【ワシントン=河浪武史】米連邦準備理事会(FRB)は14日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で3カ月ぶりの利上げを決めた。利上げ幅は0.25%。年内さらに1回、2018年中にも3回の利上げを見込む政策シナリオを維持した。量的金融緩和で膨らんだ保有資産の圧縮にも「年内に着手する予定だ」と正式に表明。米国債を最大で月300億ドル圧縮する基本計画も公表した。
FOMCは短期金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を、年0.75~1.00%から1.00~1.25%に引き上げた。利上げはイエレン議長ら投票メンバー9人のうち8人が賛成したが、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は金利据え置きを主張して反対票を投じた。
市場が注視する今後の利上げペースは、年内さらに1回を見込み、3月と今回を含めて年3回とする中心シナリオを据え置いた。18年も3回、19年も3回程度の追加利上げを見込み、今年3月時点に示した利上げシナリオをほぼ維持した。
FRBは08年の金融危機後の量的緩和で膨らんだ保有資産の縮小も検討しており、14日のFOMC後の声明で「経済情勢が予測通り推移すれば、年内にバランスシートの正常化に着手する予定だ」と正式に表明した。金融市場には利上げと資産圧縮の二重の引き締め圧力がかかることになる。
FOMCは同日、資産圧縮ペースをあらかじめ示す基本計画も公表。保有債券は市場で売却するのではなく、満期を迎えた債券への再投資を減らすことで資産を縮小する。開始時の資産圧縮規模は米国債が月60億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)などは月40億ドルを上限とし、3カ月ごとに上限を引き上げて1年後には米国債が月300億ドル、MBSなどは月200億ドルとする。
FRBの保有資産は08年の金融危機前は1兆ドルを切っていたが、現在は4兆5千億ドル規模に膨らんでいる。FOMCの声明ではFRBのバランスシートを金融危機前の水準に戻すのではなく、金融システムなどを見極めながら多めの資産規模を保つ考えも示した。
FRBは追加利上げに踏み切ったが、雇用と物価は指標に強弱が入り交じる。失業率は4.3%と16年ぶりの水準まで下がり、FRBが完全雇用とみる4.6%を下回る。一方で物価上昇率は目標の2%に届かないままで、FOMCは17年10~12月期も物価は前年同期比1.7%(食品・エネルギー除く)にとどまると見込んだ。18年には2%に達すると予測するが先行きの不安材料となる。
基軸通貨ドルを抱えるFRBの利上げは、世界の金融市場に影響する。FRBは15年12月に9年半ぶりの利上げに踏み切り、それから1年かけて昨年12月にようやく追加利上げを決断した。その後は3カ月ごとに政策金利を引き上げ、徐々に引き締めペースを加速している。日欧が金融緩和を続ける中で米国の利上げが続けば、利回りが見込めるドルに資金が回帰し、世界的なマネーの流れが変調する可能性がある。