【ロンドン火事】 「何年」も火災の懸念を訴えていた=住民団体
ロンドン西部で14日未明に火災が発生した高層公営住宅では、住民が数年前から火災発生の懸念を訴えていたという。地元住民団体が明らかにした。火事ではこれまでに12人の死亡が確認され、多数が負傷。120戸以上の住民の多くが行方不明となっている。
公営住宅「ランカスター・ウェスト・エステート」の24階建てタワー棟「グレンフェル・タワー」は、1974年に完成した。地域全体の6700万ポンド(現在の為替レートで約94億円)規模の再生化計画の一環として、2015~2016年にかけて総額1000万ポンド近い大規模修繕工事を終えたばかりだった。
工事を請け負った建築会社「ライドン・コンストラクション」は、火災発生に「衝撃を受けている」とコメントし、修繕工事はすべて「必要な建築基準や防火基準、健康安全基準を満たしたものだった」と説明している。
「グレンフェル・タワー」の管理は、地元ケンジントン・チェルシー行政区から委託され、ケンジントン・チェルシー管理団体が担当している。
修繕工事の内容は
タワー棟の修繕工事で、地上階から4階部分までが大きくリフォームされ、住居9戸分が増築された。住民用の共有部分も新しくなり、地元事業2社用の利用スペースも改修された。
外壁は、換気機能付きの雨除け外装材で改修。断熱材も加えられたと思われる。窓を交換し、帳壁(カーテンウォール)、新しい暖房システム、排煙換気システムも導入された。
タワー棟の安全性は
グレンフェル・タワーの住民たちは2013年2月、このままでは火事が起きるかもしれないと懸念を表明していた。
住民団体「グレンフェル行動グループ」は、2012年の防火設備点検報告から問題点を取り出して発表。それによると、地下ボイラー室とエレベーター管理室、地上階の配電室にそれぞれ配置されている消火器は、使用期限を12カ月以上過ぎていたという。屋上周辺に置かれていた消火器には「使用禁止」と大きく書かれ、2009年以来点検されていなかったという。
大規模修繕工事の後、ロンドン消防局とケンジントン・チェルシー行政区は2016年に、通常の「中」程度の火災リスクと認定した。
しかし住民たちは、タワー棟の火災リスクは高いままだと警告していた。グレンフェル行動グループは2016年11月にはブログで、「破局的な出来事」が起きない限り、タワー棟の危険な生活環境は終わらないと書いている。
行動グループはさらに、火災発生時にとるべき行動についても通り一遍の情報しか与えられていなかったと批判する。「エレベーターに貼ってある一時的なお知らせと、修繕に関する最近のニュースレター内のお知らせ」には、自分の居宅以外で火事が起きた場合には室内に留まるよう勧告していたと話す。
グループはブログで、「グレンフェル・タワーの掲示板や個別階に、火災時にどう行動すべきか指示が掲示されていたことは一度もない」と書いている。
「なぜあれほど火が広まったのか」
ケンジントン・チェルシー行政区のニック・パジェット=ブラウン区長はBBCに対して、「ひどい悲劇だ」と話した。
「現場を訪れると、炎が数階分を覆って、たちまち広がっていた。なので出火原因のほかに、なぜあれほど素早く火が広まったのか、徹底的に調査する必要がある」
「(グレンフェルで)修繕を行ったように、1960年代や1970年代に建てられた公営住宅の多くを修繕している。暖房・給湯システムや窓を改修し、断熱効果を高め、新しい外装材を使い、エネルギー効率を高めるのが目的だ」
「修繕工事の内容を点検し、何がどのようにどういう基準で実施され、施工内容が基準を満たしていたのかどうかを確認しなくてはならない」
「タワー住宅については、修繕方法や避難方法について問題が色々あると思う。その全てを点検する必要がある」