「白河の新たな特産品に」―。白河市の日光林(にっこりん)キノコ園は今月から、マツタケとシイタケを掛け合わせ、人工栽培した広島県発祥の「松きのこ」の販売を始めた。これまで同県以西だけで栽培、販売されていたという東日本では珍しい品種で、同園社長の佐々木政美さん(52)は「食べておいしいキノコ。福島から広めていきたい」と意気込む。
 佐々木さんと「松きのこ」の出会いは、東京電力福島第1原発事故後の2015(平成27)年。県産の栽培キノコが風評被害などに直面する中、ラジオで偶然耳にし、人工栽培している広島県世羅町を訪れて口にした。軸はマツタケ、かさはシイタケに似ている。シャキシャキとした歯応えと、口の中に甘味が長く残る芳醇(ほうじゅん)な味わいに「思わず笑顔になった」と振り返る。
 サラダや炭火焼き、ホイル焼き、天ぷらなど、さまざまな料理に合う上、生食できるのも魅力の一つ。佐々木さんは「できるだけ火を通さないで調理してほしい。試食の反応はいい」と手応えを口にする。
 販売にこぎ着けた一方、県産キノコの風評を実感することもあった。県外に出荷しようとしたが、衛生管理された工場で栽培しているにもかかわらず、安全性の証明書を求められた。
 白河市のJA夢みなみ農産物直売所「り菜あん」本店だけでの販売開始となったが、既に証明書は取得済み。佐々木さんは「県外でも売りたい」と話す。
 一般的なシイタケの5倍程度という100グラム500円程度の価格など課題はある。しかし、佐々木さんは社名に込めた「ニッコリ」を忘れず「松きのこで、笑顔で楽しい白河をつくりたい」と誓う。