6月11日のクジラックス氏のツイート
先日、漫画アクションを買って家帰ってうどん先生の新連載を読んで「ふへええwwww」ってなってたら、その1時間後ぐらいにチャイムが鳴って玄関開けたらガチ警察の方2人が「クジラックスに用がある」って訪ねてきて「ほげええええwwwww」ってなる珍事件がありました。
— クジラックス (@quzilaxxx) 2017年6月11日
内容は「報告と相談」といった感じでこちらとしては「即了解しました!」って感じで終わった要件なのですが、もしかしたらどっかで記事になるかもしれないしならないかもしれない。気をもませたらすみません!
— クジラックス (@quzilaxxx) 2017年6月11日
違法アップロードサイトの僕の作品は警察の方からも削除依頼を出していくそうです。このツイートを見た違法アップロードサイトの運営者は大変面倒なことになる前に先に消しておきましょう。
— クジラックス (@quzilaxxx) 2017年6月11日
違法アップロード対策の件は副次的なもので、本題は言えないけど重く受け止めたい内容だったりします。「がいがぁかうんたぁ」を何を思って描いたか等、リビングで小一時間話しました。警察の方はとても誠実な態度でお話しを聞いてくださいました。
— クジラックス (@quzilaxxx) 2017年6月11日
「なんでわたしだけぇぇぇぇ」とか言いいつつ、「はいこれは確かに私だけの問題です」って思ってるので、読者や同業者の方も気を揉まないで大丈夫ですよ(^◇^) 予告はしたものの、やはり結構な人の気をもましてしまった気がします。すみません。
— クジラックス (@quzilaxxx) 2017年6月13日
犯人の男、放射能検査の手口以前にもわいせつな痴漢行為等何件もやっていたそうで、がいがぁをネットで見て思いついた方法は彼のバリエーションの一つでしかなく、今回110番通報されたのが放射能検査の手口だから目立ってるんだな、というのはある。
— クジラックス (@quzilaxxx) 2017年6月13日
今日の話したことは広報に伝えますのでーっていう了承はとってたのでリークではないです。作品名と作者名も伝えるともいわれましたが、ニュースでは使われませんでしたね。その辺はマスコミの裁量なのかも。 https://t.co/bAbzB7yCct
— クジラックス (@quzilaxxx) 2017年6月13日
6月13日に事件の報道
「放射能の調査」を装い女子中学生にわいせつ 35歳の男を逮捕 - ライブドアニュース
放射能の調査をするなど脅しわいせつな行為した疑いで男性が逮捕される。
先のツイートから、容疑者はクジラックス氏の同人誌である「がいがぁかうんたぁ」を模倣したと主張したのではないかと推測された。
6月14日 「申し入れ」と報道
男性が同人誌を模倣して犯行したとの報道。それを受けて、埼玉県警が漫画家に「申し入れ」をしたとの報道。埼玉新聞、毎日新聞、NHKなどが記事を掲載しているが、それぞれ表現が異なり、毎日新聞はやや踏み込んだ内容。
「作中の行為をまねすると犯罪になる」といった注意喚起を促すことなども頼んだ。
漫画家は「少女が性的被害に遭うような漫画は今後描かない」と了承したという。
「漫画の行為のまねをすると犯罪になる」といったただし書きを付け加えるなど配慮を求める異例の申し入れをした
関連
表現の自由の主戦場は昔も今もエロだ - 弁護士三浦義隆のブログ
漫画家への申し入れ「社会の発展に好ましくない」…強制わいせつ、警察の対応に問題は - 弁護士ドットコム
「申し入れ」の内容とは
クジラックス氏のツイートと報道を見比べると、受ける印象が違ってきます。
ツイートを見ていると、そこまで仰々しい「申し入れ」ではなかったようですが、新聞からはかなり強い「要請」があったように感じられます。
捜査上の問題もあり、クジラックス氏も全てを述べることはできないでしょうし(ちょっと開陳しすぎっぽい気もします)、「なんでわたしだけぇぇぇぇ」ともツイートしているので、実際の「相談と報告」がどこまで和やかだったのか不明ではありますが、埼玉新聞などで報道されるように、警察が「作中の行為を真似すると犯罪になる点を注意喚起するように促し」、それをクジラックス氏が了承したのは間違いないように思われます。
本件は、クジラックス氏と実際に面会した警官や、幹部、および発表を行った広報、そしてそれを受けて記事にした記者との間にかなりの齟齬があるように感じられます。特に気になるのは、毎日新聞のみが、『漫画家は「少女が性的被害に遭うような漫画は今後描かない」と了承した』、などと書いている点。これが事実ならば問題ですが、クジラックス氏のツイートや埼玉新聞、NHKなどの記事と比較するに、この点は毎日新聞が警察発表から勝手に読み取っていると考えられます。つまり、良い言い方をすれば誤解、悪く言えば飛ばし、もしくは捏造。
同人誌だったのでややこしい事態に
創作物を模倣したとされる犯行は本件以外でも耳にします。「申し入れ」自体は、警察がお役所仕事をしていることを示すある種のアリバイでもあり、通常ならば、書籍なら出版社、テレビなどなら放送局や制作会社など、作者本人ではなく流布している企業に「申し入れ」をするのでしょう。しかし、今回は「同人誌」であったため、作家に直接「申し入れ」をするより仕方ありません。
さらに本件は流布されている現状も通常とは異なっていたと考えられます。同人誌は限られた部数しか流布されないはずですが、該当作品は違法アップロードにより拡散されていたようです。クジラックス氏のツイートから判断にするに、警察も違法アップロードを問題視しているようで、削除要請も行っているようです。ただ、著作権違反が基本的には親告罪であるが故に、この点からも権利者であるクジラックス氏本人に直接「申し入れ」する必要があったのかなと。
警察も報道機関もクジラックス氏もギリギリの線で情報している
わいせつ行為を行った男性は「放射能調査」の手口を複数回おこなっていたようで、そのため警察としても「申し入れ」をする必要があったのでしょう。通報されたのもその手口だったようで。
個人的には、注意書きをして下さい程度の「申し入れ」であったならば警察の仕事の範疇だろうと考えます。違法アップロードにも対処しているようで、そこまで横暴な事をしているようには思えません。同人作品のため出版社を回することはできず、そのため作者へ直接アプローチするしかないでしょう。
クジラックス氏のツイートから判断にするに、警察発表では作品名と作家名も公開されたようですが、報道では公表されていません。報道機関の裁量で控えたのでしょうが、クジラックス氏のツイートがなくても知ってる人なら分かる内容で、それだけ特徴があるとも言えます。また、報道内容としても「影響を受けて犯行におよんだ」ではなく「模倣した」としたであり、「クジラックス氏が悪い」、という論調でもありません。「創作物の影響」とか「現実と創作物の区別」とは少々文脈が異なるように感じられます。埼玉新聞によると捜査にあたった警察も表現の自由との兼ね合いは認識しているようなので、毎日新聞による『漫画家は「少女が性的被害に遭うような漫画は今後描かない」と了承した』に関しては、警察発表の解釈を盛っているように思えます。実際の所は「注意換気」の要請に留まっているのではないかと。ただし、警察発表の内容が分からないため、判断のしようがありませんが。