ヤドカリになりすますイカがいることがわかった。
5月に琉球大学の研究グループが学術誌「ジャーナル・オブ・エソロジー」で発表した動画では、トラフコウイカが体の色を変え、腕をひらひらと動かすような仕草をしながら、ヤドカリのフリをしている。獲物に警戒されずに接近するためか、捕食者から身を守るためではないかと、今回の研究の中心となった岡本光平氏は考えている。(参考記事:「視覚情報に反応、コウイカの擬態能力」)
ヤドカリは主に微細な有機物などを食べるため、トラフコウイカの獲物となる小型の魚や軟体動物を襲ったりしない。したがって、ヤドカリに擬態すれば、トラフコウイカは警戒されずに獲物に近づくことができるはずと岡本氏は話す。また、擬態によって硬い殻を持っているようにも見せかけられるので、腹を空かせた海の捕食動物から身を守ることにもつながるだろう。(参考記事:「【動画】「ニセのクモ」で鳥をだまして食べるヘビ」)
狩りの状況を調べたところ、ヤドカリに擬態したトラフコウイカは、そうでないものに比べて2倍の魚を捕まえることができた。
琉球大学と共同でこのイカの行動を研究している中島隆太氏によれば、研究で使ったトラフコウイカは研究室で生まれたもので、実物のヤドカリを見たことはないという。「実際の観察から学んでいるのか、それとも遺伝子にプログラムされているのか。知能や複雑な行動についての疑問は尽きません」
トラフコウイカが関節のように腕を曲げる行動は、2011年に別の実験を行っている際に初めて目撃された。この動作を見せたのは、狩りをするときと、大きな水槽に移したときだった。
イカなどの頭足動物にとって、カムフラージュは決して珍しいことではなく、体の色や模様を一瞬で変えることができるものがいる。動物界におけるカムフラージュの達人なのだ。(参考記事:「【動画】体を点滅させて言葉を交わす巨大イカ」)