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 台湾と長年の外交関係を持っていた中米パナマが13日、中国と国交を結んで台湾と断交した。昨年5月の就任以来、台湾の蔡英文(ツァイインウェン)総統は、中国が求める「一つの中国」原則を受け入れずにきたが、中国の圧力で進む「断交ドミノ」に、台湾では衝撃と反発が広がる。

 「北京当局は『一つの中国』原則をもてあそび、国際社会における台湾の生存空間に圧力を加え続けている」。13日に開いた記者会見で、蔡氏は中国への怒りと危機感をあらわにした。

 パナマは1909年に中国の清朝と外交関係を結んだ。その関係を引き継いだ国民党政権が共産党との内戦に敗れ、台湾に逃れた後も外交関係を保ち続けた。

 蔡氏は総統就任直後の昨年6月、パナマを訪れて台湾企業が関わったパナマ運河の拡張工事の完成式典に出席。バレラ大統領と会談し、「友好強化」を確認したばかりだった。

 そのバレラ氏がテレビ演説で「我が国にとって正しい道だ」と、中国との国交樹立を表明したのは台湾時間の13日朝。台湾当局によると、パナマの「異変」を察知したのは2週間前。パナマ側から正式に通告されたのは、演説の40分ほど前だったという。李大維外交部長(外相)は緊急会見で「憤怒」という強い表現を使って衝撃の大きさを示した。

 中台が「一つの中国に属する」という原則を認めようとしない蔡政権に対する中国の圧力があらわになったのは昨年3月。台湾と2013年に断交していたガンビアが中国と国交を樹立したのが始まりだった。16年12月には、西アフリカのサントメ・プリンシペから断交された。その後も、中国が台湾と外交関係のある国に接近しているとの情報があり、台湾側は「断交ドミノ」を警戒していた。

 今回の断交で台湾が外交関係を持つ国は20になった。中米や太平洋の比較的小さな国が多い。昨年まで8年連続でオブザーバー資格が認められてきた世界保健機関(WHO)総会への参加も、今年は認められなかった。

 厳しさを増す現状に、野党・国民党は13日、「蔡政権の外交の失敗が台湾を孤立化に向かわせている」と批判する声明を公表した。対中国政策を担う大陸委員会報道官は13日、「政策を点検する」とした。ただ、強まる中国の圧力に対し、世論調査では「もっと中国に強く出るべきだ」との声も根強く、打開策を見いだすための選択肢は多くない。(台北=西本秀

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