・加計問題の内部告発者、処分の可能性 義家副大臣が示唆|朝日新聞
(朝日新聞より)
たしかに国家公務員法100条は国家公務員に対して守秘義務を課しています。しかし本件のような場合の内部告発者も守秘義務違反として懲戒処分の対象となるのでしょうか。
この点、平成16年に制定された「公益通報者保護法」(いわゆる内部通報者保護法)は、その保護の客体を民間企業の従業員だけでなく、公務員をも含んでいます(法2条、労基法9条)。
・公務員も本法の規定による保護の対象でしょうか。|消費者庁
また、本法はあらゆる内部告発を保護するものではありませんが、法3条各号のいずれかに該当する内部告発が保護されます。
そして本事案の内部告発は、本法の別表の八「前各号に掲げるもののほか、個人の生命又は身体の保護、消費者の利益の擁護、環境の保全、公正な競争の確保その他の国民の生命、身体、財産その他の利益の保護にかかわる法律として政令で定めるもの」にあてはまり、そこで政令をみると、「公益通報者保護法別表第八号の法律を定める政令」17号は学校等の許認可を定める「学校教育法」を、同62条は「獣医師法」を規定しており、本事例の内部告発は、本法が保護する「公益対象事実」です(法3条2号)。
本事案は首相官邸、内閣府の恣意的な権力濫用により加計学園が特区に認可された事案です。そのため、「公正な競争の確保その他の国民の財産その他の利益の保護にかかわる」と言えます。そして政令も学校教育法等を明記しています。
さらに本件は内部告発者がマスコミや議員などへ告発した「その他外部機関」への通報です。
この場合、「通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると信ずるに足りる相当の理由があり、その者に対し当該通報対象事実を通報することがその発生又はこれによる被害の拡大を防止するために必要であると認められる者に対する公益通報」で、かつ、「(上司などへの)公益通報をすれば当該通報対象事実に係る証拠が隠滅され、偽造され、又は変造されるおそれがあると信ずるに足りる相当の理由がある場合」に該当すると考えられるので、法3条3号、5条により、文科省は内部告発者に対して解雇・降格・減給・配転等の処分をすることは許されません。
結論として、義家弘介文科副大臣ら文科省や首相官邸・内閣府等は、本事案の内部通報者を何らかの処分をすることは、公益通報者保護法違反となり許されないこととなります。
■参考文献
・浜辺陽一郎『個人情報・営業秘密・公益通報Q&A』206頁