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【社会】

背中いっぱい「共謀罪反対」 ラーメン「なんつッ亭」経営者

「共謀罪反対!」の文字を背負って仕事をする=神奈川県秦野市のなんつッ亭本店で

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 黙々と調理する背中に、「共謀罪反対!」の手書き文字−。ラーメンチェーン「なんつッ亭」を国内外で経営する古谷(ふるや)一郎さん(49)=神奈川県秦野市=がフェイスブック(FB)に投稿した自らの動画が話題を呼んでいる。かつて暴走族を率いた「元ヤンキー店主」として知られる古谷さんは「言いたいことが言えなくなる世の中にしてはいけない」と、国会審議が大詰めを迎えた組織犯罪処罰法改正案に静かな抗議を続ける。 (加藤豊大)

 「商売人にとって野球と政治の話はご法度と、定食屋をやっていた両親から口酸っぱく言われてきた。だけど、居ても立ってもいられなかった」

 動画は三十秒ほど。油性ペンで書かれたゼッケンを背中に縫い付け、秦野市の本店調理場で働く古谷さんを映す。大型連休中の先月上旬に初めて投稿した。

 「共謀罪」に関心を持ったのはインターネットの動画で国会審議を見たのがきっかけ。曖昧な答弁を繰り返す与党に疑問を抱いた。

 新聞やネットで法案への知識を集めるように。「捜査機関の恣意(しい)的な運用の恐れがある」「テロ対策のためというのは間違い」との法学者らの反対意見の方が、与党答弁より筋が通っていると感じた。「どうしても納得できない」

 以前は「政治や社会に全く関心がなかった」。バイク好きで高校時代に暴走族に加わり、学校を中退。十年ほど定職に就かずにいたが、テレビで行列のできるラーメン店の紹介を見て「俺にもできる」と一念発起。熊本県の豚骨ラーメン店で一年修業し、一九九七年に開店した。本格的な豚骨の味と白い鉢巻き姿の「元ヤンキー」キャラクターが受け、テレビなどに取り上げられる有名店に成長。現在は東京、茨城やタイ、シンガポールなどに計八店舗がある。

 「政治的なメッセージを発信したら客が離れる」。懸念はあったが、動画を投稿したところ、FBなど会員制交流サイト(SNS)で次々に拡散された。FBページには、賛同を表す「いいね!」の投稿が千五百件以上寄せられたという。経営者なので、常に店にいるわけではないが、週末などには、ゼッケンを着けて調理場に立つ。来客からは「動画を見て来た」「これからも頑張ってください」との声も。

 「自分の考えが正しいかは分からない。だけど現政権のやり方は百パーセント間違っている」。周囲の友人らと法案の話をしても「よく分からない」といった声が多く、国民の理解が進んでいるとは思えないからだ。

 「みんなで議論を深めた上で法案が成立したなら、まだ諦め切れるが、そうなっていない。ちょっとでも皆が法案に関心を持ってほしい」

 

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