと断交「怒りと遺憾」

台湾の李大維外交部長は、中米のパナマが中国と国交を結び、台湾との外交関係の断絶を決めたことを受けて記者会見し、台湾側も現地の大使館を閉鎖するなど外交関係を停止したことを明らかにするとともに、パナマに対し「怒りと遺憾を表す」と述べました。

そして「北京当局が、パナマにわれわれとの断交を迫ってわれわれの外交に圧力をかけ、台湾の人々の感情を傷つけるやり方に対し厳正な抗議を表す」と話し、中国を強く非難しました。台湾にとって中南米には伝統的に関係の深い国が多く、蔡総統は、就任しておよそ1か月後の去年6月にはパナマを訪問し、各国の首脳が集まるパナマ運河の拡張工事の完成式典に出席するなど就任早々から関係の強化に努めていました。
しかし、蔡政権に対しては「1つの中国」の考え方の受け入れを迫る中国が外交的な圧力を強めている中で、去年12月には、アフリカの島国、サントメ・プリンシペが台湾と断交し中国と国交を回復しています。これで台湾と正式な外交関係のある国は20か国に減少し、国際社会での活動の場の拡大を目指して友好国との関係の維持に努めてきた蔡政権にとっては、大きな痛手となりそうです。

台湾総統府 中国との向き合い方再検討を示唆

台湾の総統府は、パナマが中国と国交を結び、台湾との外交関係を断絶したことについて、「高いレベルでの遺憾と不満を表明する」との声明を発表しました。
そして、パナマとの関係について「われわれは、全力で友好国を支援してきたが、金銭を使った外交上の競争はしない」として、中国がみずからの経済力を利用し、外交攻勢を強めているとして暗に批判しました。
そのうえで、「北京当局がいわゆる『1つの中国』の原則を操作して台湾に圧力を加えるようなやり方は、台湾海峡や地域の平和と安定に対する挑発だ」としたうえで、「台湾海峡両岸の情勢を見直す」と強調し、中国との向き合い方を再検討する可能性を示唆しました。

パナマとの断交を受けて、台湾と外交関係のある国の数は20か国に減少し、台湾のメディアによりますと、これまでで最も少ないということです。
蔡英文政権は、中国に対し、「1つの中国」という考え方にこだわらず、関係を改善するよう繰り返し呼びかけていますが、中国の外交的な圧力が一段と強まっていて、対中国政策をめぐっては今後も苦しい対応が続きそうです。