見た目におけるデザインはいくつかある要素をどう組み合わせるかが重要となりますが、この組み合わせによって見た人へ与える印象は異なってきます。グラフィックデザイナーは訴求したい内容やコンセプトと与えたい印象をすり合わせ、持っているデザイン要素の組み合わせを試行錯誤していきます。
私も普段チラシ・フライヤーをデザインするとき、まずはデザインに係る5つの要素を組み合わせてシステマチックにアイデアを発散させます。
- 書体
- レイアウト(余白)
- 色
- 写真(イメージ)
- 装飾
この5つの要素が見た目と印象に対して大きく影響を与えるので私はまずここから取っ掛かりを得るのですが、最近もう少し具体的に、どれくらいその制作物を見る人の印象へ影響を与えるのか検証してみたくなってしまいました。
というわけで今回は、同じ内容・文言のチラシでも各要素を変えるとどれだけ印象が変化するかを20の作例と共にまとめてみました。
基本作例
まず基本となる作例はこちら。イベントチラシによくある必要最低限の情報・コピーとイメージです。
ここから上述の5つの要素ごとに変化を与えてみて、どれだけ印象が変わるか見ていきましょう。
書体
書体の変化はデザインの印象を左右する大きな要素のひとつです。
1番目のように極細にするとすっきりとしてモダンな印象になりますし、2番目のように丸ゴシックにすると親しみやすく、3番目のように明朝体にすると大人っぽいエレガントな印象に、そして4番目のようなデザイン書体にするとユニークでかわいい印象となります。
また、例えば丸ゴシックにするとしてもヒラギノ丸ゴなのか秀英丸ゴシックなのかはたまた筑紫A丸ゴシックなのかによってもまた微妙にニュアンスが違ってきますので、書体選びは慎重に行う必要があります。
実際に制作するときに与えたい印象が決まっているときは、それに近い書体を片っ端から試してみるのがいいですね。
レイアウト(余白)
レイアウト、即ち余白の取り方も与える印象へ大きく影響します。
基本作例ではテキストを中央揃えとしていましたが、左揃えと右揃えでもまだ微妙に違った印象ですし、3番目のように余白を目一杯使うようなレイアウトでは力強い印象があります。縦書きにすると画面にリズム感が出て洗練された印象を演出できますね。
全体に対する余白の比率、そしてそれをどう取るかはデザイナーとしてのセンスの部分にかかっていますが、こんな基本的なパターン変化でも見る人へ与える印象は異なってきます。
色
色と印象の関係は心理学の領域でも盛んに語られますが、もちろんデザインに与える影響は非常に強いです。
1番目の作例は文字色をリッチブラックではなくK75%くらいにしてありますが、たったこれだけで力強い印象から柔らかい印象に変わります(パワポのスライド作成でもよく用いられるテクニックですね)。
2番目の作例では背景色にY5%を敷いてますが、真っ白よりもこのうっすらとした黄色があるだけでやや元気な印象になります。
3番目の作例のように強い色を背景色にした場合は色の心理的特性を大きく受けます。
色と心理的影響の関係はこれまたひとつの学問としてまとまっていますので色彩検定などで勉強してみるのも面白いかもしれませんね。
写真(イメージ)
写真(イメージ)は一目でパッと入ってくる情報ゆえに印象を決める要素としてかなり重要な位置を占めます。
色の部分とかかわってきますが、1つ目の作例のようにモノクロにするだけで非常にクールな印象になります。2番目の作例のように人間が入っている写真ですと人のつながりがある暖かい印象となります。3番目の作例のように食べ物のシズル感にフォーカスすると爽やかな印象を、4番目の作例のように写真ではなくイメージを使うとよりディープな印象となります。
実際の制作において使える写真(イメージ)が自分で自由に選べる場合は思い通りの印象を与えることができるのですが、クライアントから用意された素材と与えたい印象に齟齬がある場合は非常に苦労します。
装飾
装飾はディテールとなる部分ですがこれだけでもまた与える印象は異なってきます。
二重線、リボンラベル、点線、ワンポイントモチーフとありますがそれぞれ微妙に印象がことなりますよね。リボンラベルやワンポイントモチーフのように具象的なものの場合、与える印象はその装飾のテイストに寄っていきます。
チラシ・フライヤー制作においては後半の工程となる部分ですが、最後の追い上げで世界観や与えたい印象をより深くするためには手の抜けないポイントです。
最後に
今回、私が普段の制作の過程を踏まえて何となく思っていたことを検証・整理してみたのですが、割と影響しているのだなと実感することができました。
クライアントへの提案時、与えたい印象をロジカルに説明したいときなどのヒントになればと思います。