街に出かけたら、予定が狂って2時間ほど空いてしまった。暇を持てあましてウロウロしていると広場みたいなところに献血車がいて、スピーカーでがなっていた。
「献血にご協力ください!」「すべての血液型が不足しています!」などなど。
「通り過ぎていくあなたに呼びかけています!」みたいな、ちょっと刺激的な文句もあった。
定期的に行くという友人は何人かいる。自分は元々モヤシっ子で、今は平気だけど貧血になりやすい子供だったせいでどうも勇気が出なかった。普段は忙しくてスルーしてたのものある。時間もつぶせるし社会貢献になるし血液検査も一緒にしてくれるらしい、一石三鳥じゃんと思った。
看板を見たら、200mlと400mlがあるようだ。400は怖いけど200なら行けると思って受付に行った。ガラガラのテントの中で係の人が出迎えてくれた。
初めてですと言ったら注意書きの紙を何枚も渡された。あと記入用のボード。
注意書きには「不特定多数とセックスしていませんか」とか「男性同士でセックスしていませんか」とか「どこそこの国の出身ではありませんか」とかズラズラ書いてあった。一応全部読んで、あてはまらないことを確認した。
それから献血後の注意点を係の人が説明してくれた。吐き気やめまいが起きた場合の対処法も紙に書いてあった。氏名年齢体重やら住所やら、ボードに一つ一つ記入した。
そういう、意外にというかやっぱりというか綿密な手続きと確認が終わって、ボードを返したら係の人がムッという顔をした。
「200mlに丸をつけてますが、400mlお願いできませんか」
ヒヤッとした。
「初めてなんで怖いんで、200でお願いします」
「いや、この体重だと400ml採れるんですよ。針も変わりませんよ」
係の人が言うには、男女別に基準となる体重があって、それ以下だと200mlしか採っちゃいけないらしい。確かに体重はギリギリその基準を超えていた。
でも、200mlならマグカップ1杯くらい。400mlだとどれくらい?マクドナルドのコーラのLサイズくらい?
でかい紙コップになみなみ入った血を想像してぐらぐらした。子供の頃に貧血で何度も倒れたあの感じがよみがえってきた。
「すみません、どうしても怖いです。200にしてください」
「400しか選べないってことですか?」
「はい」
ちょっと考えて、
「ごめんなさい。やっぱり止めます」と言った。
係の人に記入用紙を返してもらってテントをそそくさ出た。
体重が基準以上だと提供する量が選べないなんて知らなかった。献血車の看板は『(400mlを)お願いしています』という書き方だったから、あくまでお願いだと勘違いしてしまった。係の人に長々説明させたのに断って出てきてしまった。
全面的に自分が悪いんだけど、なんかモヤモヤとした気持ちが晴れない。お前の血なんかいらねえよと拒絶された気分だ。あれだけ血液が不足していますと叫んでいたのに、自分の血はいらなかった。
それに係の人が繰り返した「あなたの体重なら400mlです」という言葉。
こっちの恐怖や不安はまるごと無視して、どうやって血をしぼるかだけ考えてるみたいだった。マッドマックスにそういうのがあった。主人公が「血液袋」って呼ばれるやつ。
あれって何なんだろうな 献血係の仕事には個人の裁量の幅がなくて 400ml搾り取るマニュアルを厳守しないと怖い上司に殴られる世界なんかな
ノルマがあるから仕方が無い、 血を上納しなくちゃいけないからね。
ダサい増田だな、という感想しか浮かばなかった